2012年12月30日日曜日

康復医学学会が「うつ」に取り組む理由。


うつと康復医学

「本説伝」は今号が年内最後の配信になります。今年最後にシリーズとしてお送りしたのが「うつと睡眠障害」でした。職場でのうつ病や高齢化に伴う認知症の患者数が年々増加しているため、昨年度厚労省が「国民に広く関わる疾患として重点的な対策が必要」と判断し、「精神疾患」を加え4大疾患から5大疾患になりました。
 メディアでは、うつが健康・医療情報誌以外の経済誌や一般雑誌などが取上げるようになり、うつの経済的影響が危惧されてきました。

 そして、教育の現場でも問題になっています。昨年度に病気で休職した公立学校の教員8,544人で、19年ぶりに減少したことが、文部科学省の調査で分かりました。しかし、その6割以上は精神疾患によるもので、同省は「憂慮すべき状況」としています。全国の公立小中高校などの教員約92万1,000人について、休職者や処分者などを調べた結果、休職者のうち61.7%をうつ病や適応障害、ストレス障害などの精神疾患が占め、精神疾患での休職者は4年連続で5,000人を超えています。そして、休職した教員のうち、復職37%、休職中43%、退職20%でした。しかし、いったん復職したものの1年以内に再発し、再度休職した人が12%もいます。うつは再発する確立が高いのが特徴です。

 また、病気になるとどうしてもうつ症状が表れやすく、そのことが本来の病気の完治に悪影響を及ぼすこともあります。康復医学学会がうつを取上げている根拠は、正にここにあります。
 康復医学とは、約35年前に中国に誕生し、各地域別に対応する学問で、中国の病院や大学には普通に「康復科」や「康復医学科」が存在します。もちろん臨床の教科書もあります。病気は、予防だけで避けられるものではなく、治療を続けることで完治するものではありません。康復医学は予防医学、治療医学とともに三大医学を構成する重要な学問なのです。傷病後のQOL(生活の質)を高め、いかに限りある健康寿命を長く良好な状態で過ごせるかを研究し、サポートすることが康復医学の目的です。うつ症状が表れて休職に追い込まれた教員の現場復帰にかかわるのも、まさに康復医学の範疇といえます。

 本年度、創設された「康復医学学会」は、幅広い分野で病後の健康回復の研究を進め、康復医学を新たな医学として確立させたいと考えている学会です。注目していきましょう!

 来年もどうぞよろしくお願いします。


いつもありがとうございます。
光・愛・感謝 五月雨ジョージ


2012年12月28日金曜日

うつと睡眠障害⑦ 対策編


誰でも起りうる「うつ」

クリスマス寒波が到来し、全国各地で今冬の最低気温を更新しています。冷え性の人にとっては睡眠の質を確保するのが大変な季節です。

体の中心部の体温を「深部体温」といいますが、この深部体温、1日の中で、1~1.5度ほど上下します。夕方から夜にかけて最も高くなり、そのあと次第に下がって早朝に最低になります。深部体温が下がるときには、眠気が強くなります。ところが、冷え性の人は血液の循環が悪いため、深部体温を効率よく下げられません。これが冷え性による睡眠障害の大きな原因です。

 そして、冷え性かどうかに関係なく、冬のこの時期に誰でも起こる可能性のある疾患が「季節性感情障害」です。特徴的な症状は、食欲増加、体重増加、睡眠障害などがあり、“冬季うつ”などとも言われます。うつのような症状があるのですが通常のうつ病ではありません。うつ病の場合、食欲がなくなって体重が減り、昼夜を問わず眠ろうとしても眠れなくなります。しかし、冬季うつの場合は逆で、特に午後から夜にかけて炭水化物や甘いものが欲しくなります。また、睡眠の質が低下し日中の眠気も強く、昼寝や居眠りが増えます。日が短くなる秋から冬にかけてうつ傾向が強まり、20~30代の女性に多い病気です。日射量の不足が脳内のセロトニン分泌の低下に関係しています。神経伝達物質の「メラトニン」は覚醒と睡眠の時間が交互にやってくる生体リズムの基礎になる物質です。夜間の睡眠中に脳内分泌量が最大になり、昼間の太陽光で脳内分泌量が抑制されることがわかっています。そのメラトニンの分泌に影響を与えるのがセロトニンです。冬季に限って気持ちが落ちこむ場合でも、冬季だけ職場の環境が大きく変わる場合や年末年始の帰省ストレスを非常に強く感じる人など、気候とは別に落ち込みの原因がはっきりしている場合は冬季うつとは違います。


康復医学の基本 "うつ"と睡眠障害⑦ 対策編

■セロトニン神経を活性する「ラフマ」

ストレスやうつが原因でセロトニン神経の機能が低下し、同時にメラトニン(睡眠ホルモン)が減少すると、「睡眠の質」が悪くなります。リラックスハーブの「ラフマ」には、セロトニンの産生を促し、また、血管に悪影響を与え様々な病気や自覚症状を引起す「ノルアドレナリン」の分泌を調整・抑制する機能があることが認められています。

ストレス CRH*↑ ⇒ 5-HT**↓ ⇒ 精神的自覚症状

【関連する疾患と症状】
パニック障害、うつ病、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、緊張性頭痛、偏頭痛、不眠、睡眠障害、心因性多飲多食症、拒食症など。
*CRH:ストレスホルモン(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)  **5-HT:セロトニン

ノルアドレナリンとセロトニンへの影響


表:ラフマ錠剤組の短期/長期投与によるノルアドレナリンの変化(ng/g)とセロトニンの変化
*p<0.05、**p<0.01vs対照組

◎セロトニンの産生促進
Ⅰ)メラトニンの産生の促進(睡眠の改善) 
Ⅱ)精神安定
Ⅲ)下行性疼痛抑制系の増進

◎ノルアドレナリンの調整・抑制作用
Ⅰ)心拍数の減少
Ⅱ)血管平滑筋の拡張
Ⅲ)血圧の低下
Ⅳ)睡眠の改善

2012年12月21日金曜日

うつと睡眠障害⑥


「うつ」発症の背景

うつ病発症の原因はそのほとんどが社会生活や家庭内などのストレスによるものです。また、ひとつの病気が原因でうつ症状が表れる場合もあります。

患者にうつ症状が表れると、本来の病気の治療が難しくなり、回復も遅くなります。たとえば、がんの患者などは、手術や抗がん剤投与を苦痛に感じ治療から逃避したい思いに駆られるためストレスになり、うつ症状が表れることがあります。しかし、食欲不振や不眠などの症状は、通常のがん治療でも表れるため、うつ病に気が付くのは難しいのが現状です。

 また、“病気と密接に関わるうつ”もあります。パーキンソン病は、筋肉の緊張や運動などを無意識に調整している神経機能がおかされる病気です。パーキンソン病は、手足や顔面の筋が突っ張って硬くなったり、手足の振るえが表れる、動作がのろくなる・・・などが特徴です。神経伝達物質・ドーパミンが主な原因とされていますが、ドーパミン神経の機能低下がセロトニン神経にも影響し、うつに関与していることがわかっています。

 うつは加齢にも関係します。65才以上の高齢者の100人に3~5人はうつ病(軽症を含む)といわれています。高齢者の場合、社会的地位の喪失、孤立的環境など、高齢者特有の心の持ち方があります。また、老化に伴う身体的変化により、感覚機能の低下、運動機能の低下、性機能の低下、身体疾患の合併などさまざまな要因で通常のうつ病とは違った加齢による症状の複雑さを示すのが特徴です。

そして、脳内のセロトニン・ドーパミン・アドレナリン等の合成能にも影響し、またそれが、分泌の低下の原因にもなるのです。


康復医学の基本 "うつ"と睡眠障害⑥

SSRIがうつ病患者を増やしている!

左下の図は厚労省が行った日本の気分障害の患者数(うつ病以外にも躁うつ病等もありますが、うつ病が大半です)の調査結果です。99年からの6年間で、通院するうつ病患者が2倍に増えました。また、右の図が抗うつ薬の市場変化で99年より右肩上がりで売上をのばしています。そして、両図に共通する99年がSSRIが発売された年なのです。この現象は過去に欧米でも起きていて英国などは87年に導入され他の米国をはじめとする先進国は80年代後半~90年代初頭にSSRIが導入されてうつ病患者が急増しました。



セロトニンを仮想的に増やす「SSRI」


セロトニンが増えているわけではないSSRI

右上図のように、抗うつ剤の一種SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)はセロトニンが再取り込みされるのを防ぎ、セロトニンの濃度を仮想的に高め不足を補う働きをするので、元々の分泌量自体が少なくなっている状態では意味がありません。また、これらの抗うつ剤は、特定の神経伝達物質にしか効果がありません。しかも神経伝達物質は多数あって、1種類の濃度を高めることより全体のバランスが大切なのです。
 康復医学学会の見解としては、初期の段階でのSSRIの使用は問題だと言わざるを得ません。


いつもありがとうございます。
光・愛・感謝 五月雨ジョージ

2012年12月20日木曜日

うつと睡眠障害⑤


放っておくと心配な「かくれ不眠」

「直近1カ月間で就寝することの多かった時間帯は?」という睡眠の調査で、最も多かったのは「0時台」で31.6%でした。以下「23時台」が23.4%、「1時台」が20.1%、「2時以降」が12.6%、「23時以前」が12.4%と続きます。

 調査報告では「就寝時間帯別に睡眠時間が不足していると感じる人の割合を見た場合、23時台から0時台にかけてが最も差が大きく22.2ポイント。次に差の大きかった23時より前から23時台にかけては12.7ポイントなので、0時までに就寝するのが良いようだ」と分析しています。

就寝する時間帯は早いほうがいいようですが、こんな調査報告もあります。
「私たちが調査した統計によると現代人の約80%が『かくれ不眠』です。特に、仕事に追われて睡眠を削ってしまっている人たちに多いようです。不規則な生活をしているのに、自分は寝なくても大丈夫、これは不眠ではないと思っているなど、睡眠に対して意識が低いのですね」(杏林大学医学部精神神経科・古賀良彦主任教授)。「かくれ不眠」とは、単なる寝不足と不眠症の間に位置するものです。慢性的な不眠ではなく専門的な治療は必要ないものの、睡眠の悩みや不満をかかえ日常生活に影響がある状態で、この状態に気づかないうちに陥っている人が急増しているのだそうです。古賀教授が所属する『睡眠改善委員会』では、「かくれ不眠」を5つのタイプに分類しています。中でも問題なのが、体力を過信した「自分は大丈夫」タイプと、十分な睡眠をとれず他人に当り散らす「高ストレス」タイプです。そして、かくれ不眠を放置していると・・・
「最初に肌荒れ肥満といった症状が出てきます。睡眠時間が短いとグレリンという食欲を増進させるホルモンが出てくるので食べすぎてしまうのです。それが引き金となり糖尿病高血圧にもなる。さらには心身症です。ストレスが原因で体の各臓器に病気が出てくることも。さらに眠れないと仕事でも失敗する。するとますます眠れなくなる。不眠症や、場合によってはうつ病にもなるでしょう」(同教授)。


康復医学の基本 "うつ"と睡眠障害⑤

■セロトニン神経の5大作用

セロトニン神経は、よくオーケストラの指揮者に例えられます。それは、脳全体の神経細胞に指令を送ることができるからです。セロトニン神経の働きが強いか弱いかによって、他の神経の活動が上がったり下がったりするのです。

大脳皮質を覚醒、意識レベルを調整:

人は、寝ている間は意識がなくなり、朝起きると覚醒します。覚醒時は、スッキリ状態だったり、ぼんやりだったり、不快だったりしますが、セロトニン神経が活性している時は「スッキリ爽快」の状態です。つまり気分爽爽なのです。

自律神経を調整:

心機能、血圧、代謝、呼吸などを管理する自律神経は、交感神経と副交感神経のバランスをシーソーのように保ちながら、強くなったり弱くなったりを繰返しています。このシフトがうまくいくようにするのがセロトニン神経です。

筋肉への働きかけ:

セロトニン神経は、筋肉を緊張させて歩行や姿勢を保持する働きがあります。まっすぐな姿勢イキイキとした表情ができるのは、セロトニン神経が活性化している状態です。

痛みの感覚を抑制:

感覚に対しては、抑制する作用があります。特に下行性疼痛抑制系などに関わり、鎮痛効果が現れることは知られています。ひざや腰の痛み90%セロトニン不足が原因で、セロトニン神経機能が低下するために痛むと考えられます。グルコサミン、ヒアルロン酸などの効果は限定的です。

精神的バランスを保持:

人はストレスなどの外因・内因的な影響を受けて、高揚したり、落ち込んだりと絶えず変化しています。しかし、その振り幅が大きすぎたり、継続したりすると「うつ」へと向かいます。セロトニン神経は、そのバランスを整えます。
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 セロトニンは上記の作用の他にも、生体リズム・神経内分泌・体温調節などの生理機能気分障害・統合失調症・薬物依存などの病態に関与しています。
また、ドーパミンやノルアドレナリンなどの感情的な情報をコントロールし、精神を安定させる働きがあります。


いつもありがとうございます。
光・愛・感謝 五月雨ジョージ

2012年12月14日金曜日

うつと睡眠障害④


睡眠障害~うつ・生活習慣病

「健やかな眠りの意義」(厚生労働省「健康情報サイトe-ヘルスネット」より抜粋)によると、「健やかな睡眠があってこそ十分な休養をとることができます。睡眠不足による産業事故、慢性不眠によるうつ病生活習慣病の悪化など、睡眠問題を放置すると日中の心身の調子にも支障をもたらします」とあります。

 慢性的な睡眠不足は 日中の眠気や意欲低下、記憶力減退など精神機能の低下を引き起こすだけではなく、体内のホルモン分泌自律神経機能にも大きな影響を及ぼします。寝不足(4時間睡眠)をたった2日間続けただけで食欲を抑えるホルモンであるレプチン分泌は減少し、逆に食欲を高めるホルモンであるグレリン分泌が亢進するため、食欲が増大することが分かっています。実際、慢性的な寝不足状態にある人は糖尿病心筋梗塞狭心症などの冠動脈疾患に罹りやすいことが明らかになっています。

 また、睡眠障害のひとつでもある睡眠時無呼吸症候群では、夜間の頻回の呼吸停止によって低酸素血症と交感神経の緊張(血管収縮)、酸化ストレスや炎症、代謝異常(レプチン抵抗性、インスリン抵抗性)などの生活習慣病の準備状態が進み、その結果として5~10年後には高血圧、心不全、虚血性心疾患、脳血管障害などに罹りやすくなります。
 慢性不眠症の人も、交感神経の緊張や糖質コルチコイド(血糖を上昇させる副腎皮質ホルモンの一つ)の過剰分泌、睡眠時間の短縮、うつ状態による活動性の低下など、多くの生活習慣病リスクを抱えています。入眠困難や中途覚醒、早朝覚醒など不眠症状のある人では、良眠している人に比較して糖尿病になるリスクが1.5~2倍になることがわかっています。

 睡眠不足や睡眠障害によりさまざまな生活習慣病が増加・悪化するメカニズムが徐々に明らかになり、睡眠障害への対処が生活習慣病を改善させるということも明らかになっています。


康復医学の基本 うつと睡眠障害④

■質の良い睡眠を演出するセロトニン

人が行動を起こす時、その情報は、脳の細胞から各細胞へ伝わり、情報が伝わるとき脳の細胞からは「セロトニン」が出て、このセロトニンの働きで人は動いたり、食べたり、眠ったりすることができます。
 睡眠を誘う神経伝達物質はメラトニンですが、その原料となるのがセロトニンで、"質の良い睡眠"を実現する主人公です。

セロトニンが不足すると睡眠を妨げる!

セロトニンは、睡眠中の呼吸量も調節しています。体内の酸素量が不足したとき、セロトニンの分泌量を増やし呼吸中枢を刺激します。
 セロトニンが不足すると酸素が不足し睡眠中に息苦しくなり、何度も目を覚まし熟睡できないということが起こります。

セロトニン分泌にはリズムがあります!

セロトニンは1日中分泌されていますが、睡眠中はセロトニン神経の活動は弱くなっていて深い眠りを作り、朝方になると分泌量を増やして覚醒し、スッキリ目が覚めるというリズムがあります。いつまでも寝つけずぐっすり眠れない人は、慢性的にセロトニンが不足しているからです。

要注意!慢性的なセロトニン不足

 ストレスによってセロトニン神経の機能は低下し、分泌量は減少してしまいすが、分泌されたセロトニンは、そのままなくなるわけではありません。再び取り込まれリサイクルしています。慢性的なストレスは、セロトニンをリサイクルさせる「セロトニン再取り込み機能」をも低下させ、リサイクル量を減らしてしまいます。そして、慢性的なセロトニン不足となってしまうのです。

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社会や生活環境でのストレスは、精神的・肉体的な疲労を伴う複合型ストレスです。そして、気力・活力の低下、睡眠の質の低下に影響します。
 ストレスが精神神経系のCRH(別名:ストレスホルモン)を分泌させ、セロトニン神経に影響していきます。
 セロトニン神経の活性化は、今後「対策編」でお伝えする予定です。


いつもありがとうございます。
光・愛・感謝 五月雨ジョージ

2012年12月13日木曜日

うつと睡眠障害③


睡眠の重要性!

慢性的なストレスはさまざまな病気を発症します。しかし、ストレスそのものが直接、肉体的な病気に結びつくことはありません。慢性的なストレスでは、まず脳が疲労を起こし、それがさまざまな肉体的症状につながっていくのです。

 脳内にある神経細胞は非常に疲労しやすい細胞です。そして、その神経細胞の基本的な機能は情報の伝達なのですが、情報の伝達には大きなエネルギーを必要とします。脳内では他の臓器に比べ2倍から30倍のエネルギーが使われています。そしてこのエネルギー産生システムを守る“防御機能”がストレスによって低下することが脳の疲労の一因なのです。
 実験動物の脳を刺激してストレスを与えると、深い睡眠を引き起こすプロスタグランジンD2(PGD2)という物質を作る酵素が作られることがわかっています。人の場合も同じと考えられ、睡眠によって脳の働きをシャットダウンして脳の健康を保っています。睡眠障害がある人は、このシステムが破綻しているため脳疲労が起こるのです。

 そして、ストレスに対する防御機能は他にもあり、脳内の神経伝達物質もそのひとつです。神経伝達物質にはグルタミン酸やGABAなど数多くの種類があります。代表的なのがセロトニンとドーパミンです。車に例えるとドーパミンは「このまま進もう」という意欲・やる気のトップギアで、セロトニンはローギア、ゆったりとした感情・安心感を醸成します。疲労回復という点で重要なのがセロトニンです。脳内セロトニンの働きの低下が、睡眠障害を招き脳疲労うつなどの原因のひとつになっているのです。
 また、気質や性格とストレス・疲労との関係についても研究が進み、日本人は将来に不安を抱きやすく、慢性疲労にも陥りやすいと考えられています。24時間型の現代社会なって、体内のリズムと社会のリズムが合わなくなっていることが睡眠障害を招いているとすれば、睡眠の重要性をいまこそ真剣に考え“睡眠の質”を高めることが求められます。


康復医学の基本 “うつ”と睡眠障害③

■ 情報伝達:神経伝達物質

人間は、何らかの行動を起こすときや、欲求、ストレスなどを受けたとき、まず大脳でま解析し、その後各部位をめぐる神経細胞の流れに乗り、そこで感情が生まれます。その流れを伝達するのが、50種類以上の神経伝達物質です(その働きが比較的わかっているのは20種といわれています)。
精神活動の面では、セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンが重要な働きをします。またそれらは、さまざまな脳内の部位に大きな影響を及ぼすことで知られています。

●他の神経系に関与し調整する・・・セロトニン!
他の神経系と連携しているので、脳内の“総合指揮者”と呼ばれ、広範囲に重要な影響を及ぼしています。セロトニンは他の神経系に抑止的に働き、過剰な興奮や衝動を軽減しますが、セロトニンが不足すると、うつ状態になったり、暴力的になったりすることが知られています。

●積極的な行動には重要な働きも・・・ノルアドレナリン!
人間は、危険や恐怖体験をするとノルアドレナリンを分泌し、立ち向かうか逃げるかの態勢に入り、応力で回避行動に入ります。そして、ノルアドレナリン濃度が上昇し過ぎると、過敏で攻撃的な興奮状態を生じてしまいます。

●快感神経系を増幅する・・・ドーパミン!
快楽神経系が興奮すると、快楽を感じ、身体の動きが活発になり、幸福感を得ます。幸福感が慢性化すると典型的な依存症(たばこやアルコール)になります。逆にドーパミンを過剰に消費するようになると、幻覚や幻聴、妄想などが生じるようになります。覚醒剤依存がやがて精神分裂病によく似た症状を来すのも、ドーパミンの過剰消費と同じ原理です。

質の良い睡眠に影響するセロトニン

睡眠を司る脳内伝達物質「メラトニン」です。メラトニンは脳内の松果体で作られます。そして、このメラトニンの原料になるのがセロトニンです。
 セロトニンの原料のトリプトファン(必須アミノ酸)にいくつかの酵素が働いてセロトニンが出来ます。そこに、さらに別の酵素が働いてメラトニンが作られるのです。このメラトニンを作るために、松果体には他の脳内部位の50倍ものセロトニンがあることが知られています。


いつもありがとうございます。
光・愛・感謝 五月雨ジョージ

2012年12月7日金曜日

うつと睡眠障害②


うつと不眠は双方向性の関係!

「うつ」と「不眠」には深い関係があることは知られていて、うつ病には不眠が伴い、不眠の人はうつ病になるという相互関係も指摘されています。

うつ病患者の約9割が睡眠の問題を伴っている。うち8割りは不眠で、残りは日中に眠くなる過眠などだ」とは日本大学医学部精神医学主任教授。健康な人と不眠を伴う「うつ病」の人では、眠りの内容が異なることも分かっています。健康な人は、入眠後深い眠りに入り、その後は周期的に、浅い眠りと深い眠りを何度か繰り返して目覚めます。一方で、うつ病の人の眠りでは、入眠後すぐに浅い眠りが訪れ、最初の周期から浅い眠りの時間が長くなる傾向があります。また、うつ病の人が入眠障害、中途障害、早期覚醒といった睡眠障害を抱える率は、健康な人に比べていずれも高く、これらの症状は、うつ病を診断するための評価項目にも含まれています。

 また逆に、不眠が続くとうつ病になりやすいという関係もあります。米国ハーバード大卒業生の追跡調査では、卒業後10年以内に不眠症になった人が、その後30年でうつ病を発症するリスクは、不眠でない人の約3倍になったデータなどがあり、現在の不眠の症状が、将来うつになって現れるリスクが高いのです。

 そして、うつ病は再発率の高さも特徴です。
 初めてうつ病になった人の再発率は50%、一度再発した人で約75%、二度再発した人で90%とされています。また、うつ症状が少しでも残っている人と、すっかり消えた人との間でも、再発率に大きな差があります。「うつ病の残遺症状として、不安や倦怠感などと供に、不眠の症状が多く挙げられている。不眠が残るかどうかは、うつ病が再び大きく現れるかどうかの予測因子と考えなければならない」(東京女子医大医学部精神医学教授)。うつの症状が去った後も付いて離れないのが不眠なのです。不眠はうつ病の中心的症状といっても大げさではありません。


康復医学の基本 "うつ"と睡眠障害②

不眠症の定義

“うつ”と睡眠は双方向的に関係しています。睡眠障害の中でも代表的なのが不眠症なのです。
日本睡眠学会の定義によると・・・

①「寝つくのに普段より2時間以上かかる入眠障害」「夜中に2回以上目が醒める中途覚醒」「朝起きた時にぐっすり眠った感じが得られない熟睡障害」「普段より2時間以上早く眼が醒めてしまう早朝覚醒」のいずれかが週2回以上ある。
② ①の状態が1ヶ月以上継続している
③ 自ら苦痛を感じるか、社会生活または職業的機能が妨げられている

 睡眠障害の定義は、①~③の項目をすべて満たしていることとされています。
 そして、睡眠障害には他にもさまざまな種類があります。

睡眠の過程で起きる主な睡眠障害


 慢性的な睡眠不足が続くと、抑うつなどのリスクが高まる傾向があります。昼間に強い眠気、週末や休日になると通常より長く寝てしまう、他の睡眠障害では説明ができない・・・などの条件がそろうと「睡眠不足症候群」とされ、疲労の他に、イライラ、抑うつ、集中困難などの症状が出始めます。


いつもありがとうございます。
光・愛・感謝 五月雨ジョージ

うつと睡眠障害①


ストレスとうつの関連性!

「イヤなことがあっても、一晩寝たら気分がスッキリして悪い感情が薄らいでいる。そんな経験は誰にでもあるはずです。しかし、不眠症になると目覚めても疲労感から解消されず、『今日もよく眠れなかった』『今朝も調子が悪い』と朝から気分が沈んでしまうことが続き、結果、うつ病へと進行してしまうこともあるのです」(日大医学部精神医学系主任教授・内山真氏)。
 不眠症は日中の生活にさまざまな悪影響を及ぼすこともありますが、うつ病との相関関係が極めて強いのです。そして、昨年厚労省は、がん、脳卒中、心筋梗塞、糖尿病の4大疾病に、精神疾患を加え「5大疾病」とする方針を決定しています。「日本人のうつ病の生涯有病率は、6.7%。100人いたら6~7人が一生のうちに1度はうつ病を発症することになります。統合失調症の場合が約1%ですから、その発症率の高さがお分かり頂けると思います」(内山教授)。
 また、近年では、低年齢化や症状の多様化が進み、“うつの時代”とも言われます。そして、その背景にあるのがストレスなのです。内山教授は言います。「うつ病発症のメカニズムは完全に解明されていないのが現状です。しかし、うつとストレスに強い関連性があるのは間違いない。精神と肉体に過度のストレスがかかったとき、そのストレスを回復する機能が働くわけですが、そこに何らかの不調をきたしたせいで憂鬱感が続く。これがうつ病の中核なのです」。例えば重症のうつ病患者では、ストレスがかかると分泌されるコルチゾール(副腎皮質ホルモン)の調整機能が破綻しているといった所見が確実にみられます。過労、人間関係、将来や雇用への不安、事故や災害など、現代社会はストレスに囲まれています。何をストレスと感じ、どう解消するかは、個人の性格や価値観、家庭や職場の環境によって大きく変わるとはいえ、知らない間にストレスの影響を受けている可能性は高いのです。
 また、うつは他の傷病などが原因でも発症し、傷病後のQOL(生活の質)に影響を与え、再発や合併症をも招く恐れがありますので要注意です。


康復医学の基本 "うつ"と睡眠障害①

■「うつ」潜在的な患者は未知数

 現代社会において「うつ」が国民病であることに異論を挟む人はいないでしょう。
 右グラフのように、気分生涯患者の数は年々増え続けています。中でもうつ病の患者数は大幅に増えています。しかもこの数字は、あくまでも“心の不調”で医療施設を利用した患者数ですので、潜在的なうつ病患者の数はこの数倍にも上るといわれています。

日本人は睡眠の質が低い!

製薬会社の調査では、不眠症の疑いがありながら70%以上の人が「自分は不眠症と思わない」と回答し、不眠を自覚していない、もしくは不眠であっても病気だと認識していない人が多く、そのことが病院での診断を遅らせています。
 睡眠は「何時間眠ったか」にばかりこだわってしまいがちですが、大切なのは時間ではなく、その睡眠の“質”です。2002年に「最も長生きができる睡眠時間は7時間(米国医学誌「アーカイブス・オブ・ゼネラル・サイキアトリー」)と発表されました。日本人の平均睡眠時間は十分に満たされているにもかかわらず、不眠を訴える人が多いのは、まさに“睡眠の質”が十分でないことがその要因です。(右表)。
うつの初期症状として不眠は重要なサインです。睡眠時間が短いうえに眠りが浅く、覚醒しやすいというのが、典型的なうつ病による不眠の症状です。同時に倦怠感や身体的な愁訴が続くという特徴もあります」(慶應義塾大学医学部呼吸器内科講師談)


いつもありがとうござます。
光・愛・感謝 五月雨ジョージ