思わぬ所に表われる「放散痛」に要注意
残業続きで「疲れがたまった」くらいに思っていた。その後も、何度か左肩が強く痛む時があったが、特に気にしないでいたら3ヵ月後、心筋梗塞を起こしてしまった――。これは実際にあった話ですが、もし胸の辺りが激しく痛んだなら、この方は重大病と疑っていたはずです。しかし、重大病のサインは、そのものずばりの場所に出るとは限らないのです。このような重大病と関連があるとは思えない痛みの自覚症状を「放散痛」といいます。
九段クリニック・阿部博幸理事長は、「内臓にはさまざまな神経系統があります。痛みはそこを伝わって生じるので、思わぬ場所に表れることが少なくありません」と言っています。
「狭心症の場合、左の肩や顎などが痛みます。狭心症は心筋梗塞の前兆とよくいわれますが、典型的な訴えは前胸部の真ん中あたりの圧迫感、焼けるような痛み、締め付けられるような感じです。いずれにしても、胸周辺に起こります。そのために、肩や歯が痛んでも、肩凝りや歯の痛みと勘違いするケースが珍しくないのです」(阿部理事長)。
狭心症は、高血圧、喫煙者、肥満の人にリスクが高く、これらに該当するなら、左の肩凝り、左の歯痛は要注意です。
「狭心症の症状は、長く続くわけではありません。数分から20~30分で症状が消えますが、労作に伴って何度も症状が表れます。そういった時は、循環器内科を受診してください」。
こんな事例もあります。日頃、腰痛を訴えていた人が「これまでの腰痛と違う感じ」と何度も言い、「様子を見て、この痛みが続くようなら病院に行ってみる」と話していましたが、その数時間後、突然倒れ、そのまま亡くなり「解離性大動脈瘤」と診断されました。「腰痛は、解離性大動脈瘤の症状だった可能性が高い。解離性大動脈瘤は、放散痛として背中に痛みが表れます。それを腰痛などと勘違いする人がいるのです」。一般的には、解離性大動脈瘤の痛みは強烈です。しかし、ジワジワくる痛みの場合もあります。糖尿病を患っている人なら、神経に障害が生じているので痛みを感じにくく、本来は強烈な痛みと感じるところを、そう思わずにいることもあります。
「放散痛で命にかかわるといえば、狭心症や心筋梗塞、そして解離性大動脈瘤に関連した痛みになります。少しでも“いつもと違う”と思ったら、病院で検査を受けるべきです」(すべて阿部理事長)。
■関連痛と放散痛
神経は、各部位の神経が集まる箇所では一本の太い束ですが、身体の末端に行くほど枝分かれして細くなります。こうした仕組みから、脳は障害が起きている部位からの痛みの信号を特に異常のない身体の部位から送られているものと勘違いする場合があります。このように体のある部位の痛みを、別の部位の痛みと脳が勘違いして発生する痛みのことを「関連痛」といいます。
かけ離れた自覚症状
関連痛の中でも、病気や障害のある部位とは全くかけ離れた部位に現れる痛みのことを特に「放散痛」といいます。内臓疾患で肩・背中・腰に痛みが出たり、心筋梗塞などの心臓の病気で、歯・肩・背中などに痛みが出るといったものです。主な関連痛
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★今年の『本説伝(ホントツタエ)』は今回で打ち止めとなります。一年間お付き合いいただき、ありがとうございました。来年もよろしくお願い致します。
光・愛・感謝 五月雨ジョージ