冬のうつの特徴は、睡眠障害と過食傾向!
冬季うつは、冬にはほとんど太陽が出ない北欧などに患者が多く、季節性のある「うつ」です。日本では柿の実が赤くなるころから増え始めるといわれ、春になると症状が改善する人が多いのが特徴です。10~11月ごろから徐々に元気がなくなり始め、眠くて、だるくて、何もやる気にならなくなるようなら、冬季うつかもしれません。
特に「冬季うつになるのは20代の後半以降の女性に多い」と言われています。過眠・過食、体が重い、というのが最も多い症状。食べ物に“癒やし”を求める傾向があり、菓子パンのような甘いものや炭水化物を食べたくなるようです。また、寝てばかりでも食べるので、"うつ太り"になる人もいるとのこと。
この冬季うつの原因を、国際医療福祉大学三田病院精神科の平島教授は「日照時間が短くなることが引き金となって、セロトニンなどの脳内の神経伝達物質が減ることが一因」と解説します。蓄積したストレスも原因と考えられています。また、遺伝などの家族性も指摘されています。そして、日照時間が短い地域などの環境的なものも要因として挙げられていますが、これらの要素が複合的に組み合わさって発症に至るケースが多いのです。
冬季うつを始め、うつ病の原因とされているのが、脳内で働く神経伝達物質の一つ「セロトニン」の不足です。そのため病院では、脳内のセロトニン量を増やすとされている薬、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などが処方されています。しかし、SSRIは、セロトニンの再取り込みを阻止し仮想的にセロトニンを増しているものです。セロトニン神経の活性が低下している場合、セロトニンの分泌自体が少ないので、あまり意味がありません。また、セロトニンと関係が深い、メラトニンの観点からの治療薬も処方されています。セロトニン神経の活性化がセロトニンの分泌を促しメラトニンの原料となり「質の良い睡眠」を作り出します。
このほかに高照度光療法も有効です。これは、朝の太陽と同じ程度の強い光を、毎朝2時間以上浴びる治療法。薬より早く改善効果が出ることもあり、医療器具も市販されています。
(出典:https://style.nikkei.com/)
■セロトニン神経の5大作用
ヒトの脳は外側を大脳が囲み、中間部・脳の根元に脳幹という部分があります。この脳幹の中に、セロトニン神経は存在します。その数は数万個といわれますが、これは脳全体で140億の神経細胞がある中のほんのわずかな量です。このわずかなセロトニン神経が、脳全体にセロトニンを分泌させるという構造的特徴をもっています。セロトニン神経は、よくオーケストラの指揮者に例えられます。それは、脳全体の神経細胞に指令を送ることができるからです。セロトニン神経の働きが強いか弱いかによって、他の神経の活動が上がったり下がったりするのです。その作用は主に以下の5つです。
① 大脳皮質を覚醒させ、意識のレベルを調整する
人は、寝ている間は意識がなくなり、朝起きると覚醒します。覚醒時は、スッキリ状態もあれば、ぼんやりだったり、不快だったりしますが、セロトニン神経が活性している時は「スッキリ爽快」の状態です。つまり気分爽爽なのです。
② 自律神経を調整する
心機能、血圧、代謝、呼吸などを管理する自律神経は、交感神経と副交感神経のバランスがシーソーのように保ちながら、強くなったり弱くなったりを繰返しています。このシフトがうまくいくようにするのがセロトニン神経です。
③ 筋肉を動かす
セロトニン神経は、筋肉を緊張させて歩行や姿勢を保つ筋肉を動かす働きがあります。まっすぐな姿勢やイキイキとした表情ができるのは、セロトニン神経が活性化している状態です。
④ 痛みの感覚を抑制する
感覚に対しては、興奮ではなく抑制する作用があり特に下行性疼痛抑制系などに関わり鎮痛効果が現れることは知られています。ひざ・腰の痛みの90%はセロトニン不足でセロトニン神経機能低下のため痛むと考えられます。グルコサミン、ヒアルロン酸などの効果は限定的です。
⑤ 精神的なバランスを保つ
人はストレスなどの外因・内因的な影響を受けて、高揚したり、落ち込んだり絶えず変化しています。しかし、その振り幅が大きすぎたり、継続すると「うつ」へと向かいます。セロトニン神経は、そのバランスを整えます。
セロトニンは他にも、生体リズム・神経内分泌・体温調節などの生理機能や気分障害・統合失調症・薬物依存などの病態に関与しています。また、ドーパミンやノルアドレナリンなどによる感情的な情報をコントロールし、精神を安定させる働きがあります。
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愛・感謝 村雨カレン