何だか元気がない 甲状腺機能低下症
甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンは、新陳代謝を促したり、心拍数や体温を上げたりと、全身を活発にしてくれる、いわば「元気の源」ともいえる働きをしています。この甲状腺ホルモンの合成や分泌が少なくなる病気が甲状腺機能低下症です。甲状腺機能低下症では、新陳代謝や臓器の働きが低下してしまうため、「疲れやすい」「あまり食べないのに太る」「寒がり」「便秘がち」「皮膚がかさつく」「日中の眠気」など、様々な症状が表れます。
甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンが少なくなるいくつかの病気の総称です。原因となる病気で最も多いのは橋本病*です。
また、甲状腺機能亢進症などの治療で甲状腺の手術やアイソトープ治療を受けた場合に、過剰なホルモン分泌が抑えられる代わりに、甲状腺ホルモンが減ってしまって低下症になるケースもあります。 ほかには、頻度は低いですが、脳の下垂体や視床下部の病気や、生まれつき甲状腺の働きが低下している先天性甲状腺機能低下症も原因として挙げられます。さらに、ヨウ素(ヨード)をたくさん摂り過ぎた場合も甲状腺機能低下症を起こすことが知られています。
甲状腺機能低下症の検査には、問診・触診、血液検査、超音波検査などがあります。
触診では、医師が患者さんの首の前面を触り、甲状腺の腫れやしこりの有無を確認します。血液検査では、血液中の甲状腺ホルモンの量や、脳の下垂体から出されるTSHというホルモンの量を調べます。橋本病の診断のためには、橋本病に特有の自己抗体、TgAbとTPOAbを調べます。
さらに、超音波検査では、甲状腺の腫れの状態や炎症による変化を画像でみることができます。
(出典:http://www.nhk.or.jp)
*橋本病とは : バセドウ病と同じく甲状腺の病気の一つ。バセドウ病がドイツ人医師の名前がつけられているのに対して、橋本病は1912年、九州大学の橋本策博士がこの病気を発表したことから、日本人の名前がつけられている。橋本病は、甲状腺に慢性の炎症が起きている病気で、その炎症の原因は、自己免疫。免疫は、本来ならば外敵から自分の体を守る働きを持つが、それが逆に自分の体に反応してしまっている状態が自己免疫。橋本病の場合は、自分の免疫系が自分の甲状腺に反応してしまい、その結果、甲状腺に炎症が起きている状態。
■甲状腺ホルモンとヨウ素
ヨウ素は、ナポレオン戦争の際、海藻から火薬を製造しているときに偶然発見された元素です。「ヨード」と呼ばれることもあります。生体内では、そのほとんどが甲状腺に存在し、甲状腺ホルモンの構成成分として重要な役割を担っています。ヨウ素は海水中に多く存在するため、海藻類や魚介類に豊富に含まれています。海産物を主とした高ヨウ素摂取の伝統的食習慣を持つ日本では、ヨウ素の摂取量が必要量を大幅に上回っているため、不足が問題となることはありませんが、過剰摂取により健康障害が引き起こされるため、ヨウ素の摂取を目的としたサプリメント類の利用には注意が必要です。
ヨウ素の過剰摂取に注意を!
ヨウ素を摂りすぎると甲状腺機能低下症や甲状腺機能亢進症を起こしたりすることが知られています(日本ではヨウ素による甲状腺機能亢進症の発症はほとんどありません)。日本でも海藻の多量摂取による過剰症の報告があります。過剰摂取で甲状腺機能低下症、甲状腺腫、甲状腺中毒症が起こる他、体重減少、頻脈、筋力低下、皮膚熱感などの症状が見られることもあります。食事摂取基準では、日本人の食生活の現状に合わせた上限量を算定しており、18歳以上の大人(男女)推奨量は130μg/日、耐容上限量は3000μg/日です。
ヨウ素は甲状腺ホルモンの原料なので、たくさん摂るとホルモンが増加するように思われがちですが、実際には過剰なヨウ素は甲状腺の働きを弱めてしまいます。甲状腺に異常のない方が大量に摂取しても、甲状腺機能低下症になることはあまりありませんが、甲状腺になんらかの異常がある人がヨウ素を摂りすぎると、甲状腺機能低下症を起こすことがあります。特に、慢性甲状腺炎の患者、放射性ヨウ素治療や甲状腺の手術療法をうけて甲状腺が小さくなっている患者は注意が必要です。ヨウ素の過剰摂取としてよくみられるのが根昆布療法を行っている患者や、「イソジンうがい薬R」でうがいを毎日行っている人です。
メルカゾールRやチウラジールR(プロパジールR)などの抗甲状腺薬を内服してバセドウ病を治療している患者が、ヨウ素を大量に摂取すると甲状腺機能がさらに変化することがあります。普段の食事でヨウ素を制限する必要はありません。
いつもありがとうございます。
光・愛・感謝 村雨カレン
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