2024年6月26日水曜日

発酵性食物繊維

 腸活、今は善玉菌より短鎖脂肪酸

 今話題の「腸活」。食物繊維が豊富な食材を積極的に摂ると、体内ではどんなことが起こっているのでしょうか。

 普段はまず意識することはありませんが、私たちの口の中、胃、小腸、生殖系、皮膚などには数えきれないほどの菌がすんでいます。「中でも約40兆個と最も多くの菌がいるのが大腸。世界のあらゆる環境のなかで最も高密度で菌が生息しています」というのは腸内環境の専門家で、慶應義塾大学先端生命科学研究所特任教授の福田真嗣氏。

そんな腸内細菌は古くから、善玉菌、悪玉菌、日和見菌といった言葉で、菌の種類に着目されていましたが、むしろ今フォーカスされているのは菌の種類より、菌が腸内でつくりだす"代謝物質"です。これらヒトに影響を与える代謝物質を「ポストバイオティクス」と名づけ、研究が進んでいます。そのうち、最近テレビのCMなどでスーパー物質として話題なのが「短鎖脂肪酸」酢酸プロピオン酸酪酸のトリオのことです。

「これら短鎖脂肪酸は、腸内細菌がつくりだす代謝物質の中でもかなりの割合を占めるものでもある。腸管の上皮細胞に働きかけ、腸管を守るだけでなく、腸管から血中に入り、門脈を通って肝臓に到達。さらに膵臓、筋肉など全身を巡る。短鎖脂肪酸は、肥満や炎症、アレルギーの抑制が報告されているほか、我々の研究でも持久力を向上させると示唆されている」(福田氏)

 そもそも福田氏は10年以上前に、ビフィズス菌のつくる酢酸が腸管でO-157感染を抑えることを報告した一人です。ここ10年で短鎖脂肪酸の作用が腸管のみならず、全身にも及ぶことがわかってきたのです。

 では短鎖脂肪酸を増やすにはどうすればいいのでしょうか。

 これもまた水溶性、不溶性と分けられてきた食物繊維の考え方をアップデートする必要があります。「食物繊維のなかでも発酵しやすい「発酵性食物繊維」(Microbiota-accessible carbohydrates=MACs:腸内細菌が使える炭水化物群)が重要だ。主に穀類、海藻類、豆類、キノコ、果物、いもに多く含まれる」(福田氏)

(出典:https://gooday.nikkei.co.jp/)


■高発酵性の食物繊維High MAC

 現在研究者の中で注目されているのは、腸内細菌による食物繊維の「発酵」です。ここでいう発酵とは、"食物繊維が腸内細菌によって分解されること"を指しています。

 これまで、食物繊維の機能は、水に溶けるか、溶けないかという物性で分類されてきました。「不溶性食物繊維」は便のかさを増し腸内の有害物質の排出を助ける、「水溶性食物繊維」は糖の吸収や脂質の吸収を抑える、という特徴があるからです。ところが、炭水化物の発酵で増える「短鎖脂肪酸」の機能が明らかになって、物性よりも「いかに発酵させるか」が着目されてきたのです。これからは高発酵性か低発酵性か、つまり腸内細菌が利用できるかどうかが重視されてくるでしょう。

 一般的に水溶性食物繊維の殆どが腸内細菌により利用される"発酵性"の食物繊維です。一方、セルロース等の不溶性食物繊維の多くは"非発酵性"です。但し、不溶性食物繊維の全てが非発酵性ではなく、米ぬかや小麦外皮、トウモロコシ、ライ麦、オーツ麦等に含まれるアラビノキシランのように、不溶性であっても腸内細菌により発酵するものもあります。食物繊維の有用な機能を見逃さないためにも発酵性・非発酵性による分類は重要なのです。

【発酵性食物繊維が多い食品は?】

 欧米では、既に発酵性食物繊維は「MAC(Microbiota Accessible Carbohydrates)」(腸内細菌が食べる炭水化物)と呼ばれ、それを多く含む食品は「High MAC(高発酵性食物繊維)」食品として、他の食品との差別化が図られています。

発酵性食物繊維は全粒穀物や果物、野菜、キノコなどに多く含まれます。特に主食となる玄米や全粒粉等の穀物での摂取が重要です。High MACが注目される理由は、発酵でできる短鎖脂肪酸に、脂質代謝の改善や炎症の抑制等、生活習慣病の予防機能があるからです。

【お腹がゴロゴロするのは発酵スピードが関係?】

 一方で、腸が敏感な人は、発酵性食物繊維の豊富な食品はお腹がゴロゴロする、と心配かもしれません。オリゴ糖や乳糖、果糖等の糖の結合数が少ない発酵性炭水化物(FODMAP(フォドマップ))は腸内細菌による発酵スピードが速いため、急激にガスが発生し、お腹が張ったり、痛くなったりするため、過敏性腸症候群の人は避けるように言われます。あくまでも発酵スピードの問題です。また、“FODMAP=High MAC”ということではありません。


 腸内の有害物質の排出には、発酵性食物繊維だけではなく、非発酵性食物繊維も必要です。腸内細菌も食事も多様性が大事。"多様性のある植物食材"を摂ることが必要です。


いつもありがとうございます。

愛・感謝 村雨カレン

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