2026年6月3日水曜日

セロトニン

 小腸は脳の支配をうけない!?

「小腸は脳の支配をうけない」と言われる背景には、小腸が自律的に働く腸管神経系(いわゆる「第二の脳」)を備えていることが挙げられます。さらに、小腸がんが極めて発生しにくい事実も、小腸ならではの構造や機能と深く関係しています。

 小腸は消化管の中で自律神経系に加えて、独自の「腸管神経系(ENS)」によって制御されています。この神経系は約1億個もの神経細胞で構成され、今なお脳から独立的に多くの情報処理や運動制御を行えます。そのため、脳の指令がなくても食物の蠕動運動や消化液の分泌、栄養吸収が円滑に行われるのです。こうした「脳の支配を受けない」自律性が、小腸の病気の発生や進展の抑制にもかかわっている可能性があります。

小腸にがんができにくい理由

「小腸がん」という言葉はあまり聞きません。非常に稀な病気です(消化器官全体のがんのわずか1%ほど)。それに対して大腸がんは大腸がんの死亡率は、10万人あたり約43.5名であり、女性では死亡数第1位、男性では肺がん、胃がんに次ぐ第3位です(2023年)。

 小腸にがんができにくい理由として以下のようなことが考えられます。

■小腸の粘膜表面の細胞は2~3日と非常に速い周期で新しく再生されており、発がんにつながる異常細胞が長期間とどまることがない。

■消化管の免疫機能が大腸よりも高く、体内に入った細菌や毒素など発がん物質を積極的に排除している。

■小腸の蠕動運動が活発なため、食物や有害物質の腸内滞留時間が短く、発がん原因と接触する機会自体が少なくなっている。

■絨毛やパイエル板*など特殊な構造や免疫組織が多数存在し、生体防御に重要な役割を果たしている。■小腸内のpHは中性に近く、がんを誘発しやすい酸性環境になりにくいだけでなく、胆汁酸や消化酵素、免疫細胞なども発がん抑制に寄与している。

■小腸にある約1億個の神経細胞は脳の神経細胞と殆どつながっていない(脳の支配から独立している)。

*パイエル板とは:リンパ球細胞が密集している独自のリンパ節

 胃、肝臓、腎臓などは腸から分かれた臓器で、小腸から指令を受けているのに対して、大腸は脳と密接につながっています。そのために、小腸は脳のストレスの影響を受けにくいのに対して、大腸はストレスの影響を受けやすいのです。それが、大腸にはがんができやすいのに対して小腸にはがんができにくい理由ではないかと考えられます。

 小腸はときに、脳にも指令を出しています。たとえば、毒物などが入ってきたときには、脳の嘔吐中枢を刺激して吐かせようとするのです。

 小腸は、脳とは別の系統で、体の動きをセロトニンでコントロールしているのです(体内のセロトニンの95%が腸で作られている)。免疫もその一つで、小腸の動きと密接にかかわっているのです。


■腸内のセロトニン、脳内のセロトニン

 セロトニン(serotonin, 5-HT)は、トリプトファン(必須アミノ酸の一種)から生合成される神経伝達物質です。体内に存在する約10mg程度のセロトニンのうち約90%は消化器内にあり、これが「腸は第2の脳」といわれる理由の一つになっています。小腸の粘膜細胞内にあり、ぜん動運動に作用し、消化を助けて整腸作用があります。昨今急増している過敏性腸症候群(IBS:慢性的な下痢や便秘などを伴う腹痛が繰り返される疾患)の症状にもセロトニンが関連しているといわれています。体内の残り10%のセロトニンのうち、8%は血小板に収納され血液中を流れています。血液中のセロトニンには、血液を凝固させる止血作用や、血管の収縮作用などがあります。

活動に大きな影響を与える2%の“脳内セロトニン”

 そして、殆どの病気の原因といわれるストレスなど、人間の精神面に大きな影響を与えているのが、脳内の中枢神経に存在する残りの僅か2%のセロトニンです。体内時計を調節したり、メラトニン(睡眠ホルモン)の原料となったり、ドーパミンやノルアドレナリンの作用を制御して、感情のコントロール、衝動行動や依存症の抑制をしたりしています。また、痛覚の抑制(鎮痛作用)、海馬における記憶力や学習効果にも影響を及ぼしています。咀嚼や呼吸といった反復運動の機能にも作用しています。脳内セロトニンは日常の些細なストレスによっても使われるため、ストレス社会といわれる現代においてはセロトニン量は不足気味で、セロトニン神経系の働きも鈍ります。うつ病などの精神疾患が増える原因でもあります。

脳内セロトニンの原料を食事で摂るのは難しい

 脳内セロトニンを増やすために、原料のトリプトファンを多く含む食材を摂ればいいと勧めている先生もおられますが、実はそう簡単ではありません。トリプトファンの代謝は極めて多様で複雑です。食事で摂ったトリプトファンがセロトニン経路に使われるのはごく一部で、しかも大部分が腸内のセロトニン合成に消費されます。また、食事で摂ったトリプトファンは中々脳内には入りません。血管から脳へと入る物質の関所「血液脳関門」の通過にあたり、トリプトファンは他のアミノ酸(バリン・ロイシン・イソロイシン・フェニルアラニン・チロシン・メチオニン)と共通の輸送体を使っているため、高たんぱく食など他のアミノ酸が多い環境ではトリプトファンは脳内へ殆ど入らず、脳内セロトニンの合成にはつながりません

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【脳内セロトニンを活性化させるには】 

 基本は不規則な生活や睡眠不足などの生活習慣の改善です。セロトニンは太陽の出ている昼間に分泌されやすく、睡眠中や日が沈んでからは分泌が少なくなります。人間が本来持っている『昼間に活動し夜は寝る』という生活リズムが大切です。また、セロトニンにはリズミカルな運動によって活性化されますから、歩行運動、食事の際の咀嚼、意識的な呼吸などを心がけましょう。

 康復医学学会の主要研究生薬の一つ「ラフマ葉」には、脳内セロトニンの分泌、及び脳神経細胞膜の流動性を促すデータがあります。


いつもありがとうございます。愛・感謝 村雨カレン