2025年9月17日水曜日

脳とたんぱく質


 菜食主義者はうつ病になりやすい?

 食事とうつ病の関係としては、食事の時間帯とうつ病の発症リスクが関係している可能性が示されたり、高脂肪の食事を繰り返すとアルツハイマー病やうつ病リスクが悪化することが判明したりと、様々な研究が行われています。ブラジル・ポルトガルの大学による共同研究で、新たに「肉を抜いた菜食主義の食事とうつ病の関係」が示されました。

 ブラジルの大学で集団的健康のプログラムを担当する研究者らのチームは2022年9月に公開した論文で、35歳から74歳のブラジル人1万4216人を含むデータを用いて横断分析の研究を発表しました。調査の中には「食物の頻度に関するアンケート」が含まれており、個人が肉を食べるか肉を含まない食事を選んでいるかを判断しています。その後、うつ病や不安障害などのメンタルヘルス面での問題の有無を調べる特別の手法を使用して、個人のうつ病に関するエピソードを喫煙やアルコール摂取量、身体活動、健康状態、毎日のエネルギー摂取量などの要因と合わせて評価しました。

 結果として、うつ病に関するエピソードの発生率が、肉なしの食事との間に正の関連性があると研究者たちは発見しました。肉を食べない人は、肉を日常的に食べる人の約2倍の頻度でうつ病に関するエピソードを経験していたのです。

 菜食主義とメンタルヘルスとの研究は過去にも行われており、2020年の研究ではメタ分析により関連性が観察されなかった一方で、2021年の研究では同様のメタ分析で菜食主義と高いうつ病スコアの関連性が確認されました。2022年1月にイギリスの研究者らが発表した論文では、「過去のメタ分析では、7件の研究で菜食主義とうつ病に関係があると示され、7件の結果では関連性が見られないとされていますが、分析された研究は不均一で、さらなる研究が必要だ」と述べ、範囲を広げた詳細なメタ分析を行いました。結果として研究者は「菜食主義は肉を食べる人よりもうつ病との関連性が高く、またヴィーガンの食事はベジタリアンの食事よりもうつ病との関連性が高い」と示しています。

 ブラジルの研究チームによる論文では、うつ病のリスクは社会経済的要因やライフスタイルではなく、肉を食べない人に多く見られる傾向であると結論付けていますが、栄養不足がその原因ではなく、うつ病と菜食主義との直接的な因果関係の調査はできていません。

 また一方で、この研究についてのオンライン掲示板のスレッドでは、「肉を食べないからうつ病になりやすいのではなく、動物に道徳的価値を強く置いて肉を食べないという選択をする人は、共感性が高くメンタルヘルスを害しやすいのではないか」といった意見や、「ベジタリアンは肉を食べることを非倫理的と思っている人もいるため、多くの人が肉を食べていることに常に心を痛めている」「食べ慣れない料理を前にしたとき、料理に何が入っているのかを気にせねばならないのはストレスだ」などの具体的な指摘も挙げられています。

(出典:https://gigazine.net/)


■認知症予防:脳を守るたんぱく質

なぜたんぱく質が脳に重要なのか?

 脳は、思考、学習、記憶といった高度な機能を司る臓器であり、その活動には絶え間ないエネルギーと栄養が必要です。たんぱく質は、体のあらゆる組織を作る基本的な材料であり、脳にとっても例外ではなく、脳の構造と機能の両面で、重要な役割を担っているのです。

神経伝達物質の合成:脳内の情報伝達は、神経伝達物質(化学物質)によって行われます。これらの神経伝達物質(ドーパミン、セロトニン、ノルアドレナリン等)は、アミノ酸から合成されます。アミノ酸はたんぱく質が分解されてできる最小単位であり、十分なたんぱく質摂取は神経伝達物質の合成を円滑に行うために不可欠です。

脳細胞の維持・修復:脳細胞(ニューロン)は、情報の伝達や処理を行います。たんぱく質は、これらの脳細胞の構造を維持し、ダメージを受けた細胞を修復するために必要です。

脳のエネルギー源:一部の研究では、たんぱく質が脳のエネルギー源としても利用される可能性が示唆されています。

たんぱく質摂取と認知症リスクに関する研究

 複数の研究が、たんぱく質摂取と認知症リスクとの関連性を示唆しています。

 疫学研究 :大規模追跡調査では、高齢者においてたんぱく質の摂取量が多いほど、認知機能の低下リスクが低い傾向があります。特に、動物性たんぱく質だけでなく、植物性たんぱく質も認知機能の維持に貢献する可能性が指摘されています。

 介入研究 :たんぱく質の摂取量を増やしたり、特定のアミノ酸を補給したりする介入研究では、認知機能の一部が改善したという報告があります。

 ただし、これらの研究はまだ発展途上であり、量、種類、摂取タイミングなど、より詳細な検討が必要です。しかし、現時点での知見は、たんぱく質が認知症予防の一助となる可能性を示唆しています。

 右図は、たんぱく質がどのように脳の健康に貢献するかを示しています。このプロセスが円滑に進むことで、情報伝達がスムーズになり、結果として認知機能の維持・向上に繋がるというメカニズムです。

 たんぱく質は、脳の構造と機能の両面において不可欠な栄養素であり、認知症予防においても重要な役割を果たす可能性が示唆されています。バランスの取れた食生活の中で、様々な食品から十分なたんぱく質を摂取することは、脳の健康を維持し、認知機能の低下を遅らせるための有効な戦略の一つと言えるでしょう。


いつもありがとうございます。愛・感謝 村雨カレン

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