2024年8月28日水曜日

脳動脈解離

 高すぎる枕は脳卒中につながる?

 国立循環器病研究センター(国循)は今年1月、脳卒中の原因の1つである「特発性椎骨動脈解離」は枕が高いほど発症割合も高く、より固い枕では関連が顕著であることを立証し、新たな疾患概念を提唱したことを発表しました(欧州の学術誌「European Stroke Journal」に掲載)

 脳卒中は、脳の血管が詰まったり破れたりすることで脳の一部の機能が失われ、身体の一部が麻痺するなどの症状が出る疾患です。通常は加齢によって、中には若年~中年期でも生活習慣病などによって起きるとされ、「2022年人口動態統計の概況」(厚生労働省)によれば、死因の第4位(脳血管疾患)となっています。

 特発性椎骨動脈解離は、脳卒中の原因の1つで、首の後ろの椎骨動脈が裂けてしまうことで脳卒中を引き起こします。患者の約18%に何らかの障害が残り、根本治療がなく、予防のための原因究明が求められていましたが、約2/3の患者では原因不明でした。

 研究チームは、起床時発症の患者の中に、極端に高い枕を使っている人がいることに着目し、「高い枕」と「特発性椎骨動脈解離」の関連について調査、検討したのです。

 調査の結果、高い枕の使用は症例群が対照群より多く、12cm以上の枕では34%対15%、15cm以上の枕では17%対1.9%で、高い枕の使用と特発性椎骨動脈解離の発症には関連が見られました。そして、枕が高ければ高いほど、特発性椎骨動脈解離の発症割合が高いことも示唆され、この関連は枕が硬いほど顕著で、柔らかい枕では緩和されていたそうです。

 研究では、高い枕の使用が特発性椎骨動脈解離の発症に関連があり、特発性椎骨動脈解離の約1割が高い枕の使用に起因し得ることが示されました。枕の使用は容易に修正可能であるため、予防につながり得る点において今回の成果は意義があるとしています。

 時代劇などでも見られますが、日本には「殿様枕」と呼ばれる高く硬い枕が17~19世紀に使われていました。髪型を維持するのに有効だったとされ、名前は"殿様"だが広く庶民の間にも流通していました。1800年代の複数の随筆には、「寿命三寸楽四寸(12cm程度の高い枕は髪型が崩れず楽だが9cm程度が早死にしなくて済む)」(右図)といった言説が流布していたという記載が残されており、当時の人々は、高い枕と脳卒中との隠れた関連性を認識していた可能性がありそうです。

 研究チームは、今回示された患者が特有の疾患像を有していることから、暫定的な疾患概念「殿様枕症候群(Shogun pillow syndrome)を提唱しています。枕の硬さや高さなどで、睡眠の質が変わることは周知のところですが、何気ない睡眠習慣が、脳卒中の重要危険因子になることが世に広く認識され、脳卒中で困る患者が少しでも減ることが期待されます。

(出典:https://news.mynavi.jp/)


■脳動脈解離(椎骨動脈乖離)

 脳動脈解離は、40~50代の男性に多くみられます。原因不明もありますが、外傷や首を過度に曲げた場合にも起こります。場合によっては、クモ膜下出血や脳梗塞のリスクとなるため、手術が必要になることもあります。

 脳動脈解離とは、脳動脈の壁にある三層のうち内側の膜が裂けることで発症する疾患です。血管壁内に血液が流入することで血管内腔が狭くなって血流が滞り脳梗塞を生じたり、血管壁が破綻してクモ膜下出血を生じたりします。

 脳の動脈の壁は内膜、中膜、外膜という構成になっています。この内膜と中膜のあいだに「内弾性板」という強固な組織があるのですが、加齢や高血圧で強い負荷を長く受けることで次第に弱くなり、断裂しやすくなると考えられています。

 脳動脈解離が発生する脳の部位は、内頚動脈系(主に大脳半球に血流を送る血管)と椎骨・脳底動脈系(主に小脳や脳幹に血流を送る血管)があります。

 脳動脈解離は発生部位は、アジア人は椎骨・脳底動脈系に多いことが知られています。

脳動脈解離が起こる原因

 脳動脈解離が起こる原因は、外傷性、進展性、特発性の3パターンに分けられます。

【外傷性】外傷性の脳動脈解離は外部からの衝撃で脳の血管が裂けて発症するタイプ。強い衝撃は明らかでなく、頚部の進展が生じた場合(ゴルフ、カイロプラクティックなど)でも生じることがある。

【進展性】内頚動脈や椎骨動脈が直接解離をきたしていなくても、その中枢側での解離(大動脈解離)が生じた場合、解離の進展によりその末梢血管である内頚動脈や椎骨動脈にまで進展することがある。

【特発性】脳動脈解離の原因が不明の場合。

脳動脈解離の症状、治療方法

 椎骨動脈解離の代表的な症状は、後頭部に突然の強い頭痛を感じることです。中年男性が突然の強い後頭部痛を訴える場合には、脳動脈解離が起きているケースがみられることがあります。動脈解離によりくも膜下出血を生じた場合は、強烈な頭痛もしくは意識障害を生じ、場合によっては死に至る可能性があります。

 脳動脈乖離の検査はMRI、MRA、3D-CTA、脳血管撮影などで行われ、解離の進行などに合わせ、抗血栓薬による投薬や、コイル塞栓術、開頭クリッピングの手術が行われます。

 脳動脈解離の前兆があったら、すぐに病院を受診して早期発見することが重要です。

 代表的な前兆としては、今までに経験したことがない頭痛や、50歳以降における初発の頭痛などが挙げられます。


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2024年8月22日木曜日

PM2.5と循環器疾患

 喫煙と循環器疾患

 たばこを吸うと、動脈硬化や血栓の形成が進むことから、虚血性心疾患を引き起こす原因となります。また、脳卒中(脳出血、くも膜出血、脳梗塞)のリスクを高めます。それだけでなく、喫煙は動脈硬化性疾患の早期発症や重症化にもつながることが報告されています。

 たばこの煙の血管系への影響 

 たばこの煙の中には、ニコチン、一酸化炭素(CO)、一酸化窒素(NO)、シアン化水素(HCN)、活性酸素(O2-)などの有害化学物質が含まれます。ニコチンは交感神経を刺激して、心拍数の増加、血圧上昇、心筋の収縮及び酸素需要の増加を引き起こします。同時に、血管収縮による血流量の低下、酸素や栄養の供給低下を招きます。COは、酸素供給能力の低下を招くとともに、血管内皮の組織障害や血栓形成の要因になります。活性酸素は炎症反応を誘発し、血管内皮の組織障害、脂質過酸化、インスリン抵抗性、血小板凝集などを通じて、動脈硬化や血栓の形成を引き起こします。

【虚血性心疾患】:虚血性心疾患には、狭心症や心筋梗塞があります。喫煙によって動脈の炎症や収縮が引き起こされ、動脈硬化や血栓の形成が進みます。また、血小板の凝集も血栓の形成につながります。これらの機序(メカニズム)の相互関連によって、虚血性心疾患を発症します。研究から、喫煙が虚血性心疾患の発症、および死亡リスクの増加は明らかです。また、喫煙本数を減らしたり、低タール・低ニコチンたばこへ切り替えても、虚血性心疾患のリスク低下にはつながらないとの結論が示されています(米国の報告書より)。

【脳卒中】:喫煙による脳の動脈の動脈硬化や血栓の形成、炎症反応により、脳梗塞やくも膜下出血の発症、および死亡のリスクが高まります。

【その他喫煙によって引き起こされる循環器疾患】:喫煙によって、末梢の動脈硬化症、主に閉塞性動脈硬化症や頸動脈硬化症のリスクが高まります。さらに、腹部大動脈瘤の破裂にも影響していることが明らかになっています。

 受動喫煙と循環器疾患 

 たばこの有害化学物質は、副流煙と喫煙者が吐き出した呼出煙とが混じりあった「環境たばこ煙」の中にも含まれます。そのため、喫煙者本人だけでなく、周りの人の健康へも悪影響を及ぼします。たばこ煙に晒された非喫煙者も、喫煙者本人と同様の機序で虚血性心疾患、脳卒中などのリスクが高まります。受動喫煙と、虚血性心疾患や脳卒中との関連には、因果関係の推定に十分な証拠がある(レベル1)と判断されています。

 加熱式たばこと循環器疾患 

 加熱式たばこは、一酸化炭素など他の有害化学物質については紙巻たばこよりも少ないという報告はあるものの、一方で、紙巻たばこには含まれない有害化学物質や、紙巻たばこよりも多く含む物質があるという指摘もあります。世界保健機構(WHO)の報告によると、加熱式たばこが紙巻たばこと類似した心血管毒性を有することが示唆されています。

(出典:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/)


■PM2.5と循環器疾患の発生・増悪

 日本国内では大気汚染物質のうち、二酸化硫黄、一酸化炭素、二酸化窒素、光化学オキシダント、浮遊粒子状物質、微小粒子状物質について大気環境基準が定められています。70年代に環境基準が設定され、ガス状汚染物質や浮遊粒子状物質の濃度は大きく減少しました。

 一方、粒径が2.5μm以下のPM2.5は粗大粒子よりも肺の奥深くに沈着することからその健康影響が懸念され、09年9月に環境基準が設定されました。PM2.5は中国からの越境汚染が話題になりますが、国内でも喫煙可能な室内は、北京市の最悪時の濃度と変わらないことは未だにあまり報道されていません。欧米を中心に循環器疾患に対する影響の知見は多いのですが、日本国内での疫学知見は少なく、最近ようやく認識されてきたという状況です。

 動物実験や毒性学的研究により、呼吸により肺に吸入されたPMから循環器疾患の発症や既存の循環器疾患の増悪に至るまでには以下の3経路が考えられています。

(1)肺組織での酸化ストレスと炎症を介する経路 

(2)肺の知覚神経終末や受容体を介する経路 

(3)PMやその成分が直接血管内へ移行する経路

 PMへの曝露により,肺胞洗浄液や血液中の炎症性サイトカインが増加することが報告されています。肺局所で放出された炎症誘発物質(サイトカインなど)や生理活性物質が全身循環に広がり、血管系や凝固系へ影響を及ぼす可能性があります。これまでの多くの動物実験より、PM曝露による肺の炎症の程度が、全身のサイトカインレベルや血管の機能不全と相関することも観察されています。このような炎症を介して、動脈硬化の進展やプラークの脆弱化をきたし、最終的には循環器疾患の発症に関わると考えられています。

 一方ラットへのPM曝露により心拍変動の減少がみられ、ヒトへの曝露実験でも同様の変化が観察されました。これはPM曝露による急性の反応であり、自律神経のアンバランスを介して不整脈を起こしやすくし、血管収縮や内皮機能不全をきたすと考えられています。

吸い込まれたPM2.5の行方

●気管、気管支に達したPM2.5

 気道の表面(上皮)の粘液に溶けやすい成分は、 細胞から血液中に吸収されます。不溶性粒子は、食道に飲み込まれるか、痰として吐き出されます。

●肺胞に達したPM2.5(右図)

 不溶性粒子の一部は肺胞マクロファージに食べられ、その後、マクロファージが気管支末端まで移動します。また、不溶性粒子の一部は、そのまま肺組織に沈着します。そして、溶けやすい成分は、血液中に吸収されて全身を巡ることになります。


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愛・感謝 村雨カレン

2024年8月7日水曜日

糖質

 夏の食事 ⇒ 秋には怖い現実が

 夏はのど越しが良いめん類を食べる機会が増えます。単品で食べがちなめん類は、糖質過多になり、他の栄養素が不足するため、注意が必要です。めん類を食べるときには、意識して肉や野菜、海藻類、きのこ類などをトッピングして、たんぱく質やビタミン、ミネラル、食物繊維も一緒に摂取することを心がけましょう。

 糖質は体のエネルギー源になる大切な栄養素ですが、摂り過ぎると太りやすくなります。これは、血糖値の上昇が関係しています(〔糖質過多〕⇒〔体内の血糖値が急上昇〕⇒〔膵臓からインスリン大量分泌〕)。このインスリンは、血糖値の低下に働くだけでなく、エネルギーとして使われなかった糖を中性脂肪などに合成して蓄積する働きもあるのです。

 血糖値の上昇を抑えるには、炭水化物を摂り過ぎないことと、「GI値」が低い食品を選ぶことです(GI値:その食品を摂取したときにどのくらいのスピードで血糖値が上がるかを示した数値)。GI値が低いほど、血糖値の上昇がゆるやかな食品とされています。玄米や胚芽米、全粒粉のパン、全粒粉のパスタやそばなどが挙げられます。最近では「糖質ゼロ」「低糖質」のめん類やパンも販売されています。炭水化物中心の食事になりがちな方は、これらがお勧めです。

 夏場に食べたくなるアイスクリームやシャーベットも糖質が多く、糖質過多の原因になります。好きな人が我慢するとストレスになるので、代わりに「果物」を活用しましょう。果物に含まれる「果糖」は、直接血糖値を上げることはなく、また、果物には体調を整えるビタミン・ミネラル・食物繊維の他、抗酸化作用のある機能性成分を多く含むので、美肌や便秘、むくみの改善など健康の維持に役立ちます。水分も多く、朝食に摂ることで、就寝中に失った水分を補うのに最適です。また、果実の噛み応えや適度な甘味は満足感にもつながります。ただし、果物に含まれる糖には果糖のほか、炭水化物と同じブドウ糖や、ショ糖もあります。特にブドウ糖やショ糖は吸収が早く血糖値が上がりやすいため、食べ過ぎには注意が必要です。お勧めは、キウイ、グレープフルーツ、りんごなど。

 お酒好きが注意したいのが、酒類に含まれる糖質。特にビールは他の酒より糖質が多く、空腹時に飲めば血糖値が上昇してしまいます。飲む前に野菜やキノコ類など食物繊維を含む食品を摂ることで、血糖値の上昇はゆるやかになります。また最近では、糖質オフのビールも販売されています。おすすめは糖質ゼロのハイボールや焼酎です。おつまみは、糖質の多いものは控えましょう。また、飲み過ぎは暴飲暴食につながります。締めのラーメンやスイーツは、更に糖質の摂り過ぎになります。適度な飲酒を心がけましょう。

 最後に、夏場の水分補給としてスポーツ飲料を飲む方がいますが、これには糖分が非常に多く含まれているので注意が必要。熱中症対策が太る原因になることもあります。

(出典:https://diamond.jp/)


■糖質をやめられない理由

 食べ物を摂取できない状態が続けば、肝細胞などに取り込まれていたグリコーゲンが、それも尽きれば脂肪細胞の中性脂肪が燃えることによって、私たちはエネルギーを得て、血糖値を安定させて命をつなぐことができます。逆に言えば、飢えた状態でも生き延びることができ、血糖値は下がり過ぎないのです。現代人に「いざというとき」はめったに訪れませんが、私たちの祖先は絶えず危機に直面し、日常的に飢えていて「いつ死んでもおかしくない」状態に置かれていました。そんな状態にあった祖先の脳には「血糖値を下げ過ぎるな。機会があれば糖質を摂れ」という指令がプログラムされています。私たちはそれを引き継いでおり、野菜や魚を食べられない人がいてもご飯やラーメンが嫌いだという人がいないのはそういう理由があるからです。つまり、生き延びるために糖質を摂るようにできているのです。

 そして、糖質を摂ったときには幸せを感じます。糖質によって血糖値が上がるとセロトニンやドーパミンが放出されて脳が快楽を得るのです。

 ところが現代人は飢えてもいないのに脳の快楽のため過剰な糖質を摂っています。まさに"糖質中毒"です。薬物依存研究の専門家は、「薬物依存と食べ過ぎはメカニズムが似ている」と指摘しています。脳が「報酬」を得られるために繰り返す中毒だというわけです。

病気の根本原因には必ず砂糖がある

 日本人の糖尿病に関する最も古い記録は平安時代の菅原道長の日記ですが、一般人が糖尿病にかかるようになるのは、戦後20年くらい過ぎてからのこと。経済の急成長とともに多くの人たちが白米や麺類、甘いお菓子や飲み物を口にできるようになり、糖尿病も増えていきます。そして、現在ほど30代~40代の男性に肥満者が多い時代はありません。

 生活習慣病は明らかに文明病と言えます。中でも食生活の変化が現代人を苦しめる病気を作り出したのです。肥満、糖尿病、高血圧、がん、脳卒中、心筋梗塞、動脈硬化、脂質異常、うつ、ぜんそく、アレルギー、アトピー、海洋性大腸症候群‥‥これらは全て文明的な食事によって生まれたと言ってもいいでしょう。コロラド大学のリチャード・ジョンソン博士は専門してこう言っています。「病気の根本原因をたどると、必ずそこには“砂糖”がある」

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「霊芝」の活性化多糖体は、血糖と血液脂質の数値を下げ、また、その抗酸化作用が高血糖による血管内皮細胞の損傷を軽減し、主動脈の健康を維持する効果が認められています。


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愛・感謝 村雨カレン