「アディポネクチン」がメタボ・糖尿病を助ける
東京大学病院糖尿病・代謝内科教授の門脇孝氏,同科講師の山内敏正氏らの研究チームは、メタボリックシンドロームや糖尿病を防ぐホルモンの働きを活発にする物質をマウスの実験で発見した、と英科学誌ネイチャー電子版に発表しました。このことは、メタボや糖尿病を改善する薬の開発につながる、とても大きな研究成果で、研究チームは「5年以内に臨床試験に入りたい」としいます。
脂肪細胞から分泌される善玉ホルモン「アディポネクチン」は血中で脂肪を燃焼させたり、糖を分解するインスリンの働きを助けたりします。このアディポネクチンの血中濃度が下がるとメタボや糖尿病の原因となり、心臓病やがんの危険性が高まるとされています。
教授らは600万種類以上の化合物の中から、アディポネクチンの受容体を活性化させる物質を見つけました。この物質を飲み薬として2型糖尿病のモデルマウスに1日1回、10日間与えたところ、与えないマウスに比べ、インスリンが効きやすくなったほか、筋肉や肝臓で脂肪酸を燃やす酵素が活発になるなど、運動と同じような効果がありました。
脂肪の多いエサを与えたマウスの120日後の生存率は30%でしたが、同じエサでもこの物質を飲ませたマウスは70%でした。
メタボや糖尿病は、食事制限や運動療法が有効とされますが、心筋梗塞などの病気やひざ・腰の障害などで運動や食事制限ができない多く、アディポネクチンを薬にできれば糖尿病などを改善できると期待されますが、構造が複雑なため、飲み薬としての量産は難しいとされています。
アディポネクチンは、脂肪細胞から分泌されるホルモンです。運動や食事制限で増えることがわかっています。不足すると、糖尿病以外にも、がんや心臓病、肝臓病、アルツハイマー病などが発症しやすくなると考えられています。
100歳以上の長寿者では、血液中のアディポネクチン濃度が高いという研究結果もあります。
■肥満に密接に関係するホルモン
アディポネクチンとレプチン*は、いわば兄弟のような関係で、共に「アディポサイトカイン(アディポカイン)」と呼ばれる、脂肪細胞から分泌されるホルモンです。双方とも肥満に対して密接な働きをしてます。*レプチン(leptin)とは : レプチンは脂肪細胞によって作り出され、強力な飽食シグナルを伝達し、交感神経活動亢進によるエネルギー消費増大をもたらすペプチドホルモンです。レプチンの役割は、肥満の抑制や体重増加の制御、および食欲と代謝の調節です。
アディポネクチンとレプチン
アディポネクチンは脂肪細胞から分泌され、肥満状態や内臓脂肪過多状態で低下し、体重減少によって増加します。糖尿病患者、冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞)患者では低下していることが知られています。通常は血中に多く存在し、抗糖尿病作用、抗動脈硬化作用、抗炎症作用を有し、いろいろな生活習慣病の予防に大切な働きをしていると考えられています。一方肥満によりアディポネクチンの低下した状態では、高血圧、糖尿病、動脈硬化、脂質異常症(高脂血症)を引き起こすと考えられます。レプチンは脂肪細胞から分泌されるサイトカイン**の一種で、通常は肥満によって増加し、脳の視床下部に作用し、食欲減退、エネルギー消費量増大、抗インスリン抵抗性を増大させるように働き、肥満の影響を少なくしようと防御的に働いていますが、肥満状態が続くと、レプチンの効果が無くなってきます。これを「レプチン耐性」といいます。このような状態になりますと、いくら食べても満腹感が無くなってきます。
**サイトカイン (cytokine) とは : 細胞から分泌されるタンパク質であり、細胞間相互作用に関与する生理活性物質の総称です。標的細胞にシグナルを伝達し、細胞の増殖、分化、細胞死、機能発現など多様な細胞応答を引き起こすことで知られています。
睡眠不足はレプチンの分泌を抑制する
睡眠時間と食欲を調整する2つのホルモン、グレリンとレプチンの血液中の濃度を調べた結果(上表)、日頃から5時間しか寝ていない人は、8時間の人に比べて、グレリンが15.5%多い一方、レプチンは14.9%低い結果が出ました。いつもありがとうございます。
光・愛・感謝 五月雨ジョージ
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