2014年3月1日土曜日

依存症とドーパミン

誰にでも起りうる依存症

前号で紹介した喫煙の習慣性は、ニコチンによる依存症が疑われます。
 “依存症”というのはWHO(世界保健機関)が提唱した概念で、以前は一般社会では「~中毒」などと呼ばれていました。「~がないと生きていけない」ように感じて、繰り返し行う状態を指します。
 依存症は患者数がとても多い病気です。例えば厚生労働省の推計では、喫煙依存症は日本に1300万人もいます。

3種類ある依存症

依存の対象は、「物質への依存」「プロセスへの依存」「人間関係への依存」の3種類があります。「物質への依存」の対象はニコチンやアルコール「プロセスへの依存」の対象はギャンブルやセックス「人間関係の依存」の対象は恋愛やカルト宗教などです。

各依存症の依存対象そのものには共通性がほとんどありませんが、実は人の脳の中で起る重要な共通点があるのです。それは、どの依存症も脳内神経伝達物質のドーパミンが分泌されているということです。
 ドーパミンが放出されて、脳は快感を覚えます。そしてこの結果は情報として海馬に記憶されます。このようなことが起こる物質や行為は、すべて依存症の対象になる可能性があります。つまり依存の対象になりそうなものを、アレルギー物質のように日常生活から取り除いたところで、また新たな対象に依存してしまうということも考えられるのです。

 依存症は物質だけが起こすものではなく、脳自体の病気なのです。人は最初の体験が快感とともに記憶されると、「再びあの体験をしたい」と考えるようになります。しかし、日常生活でドーパミンが放出される状況は、なんら特別ではありません。そのたびに依存症になっていたら、世の中の人はすべて依存症になってしまいます。
 そうならないように、ドーパミンその他の神経伝達物質のバランスを、脳内セロトニンが整えて、過度の反応を抑えているのですが、依存症の人の脳ではドーパミンが過度に分泌されてセロトニン作用が追い付かず、バランスが崩れてしまっているのです。


 例えば強烈な欲求があり、やめられないというだけならば毎日の食事も依存症に当たるかもしれません。しかし、普通は食事を1日3回にコントロールできます。
 もし、食事の量が極端に増え、生活費の大半を食費に使い、必要以上に食べては吐きを繰り返し、悪いとわかっていてもやめられないとしたら、それは過食症(摂食障害)という依存症なのです。

国際的な依存症の診断基準

 (1)対象への強烈な欲求・強迫感がある
 (2)禁断症状がある
 (3)依存対象に接する量や時間などのコントロールができない
 (4)依存対象に接する頻度や量が増えていく
 (5)依存のために仕事や通常の娯楽などを無視または制限する
 (6)心や体に悪いことを知っていても続けている

 上記の6症状のうち、過去1年以内に3つ以上を繰り返し経験したか、1ヶ月以上にわたって3つ以上の症状が同時に続いた場合、依存症と診断されます。

ドーパミン過剰・ドーパミン不足になると

ドーパミンは、脳の前頭前野を興奮させ、意欲的にさせる物質ですので、過剰に分泌されると・・・

 (1)興奮状態になり、時には攻撃的になる
 (2)アルコールやタバコの依存症や過食など、ある種の行動がやめられなくなる
 (3)幻覚を見たり、妄想を抱いたりする(統合失調症)

また、ドーパミンが不足すると・・・

 (1)意欲や興味、好奇心などが減退し、無気力な状態になる
 (2)パーキンソン病を発症する

などの症状が表れます。また、うつ病もドーパミンとの関係が疑われています。
 これらの病気の仕組みをよく理解して、自分へのご褒美である快楽物質をコントロールしていくことが重要です。

※『脳内麻薬』(中野信子著/幻冬舎新書)参考


いつもありがとうございます。
光・愛・感謝 五月雨ジョージ

0 件のコメント:

コメントを投稿