歩く時間10分増で死亡リスク28%減
米国心臓協会は、成人向け運動ガイドラインで、週にウォーキングなどの中強度の運動を150分以上、あるいはランニングや水泳などの高強度の運動を75分間行うことを推奨しています。しかし近年、日常的に使えるスマートフォンの健康アプリやウェアラブルデバイスが登場したことで、ウォーキングの歩数や様々な体の動きを測定できるようになり、さらに一歩踏み込んだ運動に関する研究結果が発表されています。参考になるのが、2011年から15年にかけて、60歳以上、平均72歳の女性1万6732人にウェアラブルデバイスを身につけてもらい、週4~7日間の身体活動を追跡した調査報告(米ノースカロライナ大学)。そして短い時間での身体活動の内容を「中断の少ない10分以上のウォーキングなどの運動」「掃除や洗濯などの家事、階段の昇降、車まで歩くなどの日常での移動や運動」の2種類に分け、さらに19年まであらゆる原因による死亡について調査しました。すると、1日2000歩以上の人は死亡リスクが32%減少したのですが、特に運動をしていなくても1日の歩数を1000歩増やすだけで、歩数が少ない場合に比べて死亡リスクが28%減少。長生きするには1日4500歩増やすと最高とのことですが、何もそれはウォーキングのような「中断の少ない10分以上の運動」でなくてもよいとの結果でした。
カリフォルニア大学の研究でも同様の結果が出ています。同大学の学生を対象にしたこの研究では、長時間座っていると、心臓病、がん、うつ病、2型糖尿病、肥満などのリスクを高め、1時間に1回は立ち上がって体を動かすと、そのリスクが低くなるとのこと。
1日の歩数を1000歩増やそうと思ったら、10分くらい歩けばいいといわれています。10分=1000歩。それも、10分間歩き続けなくてもいいのです。1回買い物に出掛ければ、家から店までの往復と、店内を見て回る時間とで、10分なんてすぐです。「1日1000歩増」は、日常生活の中ですぐに実現できてしまう目標設定なのです。
1分でもいい。立ったり動いたりする回数をできる限り多くする。必要なのは「体を動かそう」という気持ちだけ。在宅勤務で毎日通勤しなくなった人は、歩数獲得の貴重な機会がなくなってしまいました。コロナ感染拡大が言われるようになって1年半足らず、在宅勤務中心の人はその働き方が今後も変わらないでしょうから、歩数減少が将来の身体の健康へ与える影響は想像以上だと考えられます。
日常生活の中でちょっとだけ活動量を増やすことを習慣化できればベスト。座っている時間を、少し短くするだけでもいい。「1時間仕事したらトイレに行ったり洗面所で歯磨きしたりする」「昼の休憩時間で家や会社の周辺をぐるりと歩く」「駅から自宅までの帰り道、近道ではなくやや遠回りをする」など、自分ができる範囲で行ってみてください。
(出典:https://hc.nikkan-gendai.com/)
■歩行と認知症予防
「高齢者は寝たきりになると認知症になりやすい」といいます。逆に、「よく歩くと認知症になりにくい」ことがわかってきました。実際、70~80歳の女性の認知機能テストの成績と日頃の運動習慣の関係を調べると、よく歩く人はテスト成績が良く、1週間に90分(1日あたり約15分)歩く人は、週40分未満の人より認知機能が良いのです(右図)。なぜ歩行が脳の高次機能に影響を与えるのか。それは、脳の働きに欠かせない脳血流がポイントなのです。脳の血流とアセチルコリン
脳が正しく働くためには、絶えず十分な血液が流れている必要があります。脳の働きを担う神経細胞は、血流不足にとても弱く、再生能力もありません。高齢者やアルツハイマー型認知症患者では、大脳皮質や海馬(記憶などの高次機能を司る部位)で脳血流の低下がみられます。この大脳皮質や海馬には、大脳の奥から伸びてきてアセチルコリンという化学物質を放出する神経(アセチルコリン神経)が来ています。
無理せずゆっくり歩く
海馬の血流は、歩行開始直後から増えはじめ、歩行をやめると徐々に元に戻ります。血圧は、「速く」歩いたときには著しく上がりますが、「遅い」または「普通」の速さではほんの少し上がるだけです。「普通」の速さで歩いた時の海馬のアセチルコリン量は増えることがわかっています。つまり、血圧があまり上がらない程度に無理せずゆっくり歩くことにより、海馬のアセチルコリンが増え、年齢に関係なく海馬の血流が良くなるのです。
また、歩行運動が不可能でも、皮膚や筋、関節に刺激を与えることで、同様の効果が得られます。皮膚刺激により、アセチルコリンを作る神経細胞の活性化し、大脳皮質でアセチルコリンが放出され、血流が増加します。身体のどの部位の刺激でも効果がありますが、特に手足への刺激は効果的です。軽い刺激でも、15分続けると血流がとても増えてきます。年相応の物忘れ程度では、アセチルコリンを作る神経細胞がまだ多く残っていますので、身体への刺激によるアセチルコリン増加が可能となります。つまり、歩いたり皮膚を刺激したりすることで、抗認知症薬と同じ効果が期待できるのです。
いつもありがとうございます。
愛・感謝 村雨カレン
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