若者の老化が進んでいる!?
世界中で「早期発症がん」、つまり14歳から49歳までに診断されたがんが増えています。過去30年間(1990~2019年)で、50歳未満の新規がん患者は約80%も増えているのです。
(※浙江大学医学部、ハーバード大学、エディンバラ大学などの研究者らが昨年、英医師会雑誌に報告済)
研究者たちは、2019年の世界疾病負担調査のデータを基に、204カ国の14~49歳の人々のがん罹患率と死亡率の変化を調査。2019年は、50歳未満の100万人以上ががんで死亡し、1990年から約28%も増加していました。研究者らは、2030年には、世界の新たな「早期発症がん」の症例数は31%、関連する死亡者数は21%増加すると推定しています。
日本でも「国立がん研究センター」のがん情報サービスのデータによると、特に女性の「早期発症がん」が増えているそうです。
「早期発症がん」増加の原因のひとつとして考えられているのが、“老化が進んでいる”ことです。ワシントン大医学部の研究者らが、今年4月、若年成人のがんリスク増加と老化の加速が関連していることを、米国がん学会で指摘しています。
研究チームは、2つの関連を調べるために、英国バイオバンクに登録された約15万人のデータを使って、血液中の9つのバイオマーカーを分析し、参加者の生物学的年齢を算出しました。すると、1965年以降に生まれた人は、1950~54年の間に生まれた人にくらべて、生物学的年齢が年代よりも17%高かったといいます。
次に研究チームは、加速する老化と「早期発症がん」発症の可能性との関連を調査。その結果、体の老化が早ければ早いほど、肺がん、消化器がん、子宮体がんの早期発症が高まっていました。やはり、50歳未満の新規がん患者が、過去30年間で約80%も増えているのは、老化が進んでいるからなのでしょうか。
ボストン在住の内科医・大西睦子氏は言います。
「なぜ早期発症がんが増えているのか、その理由を見つけるために専門家は苦闘している。若い人の老化はひとつの理由であるかもしれないが、まだハッキリした理由は分かっていない。アルコールの飲み過ぎ、適切な睡眠の不足、日光への暴露、ストレス、長時間の座りっぱなし、メンタルヘルスの問題、交際関係の欠如などが考えられる。特にこれが悪いということではなく、食生活が乱れている人は、活動レベルが低くて、睡眠不足になりがちということもある。アメリカの研究では、1965~80年に生まれたX世代は、ベビーブーマー世代(1946~64年生まれ)に比べて、健康状態が悪く、また、飲酒や喫煙などの不健康な行動が多く、うつ病や不安症が多いことが指摘されている。便利な社会になり、インターネット、ソーシャルメディアなどと共に過ごす時間もますます増えている。これらに依存した生活は、ヘルシーなライフスタイルがしにくくなる、ということはあると思う」
(出典:https://www.nikkan-gendai.com/)
■老化のメカニズム
「老化」とは一般的に、成熟期以降に起こる“生理機能の衰退”を意味し、遺伝的な要因や外界からのストレスに対し、適応力が低下することで起こる変化と考えられます。
老化のメカニズム
生物学的に老化への太刀打ちは難しいとする「プログラム説」と、成熟後の有害遺伝子の発現で老化していくという「擦り切れ説」があります。成長スピードと同様に、老化スピードにも個人差がありますが、また、体内の組織や細胞によってもそのスピードは違うので、老化が進んでも、組織によっては実年齢よりも若いこともあります。
老化の原因
老化の原因の一つは、「活性酸素による体の錆び」と考えられています。活性酸素生成の原因も様々で、呼吸による酸素の活性酸素化や、車の排気ガス、たばこ、紫外線、激しい運動や心理的ストレスなども活性酸素の蓄積を誘発し、老化の原因になります。また、老化スピードは40歳代から加速しますが、それは40歳代になると「抗酸化酵素」の能力が急速に減少するからです。このことから、逆に老化抑制には代謝を抑え、活性酸素の蓄積を抑えることが有効とする、カロリー制限説が唱えられるようになりました。一方で、老化には活性酸素のみならず、様々な複雑な要因があることから、一概に「老化を確実に抑え込む」ことはできないという考え方もあります。
老化はいつから始まるか
細胞レベルで見ると、老化は生まれた直後から始まります。研究で、胎児から採取した細胞は約50回の分裂が限界であることが分かりました。そして限界まで分裂した細胞を“老化細胞”と呼びます。老化細胞に増殖を促す処理を施しても、二度と増殖しません。若い頃は機能低下した細胞は除去され、新しい細胞が補充されて機能を保ち、老化を防いでいます。しかし、年齢と共に細胞の入れ替わりは遅くなり、それ自体が停止すると、組織の機能が低下し、徐々に老化が進行していきます。やがて、老化細胞で生きていかねばならなくなります。一方、極めて稀ですが遺伝子の異常によって、正常な人より早いスピードで老化する病気もあります。「早老症」といい、国の難病にも指定されています。
老化による身体への影響
老化は、右表(⇒)のように体に様々な影響を引き起こします。このほかにも、視力の低下や聴力の低下など、高齢者には様々な身体の影響が出てくるのです。
いつもありがとうございます。
愛・感謝 村雨カレン