炭火焼料理で心血管死亡リスク上昇?
料理で石炭や薪、木炭などの固形燃料を長期間使用することが、心血管疾患(CVD)による死亡リスクの増加と関係しているという研究結果が、欧州心臓病学会(ESC 2018)で報告されました。研究チームの1人、英オックスフォード大学のデリック・ベネット氏は、「料理で固形燃料を使っている人は、なるべく早く電気かガスに切り替えるべきだ」
と述べています。
固形燃料を使って料理をすると空気が汚染され、CVDによる早期死亡につながる可能性があると以前から言われてきましたが、これまで明確なエビデンスは示されていませんでした。今回の研究では、料理における固形燃料の使用とCVD死亡との関連に加え、固形燃料からクリーン燃料(電気、ガス)に切り替えた場合の潜在的影響を調べています。
同研究は2004~08年に中国の34万1,730人(30~79歳)を対象として実施。料理をする頻度と、使用している主な燃料について尋ね、固形燃料への曝露時間を推計しました。週に1回以上自宅で料理し、かつCVDに罹患していない人に解析対象を絞り、死亡登録と病院の記録から2017年までの死亡率を算出しました。
解析対象者(平均年齢51.7歳、女性75.7%)の22.5%が主に固形燃料を30年以上、24.6%が10~29年、53.0%が10年未満使用していました。10年未満の使用者のうち、45.9%は固形燃料を一度も使ったことがなく、49.1%はベースライン以前に固形燃料からクリーン燃料に切り替えていました。また、340万人・年当たり8,304人がCVDにより死亡した。
教育歴、喫煙、その他のCVDリスク要因で調整した結果、固形燃料への曝露が10年長くなるごとにCVD死亡リスクは3%増加、30年以上の固形燃料使用者は、10年未満の使用者よりもCVD死亡リスクが12%高かったのです。
さらに、固形燃料を使用し続けた場合に比べ、固形燃料からクリーン燃料に切り替えた場合、CVD死亡リスクが低下することも明らかになりました。切り替えが10年早いと、CVD死亡リスクは5%下がりました。また、切り替えて10年以上経過すると、CVD死亡リスクは常にクリーン燃料を使用した場合と同等でした。
以上から、長期にわたり料理で固形燃料を使うことは、CVD死亡のリスク増加と関連が見られ、クリーン燃料への切り替えでリスクが抑制できる可能性が示唆されたのです。
最新の世界の疾病不可に関する研究によると、「健康な生活」が1年失われることを意味する「障害調整生命年(DALY)」の要因として、大気汚染はたばこを上回り4位に位置付けられています。
(出典:https://medical-tribune.co.jp/)
■粒子状物質(PM)と循環器系疾患
心臓病や脳卒中による死の約5件に1件は大気汚染が原因です。動物への曝露実験や毒性学的研究により、呼吸により肺に吸入されたPM(粒子状物質)から循環器疾患の発症や既存の循環器疾患の増悪に至るまでには以下の3つの経路が考えられています。①肺組織での酸化ストレスと炎症を介する経路
②肺の知覚神経終末や受容体を介する経路
③PMやその成分が直接血管内へ移行する経路(下図)
PMへの曝露により、肺胞洗浄液や血液中の炎症性サイトカインが増加することが報告されています。肺局所で放出された炎症誘発物質(サイトカインなど)や生理活性物質が全身循環に広がり、血管系や凝固系へ影響を及ぼす可能性があります。これまでの多くの動物実験より、IL-6、IL-1β、TNF-α、インターフェロン-γ、IL-8が肺胞洗浄液や末梢血から検出されており、PM曝露による肺の炎症の程度が、全身のサイトカインレベルや血管の機能不全と相関することも観察されています。このような炎症を介して、動脈硬化の進展やプラークの脆弱化をきたし、最終的には循環器疾患の発症に関わると考えられています。
一方、ラットへのPM曝露により心拍変動の減少がみられ、ヒトへの曝露実験でも同様の変化が観察されました。これはPM曝露による急性の反応であり、自律神経のアンバランスを介して不整脈を起こしやすくし、血管収縮や内皮機能不全をきたすと考えられています。
(図の出典:https://www.jmedj.co.jp/)
いつもありがとうございます。
愛・感謝 村雨カレン
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