2015年6月26日金曜日

トランス脂肪酸の危険性

3年以内にトランス脂肪酸を全廃へ、FDA

米食品医薬品局(FDA)は6月16日、トランス脂肪酸を生成する「水素添加油脂(partially hydrogenated oils;PHOs)」の加工食品への使用を3年以内に全廃すると発表しました。
 FDAでは2013年にPHOsの安全性を否定する暫定的な決定を発表していましたが、研究に基づき今回の最終的な決定の発表に至りました。
 トランス脂肪酸は心血管疾患リスクを上昇させる可能性が知られていますが、関連学会からも今回の決定を歓迎するコメントが寄せられています。

 PHOsは常温で液体の油脂に水素を添加して製造された半固体あるいは固体の油脂。その過程でトランス脂肪酸が生成されます。水素添加によって製造されるマーガリンやショートニング、またそれらを使用したパンやケーキなどにトランス脂肪酸が含まれています。
 米国ではPHOsは「一般的に安全(generally recognized as safe;GRAS)」な食品に分類されていましたが、2013年にFDAが「PHOsはGRASに該当しない」との暫定的な決定を発表。その後追加で実施されたPHOsによる健康への影響に関する研究のレビューやパブリックコメントなどを踏まえ、今回の最終的な決定に至りました。

 食品メーカーにはPHOsを使用しない製造法にシフトするための対応期間として3年間が与えられます。それ以降はFDAに申請し、認可された場合を除いて食品へのPHOsの添加は原則 禁止となります。

 米国では2006年以降、食品にトランス脂肪酸が含まれる場合にはラベルに表示することが義務づけられており、2003年から2012年にかけてトランス脂肪酸の消費量は78%減少しました。しかし、米国医学研究所(IOM)はトランス脂肪酸の摂取量を可能な限り減らすよう推奨しており、さらなる消費量の削減が課題となっていました。

 今回のFDAの決定を受け、米国心臓協会(AHA)CEOのNancy Brown氏は同日、「米国民の健康における歴史的勝利」とする称賛のコメントを公表。「食品業界からトランス脂肪酸が消えれば、(米国で)回避できる心筋梗塞は年間1~2万件、冠動脈疾患による死亡は3,000~7,000件との米疾病対策センター(CDC)による試算もある」と紹介しています。

 日本でも賢い消費者は原材料の表示にマーガリンやショートニングなどがないことを確認して食品を買う人が増えてはいますが、国や業界を含め、全般的にまだまだトランス脂肪酸の危険性に対する意識が低いようです。

■トランス脂肪酸の危険性

日本では、バターより健康的と一般的には考えられているマーガリンですが、別名「プラスチック食品」と呼ばれています。これは、フレッド・ロー(米国・自然は運動家)の「マーガリン大実験」という有名なエピソードによるものです。1965年から73年まで自然食品店を経営していた彼がマーガリンを放置する実験を行ったところ、プラスチック同様に虫などをまったく寄せ付けなかったことから、マーガリンは「プラスチック食品」という結論に達したのです。

飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸

油脂にはラード(豚脂)、ヘット(牛脂)やバターなどの動物性の脂と、ナタネ油、大豆油などの植物油があります。

 動物性の脂は融ける温度(融点)が高く、常温では硬化して固体になります。これは、飽和脂肪酸を多く含み、分子の結合が強く安定しているからです。この飽和脂肪酸を過剰に摂取すると、肝臓で悪玉(LDL)コレストロールの生成を促進して、血中コレストロール値が上がり、心筋梗塞・脳卒中を引き起こす動脈硬化胆石の原因になります。
 また、常温で硬化するため、体内でも凝固しやすく、血液の粘度を高めていわゆる「ドロドロ」の状態にします。

 植物性の油と、イワシ・サバなどの青身魚の油は融点が低く、常温でも液体です。これは、動物性の脂とは逆に「不飽和脂肪酸」を多く含んで、分子の結合が弱く、安定性が低いからです。この不飽和脂肪酸は、血中コレステロール値を下げる作用があります。
 また、常温で液体なので、体内で血液をいわゆる「サラサラ」の状態に保ちます。

植物油を化学処理して誕生

当然、多くの人が動物性油脂より植物性油脂を求めます。ところが、パンや菓子などの加工食品には、常温で固体の油脂が欠かせないのです。
 そこで登場したのが、マーガリンやショートニングなどの、植物性油脂を化学処理し常温で固体を保てるようにした(硬化油)製品です。
 この化学処理が「水素添加」と呼ばれる方法で、不飽和脂肪酸の水素が足りない場所に強引に水素を結びつけています。こうして出来たものがトランス型脂肪酸で、これは安定した構造を持っているので、常温でも固体で、酸化しにくく、保存性が高いのです。この構造がプラスチックそっくりというわけです。

 水素添加して人工的に作られたトランス脂肪酸は体内で代謝されにくい構造で、悪玉(LDL)コレステロールを増加させ、善玉(HDL)コレステロールを減少させる働きがあることも明らかになってきています。これは、心臓病などの疾患を引き起こす要因になります。

 また、脂肪酸は細胞膜を構成する物質ですが、トランス脂肪酸で形成されるとその細胞膜は弱く、免疫機能が低下することも指摘されています。

 多くのファストフード店や惣菜のお店で水素添加された油脂は、ショートニングの表示で利用されています。
 フライヤーの中に入ってしまえば、液体化するので、まさか固体の油脂が使われているなんて、と驚かれるかもしれません。酸化しにくい、保存性がいいということで、ポテトチップスやスナック菓子、菓子パン、カレールー、レトルト食品、コーヒー用ミルクやアイスクリームなどと、本当に多くのものに使われています。

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【トランス脂肪酸対策】

日本でも、トランス脂肪酸の心配のない水素無添加のマーガリンやショートニング製品を作っている企業が出てきています。しかし、トランス脂肪酸に対する消費者の関心が集まらなければ、普及は難しいでしょう。
 問題の一つは、表示がされていないことです。日本で売られている加工食品には、"植物油脂"という曖昧な表示しかされていません。

 トランス脂肪酸に有害性があることは事実です。危険性が明らかな食品を避けるために、国や企業側は、表示の問題も含め、消費者への情報公開が必要不可欠なのはもちろんです。
 しかし、まずは私たち消費者がトランス脂肪酸の有害性を知ること。食事や買い物に注意を怠らず、ファストフード消費やジャンクフードなどを購入しないことが大事なのです。



いつもありがとうございます。
光・愛・感謝 村雨カレン

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