2012年3月16日金曜日

苦味は薬味①


“春に苦味を盛れ”

寒い日がまだまだ続いていますが、季節は確実に春に向かっています。
日本気象協会が発表した、今春の桜(ソメイヨシノ)の開花予想日では、3月24日ごろ宮崎市や高知市などから北上し、5月18日ごろ北海道根室市に到達するということです。同協会によると、全国的に今冬は厳しい寒さになった上、3月から5月にかけても一時的に冷え込むため開花が遅くなりそうです。それでも野山に目を向けると、フキノトウをはじめとする“春の訪れを告げる山菜”は厳しい寒さに負けず顔を出しはじめています。
食卓を彩るこの春の山菜には独特の味があります。それは「苦味」です。そして、この春の山菜の苦味には意味があるのです。

たとえば野生の動物の場合、冬の間、体温を逃がさないようにするため、できるだけ体を動かさず体内に栄養を蓄えて寒い冬を乗り切ります。そのため冬の間は脂肪がつきやすく、体重も増える傾向にあります。そして、春先になると新陳代謝が活発になり、冬の間、体内にたため込んだ脂肪や老廃物を体の外に出そうと体が変化していきます。冬から春にかけて体の変化がスムーズに行われるためには、苦味成分を持つ春の山菜が欠かせない食べ物だったのです。 冬眠から目覚めた熊が一番初めに口にするのは「フキノトウ」だといわれています。フキノトウの苦味を体内に取り入れることで、冬の間眠っていた体を目覚めさせるだと考えられます。

日本料理では『春に苦味を盛れ』という言葉があるそうです。そして、ほとんどの“春の味”は苦味があり、これを食して「春が来たなぁ」としみじみ感じるのです。そして、一説には苦味を持つ山菜には、抗酸化作用や、冬の間に低下した新陳代謝を促進する作用があるのです。また、味覚を刺激したり、唾液の分泌を促して消化を助けるなどが期待できますが、「苦味」はそれだけではありません。次項ではこの「苦味」をテーマに、数回シリーズでお送りしようと思っています。ご期待ください!


■「苦味は薬味」①

動物の五感の一つ、味覚は、甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の5つが基本味として感じられます(※“辛み”は刺激として捉えられており味覚に含まれていません)。人の場合、主に舌で感じますが、5つのうちで最も感度が高いのが苦味です。

味覚によって感じる所が異なる
食べ物を口に入れたとき、すべての種類の味を舌で同じように感じるわけではありません。それぞれの味に対する舌の感覚はその味の種類によって感受性が高い部位が異なっておりそれぞれの味に特に敏感な舌の部分があります。中でも苦いという感覚は感受性が強く、特に舌の奥の方が敏感です。一般的に苦さに対する感覚は甘さや辛さに比べて強いものです。しかし、味覚に対する感覚は、年をとるにつれて鈍くなる傾向があります。

「良薬は口に苦し」の根拠とは?
苦いものといえば、「良薬は口に苦し」という諺を思い浮かべます。薬物は用量によって薬にも毒にもなり得ます。薬物として有効なわずかな量でも、人間の舌は毒物による苦味として敏感に感じ取ってしまいます。薬には苦味がつきものなのですが、良薬ほど口に苦いのには理由があるのです。
 苦味物質は、水に溶けにくく、油に非常に溶けやすい(親油性)ものが多く、親油性が高いほど低い濃度でも苦味が強いという性質を持っています。多くの薬は、人体の細胞膜の受容体に結合して、薬理作用を発揮します。このとき、親油性の高いものほど受容体と結合しやすく、細胞膜を透過しやすくなります。つまり、親油性の高い性質をもつ苦味物質は、低い濃度でも薬理効果をもたらし、苦味も強く、“薬理効果が高い良薬は苦い”ということになるのです。

 人々は苦味を取り入れることで生活に潤いをもたらし、味覚の世界を豊かにしてきました。苦味は人間だけが楽しむことのできる味であり、その効果が期待できる味でもあるのです。
 そうです、古来よりの生薬「霊芝」も苦いのです!


いつもありがとうございます。
愛・感謝 五月雨ジョージ

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