認知症:注意すべき14の危険因子
認知症のリスクを減らすことができる14の危険因子を、医学雑誌『ランセット』が発表しました。同誌は2020年に12の危険因子を発表していましたが、今回新たに「視力低下」と「高LDLコレステロール」を追加。これら14項目全ての修正に取り組めば、全世界で認知症の発症を45%減らせる可能性があるとしています。
医学分野で最も影響力がある雑誌の1つ『ランセット』は2017年から定期的に、認知症の予防と治療に関する最新のエビデンスについて検討し、その知見を報告しています。今回、2020年以降に発表された新たなエビデンスを確認して、2020年に示した12の「修正可能な認知症の危険因子」に、新たに2つの因子を追加し、以下の14項目を公開しました。
2020年提示の危険因子12 ⇒教育水準の低さ、外傷性脳損傷、運動不足、喫煙、過度の飲酒、高血圧、肥満、糖尿病、聴覚障害、抑うつ、社会的孤立、大気汚染
新たに追加:2つの危険因子 ⇒視力低下、高LDLコレステロール
ランセットは、これら危険因子の修正を行う時期を、若年期、中年期、高齢期に分け、個々の危険因子について、集団寄与危険割合(その因子がなければ発症が何%減るかを示した数字)を推定しました(右図)。これらを合わせると45%になり、14の危険因子がなくなれば、世界の認知症発症の45%が回避できることが示唆されました。これらの危険因子を回避するため、研究者たちは、個人と、公衆衛生や福祉を担当する政策立案者に対して、以下のような具体的な行動を促しています。
●全ての人が質の高い教育を受けられるようにする。中年期以降は、認知機能を維持するために脳を刺激する活動を実施 ●聴覚障害者の補聴器利用を容易にする。有害な騒音に晒される機会を減らして聴覚障害リスクを減らす
▼うつ病患者に有効な治療を実施 ▼接触スポーツや自転車には頭部保護具を使用 ▼運動を実施 ▼禁煙教育、公共の場での喫煙禁止などで禁煙を促す ▼高血圧の予防と治療 ▼中年期に高LDLコレステロールの診断、治療 ▼健康的な体重を維持。肥満者に治療を促す ▼酒類の価格コントロール、飲酒リスクに関する意識向上、過剰摂取を減少 ▼高齢者に優しく支援的なコミュニティの形成、暮らしやすい住居の提供などにより、社会的孤立を減らす ▼視力検査と視力低下に対する治療の機会を提供 ▼大気汚染の機会を減少
これらの修正は、遺伝的背景を持つ人にも発症リスクの低下をもたらすことが分かっています。研究者たちは、「危険因子に対する修正の開始は早ければ早いほどよく、生涯を通じてリスクを低く保つことを目指すべきだ」としています。
(出典:https://business.nikkei.com/)
■視力低下、脂質異常症と認知症
「視力低下」と認知症リスク
近年の研究で、視力低下と認知症、特にアルツハイマー病のリスク上昇との関連性が示唆されています。これは、単なる加齢による視力低下だけでなく、白内障、緑内障、加齢黄斑変性(AMD)といった眼疾患を含むものです。
以下、考えられる5つのメカニズムです。①認知リソースの低下:視力低下が、脳が視覚情報を処理するために多くのリソースを必要とし、認知機能に割り当てられるリソースが減少し、認知機能低下につながる。②社会的孤立と活動性の低下:視力低下は、読書、運転、他人との交流など、様々な活動への参加を妨げ、社会的孤立や活動性の低下を招き、認知機能の低下を加速させる。③脳構造の変化:視覚情報は脳の多くの領域で処理されるが、視力低下によって、これらの脳領域の活動が低下し、構造的な変化を引き起こし、認知機能に影響を与える。④共通の病理:アルツハイマー病などの認知症と、加齢黄斑変性などの眼疾患には、炎症、酸化ストレス、血管機能障害など、共通の病理が存在する。⑤運動不足:視力低下により外出が億劫になり運動不足となることで認知症のリスクが高まる。
多くの観察研究で、視力低下と認知症リスクの関連が報告されています。また、白内障手術などの視力回復手術が認知症リスクに与える影響を調べた研究では、手術を受けたグループで認知症リスクが低下する傾向が示唆されています。
認知症は、視力低下だけでなく、遺伝、年齢、生活習慣など、様々な要因が複雑に関与して発症します。認知症リスクに影響を与える可能性のある他の感覚機能の低下(聴力低下など)も考慮する必要があります。
「脂質異常症」と認知症リスク
脂質異常症によって動脈硬化が進行し、脳の血管が硬くなることが認知症の原因の一つと考えられています。LDLコレステロール値が39mg/dL上昇する毎に、認知症の発症率が8%増加するというデータや、116mg/dL以上の人は認知症リスクが上がるというデータがあります。さらに中年期の高コレステロール血症は認知症と関連することが報告されています。
脂質異常症は、血液中のLDLコレステロール値が高い、トリグリセライド(中性脂肪)値が高い、HDL(善玉)コレステロール値が低い状態を指しますが、脂質代謝を改善することで認知症の予防につながると考えられます。脂質を摂取しすぎないことや脂質代謝を高めるために運動することが大切です。
脂質異常症が進むと動脈硬化によって血管が狭くなり、心臓の血管が詰まると心筋梗塞、脳の血管が詰まると脳梗塞を引き起こします。
このように、「視力低下」及び「脂質異常症」の早期発見と適切な治療は、認知症リスクの軽減につながる可能性があるのです。
いつもありがとうございます。
愛・感謝 村雨カレン
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