2025年10月1日水曜日

老年期うつ

 老年期うつ病

 日本は世界一の長寿国です。2022年の「平均寿命」は男性81.05歳、女性87.09歳となっています(厚生労働省調査)。しかし、「健康寿命」(健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間)を見ると、男性72.57歳、女性75.45歳と、平均寿命より男性で8.49年、女性で11.63年も短くなっています。つまり多くの人は、70代から何らかの健康問題を抱え、生活を制限されながら10年近くの余生を過ごすことになるわけです。

 中高年~老年期では、老化の進行により、体の様々な箇所で支障をきたすことから「体の調子」に目が行きがちです。ですが、健康で元気に長生きするためには、「心の調子」にも目を配る必要があります。特にシニア層は、「老年期うつ病」に注意が必要です。

「老年期うつ病」は、65歳以上の人がかかるうつ病のことで"老人性うつ"や"老後うつ"とも呼ばれます。生きがいや物事に対する興味を感じなくなったり、漠然とした不安にかられたりする特徴があります。

 生きがいを感じられず、幸福感を得られないと、生活の質も落ちていきます。加えてその状態を放置すると、「ひきこもりがちになる」→「外界との交流がなくなる」→「足腰が弱まり、ロコモティブシンドローム*になる」→「認知症&寝たきりになる」といった悪循環に陥ることになりかねません。

*ロコモティブシンドローム:筋肉や骨、関節、神経などの運動器の障害で、立ったり歩いたりする移動機能が低下した状態。

 高齢者の生きがいを感じている割合が減っている事実もあります。内閣府の「令和3(2021)年度 高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査結果」(60歳以上の男女、2435人)によると、生きがいを「十分に感じている」という人は23.1%にとどまります。これは平成25(2013)年の結果、38.5%に比べて大きく減少しています。「(生きがいを)多少感じている」人の割合は50.1%ですが、理想は「十分感じている」状態です。

 厚生労働省の調査結果(2017年)によると、気分障害(うつ病、双極性障害など)の年齢別患者割合は、65歳以上が最も多く31.7%。この数字を見ても、高齢者のメンタルケアが欠かせないことが分かります。

 気分障害の原因には、ストレスが大きく関与しています。強いストレス状態が続くと、コルチゾール(=ストレスホルモン)の分泌量が増え、細菌やウイルスなどへの免疫力が低下します。このため、ストレスを減らす考え方や行動、ストレスを受けたときの対処法が重要です。

 味気ない現実、面倒な人間関係、健康上の不安、経済的な心配など、人生にはストレスがつきものです。高齢者の場合、残りの人生を悲観したり、健康や経済面の不安も増大したりして、気持ちが落ち込みます。しかし、これを侮ってはいけません。こうしたストレスが蓄積していき、老年期うつ病につながっていくからです。

(出典:https://gooday.nikkei.co.jp/)


■老年期うつと認知症の違い

症状の進行速度 :認知症は、記憶障害などが徐々に進行することが多く、発症時期がはっきり確定できません。老年期うつは、何かの原因や環境変化に伴って、比較的短い期間に様々な症状が出るため、周囲の人が気付きやすいという特徴があります。

 自責の念の有無 老年期うつの方は、「自分の病気のせいで、周りの人に迷惑をかけている」という自責の念が強くなり、抑うつ症状が特に強く見られます。老年期うつと違い、「死にたい」という気持ちや自責の念を訴えることはあまりありません。

 本人の自覚の有無 認知症の場合、問題行動は見られますが、認知機能の低下で、自分の症状に無関心になることが多くなります。不安や抑うつ症状は、認知症のBPSD(周辺症状)の一部として出る場合もありますが、主要な症状のことはあまりありません。老年期うつの人は、自分の認知機能の低下を、その前後で自覚できるため、自分の症状が悪化していないかどうかをよく気にするようになります。

 記憶障害(物忘れ)の有無 記憶障害は、うつと認知症の両方にみられますが、症状の表れ方が違います。認知症の場合、軽度の記憶障害から始まって、徐々に進行していきます。日常で食事したこと自体を忘れてしまうなど、物事自体を忘れてしまいます。老年期うつの人の場合、環境変化や日常のストレスなどをきっかけとして、突然数日前のことを思い出せなくなり、それによって本人自身の心配や不安が高まっていく傾向があります。

 質問に対する受け答え方の違い 認知症の人は、質問に対して、見当違いな回答をします。そのことを指摘すると、取り繕う様子が見られることも多い。老年期うつの場合は、質問に対して考え込んでしまい、明確な回答ができないことが多いという特徴があります。

うつ病改善のカギは「セロトニン」

 脳内セロトニン(神経伝達物質)は、気分や睡眠、食欲などの調節に関わり、うつ病の発症にはセロトニンの機能低下が関与していると考えられています。特に高齢者は、セロトニンの分泌量が減少し、セロトニン作動性の神経細胞も減少するため、うつ病リスクが高まるのです。セロトニンを増加させれば、うつ病の症状の改善、予防に繋がる効果が期待できます。

 康復医学学会の主要研究素材「ラフマ葉」には脳内セロトニンを増加させ、セロトニン神経の通過性を安定させる作用が確認されています。


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愛・感謝 村雨カレン