2019年6月12日水曜日

PM2.5

大気汚染による死亡数、喫煙を上回る

世界疾病負担研究2015による推定値の2倍に

独マックス・プランク化学研究所の研究者らは、大気汚染による死亡を新たなモデルで検討。その結果、世界の大気汚染による死亡数は年間880万人(推定値の約2倍)と推定され、、喫煙による死亡数を上回ったとEuropean Heart Journal(20190312オンライン版)に発表しました。

欧州では79万人、40~80%がCVDで死亡

研究者らは世界保健機関(WHO)の人口密度、地理的情報、年齢、各種疾患の危険因子、死因などに関するデータと、16カ国41件のコホート研究に基づく新たなモデルを組み合わせ、大気汚染による死亡について検討しました。
 その結果、大気汚染による年間の直接および間接的死亡(超過死亡)数は欧州全域で79万人、欧州連合(EU)の28カ国では65万9,000人と算出。世界では880万人と算出され、世界疾病負担研究(GBD) 2015の推定値(450万人)の約2倍に及んでいます。

 また、世界の大気汚染による年間超過死亡率が人口10万人当たり120人であったのに対し、欧州ではこれを上回る133人となり、大気汚染は欧州人の平均余命を約2.2年短縮すると推定されました。

 欧州の大気汚染による超過死亡の原因は、虚血性心疾患(40%)が最も多く、脳卒中(8%)と合わせて少なくとも48%の死因が心血管疾患(CVD)でした。さらに、死因の32%を占めるその他の非感染性疾患も心血管疾患に関連すると見なされるとし、これらも合わせるとCVDが大気汚染による死因の40~80%を占めると推定されました。

 研究責任者で独ヨハネス・グーテンベルク大学マインツのThomas Munzel氏は「WHOは2015年の喫煙による超過死亡数を720万人と推定している。つまり、今回の結果は大気汚染による超過死亡が喫煙による超過死亡より多いことを示している。喫煙は回避できるが、大気汚染は個人の努力では回避できない」と指摘。「大気汚染による呼吸器疾患とCVDの主な原因は、微小粒子状物質(PM2.5)である。現在、EUにおけるPM2.5の年間平均濃度限度値は25μg/m3なので、これをWHOガイドラインの10μg/m3に引き下げるべきだ」と強調しています。

 また、今回の研究者の一人は「欧州では、大気汚染物質の大半が化石燃料の燃焼により発生している。再生可能エネルギーへの切り替えにより、欧州の大気汚染による死亡率が最大55%低減できる」と述べています。
(出典:https://medical-tribune.co.jp/) 

■PM2.5と循環器疾患の発生・増悪

日本国内では大気汚染物質のうち、二酸化硫黄、一酸化炭素、二酸化窒素、光化学オキシダント、浮遊粒子状物質、微小粒子状物質について大気環境基準が定められています。70年代に環境基準が設定され、ガス状汚染物質や浮遊粒子状物質の濃度は大きく減少しました。一方、粒径が2.5μm以下のPM2.5は、粗大粒子よりも肺の奥深くに沈着することからその健康影響が懸念され、09年9月に環境基準が設定されました。そして、PM2.5の健康影響に関する国内外の疫学的知見がまとめられました。欧米を中心に循環器疾患に対する影響の知見は多いのですが、日本国内での疫学知見はほとんどなく、最近ようやく認識されはじめている状況になってきています。

 動物実験や毒性学的研究により、呼吸により肺に吸入されたPMから循環器疾患の発症や既存の循環器疾患の増悪に至るまでには以下の3経路が考えられています。
  ① 肺組織での酸化ストレスと炎症を介する経路 
  ② 肺の知覚神経終末や受容体を介する経路 
  ③ PMやその成分が直接血管内へ移行する経路

 PMへの曝露により,肺胞洗浄液や血液中の炎症性サイトカインが増加することが報告されています。肺局所で放出された炎症誘発物質(サイトカインなど)や生理活性物質が全身循環に広がり、血管系や凝固系へ影響を及ぼす可能性があります。これまでの多くの動物実験より、PM曝露による肺の炎症の程度が、全身のサイトカインレベルや血管の機能不全と相関することも観察されています。このような炎症を介して、動脈硬化の進展やプラークの脆弱化をきたし、最終的には循環器疾患の発症に関わると考えられています。
 一方ラットへのPM曝露により心拍変動の減少がみられ、ヒトへの曝露実験でも同様の変化が観察されました。これはPM曝露による急性の反応であり、自律神経のアンバランスを介して不整脈を起こしやすくし、血管収縮や内皮機能不全をきたすと考えられています。

吸い込まれたPM2.5の行方

気管、気管支に達したPM2.5

気道の表面(上皮)の粘液に溶けやすい成分は、 細胞から血液中に吸収されます。不溶性粒子は、食道に飲み込まれるか、痰としてはき出されます。

肺胞に達したPM2.5

不溶性粒子の一部は肺胞マクロファージに"食べられ"、その後、マクロファージが気管支末端まで移動します。また、不溶性粒子の一部は、そのまま肺組織に沈着します。そして、溶けやすい成分は、血液中に吸収されて全身を巡ることになります。


いつもありがとうございます。
愛・感謝 村雨カレン

0 件のコメント:

コメントを投稿