乳酸は有効なエネルギー源だった
疲労は、身体が健康を維持するために現れる防御反応およびその兆候と言われます。倦怠感、思考力低下、身体の痛みなどの自覚症状が代表的な例で、生理現象の一つとして考えられ、病気とは区別されます。しかし、疲労の度が過ぎると、病気に近い状態、あるいは実際の病気である慢性疲労となります。
現代社会には疲労を引き起こす要因が多く存在すると言われています。疲労感とは、精神的な要因に大きく影響され、個人差もありますが例えば、気分が高揚しているような場合は、通常では疲労を感じるような仕事量でも、疲労を感じないことがあります。そして、疲労の原因には次のようなものが考えられると言われています。
(1)エネルギー産生の低下
栄養不足や細胞内でエネルギー産生機能の低下により十分なエネルギーの摂取が行われない場合。
(2)疲労物質の蓄積
日々の活動に伴い、疲労物質が蓄積することで筋肉の収縮が妨げられ、疲労する場合。
(3)体内の恒常性の失調
汗をかくことにより浸透圧など体内の恒常性が失われることで疲労する場合。
(4)脳の調整力の失調
思考や記憶を連続して行うことやストレスなどにより、脳の調整力が低下し、情報の処理や神経伝達物質の分泌がバランスよくスムーズに行われなくなることで疲労する場合。精神的疲労などは、これにあたります。
(2)の疲労物質の乳酸の蓄積については、近年の研究では否定的になってきていて、「乳酸は老廃物ではなく有効なエネルギー源」という説明が定着しています。
エネルギーは、細胞内のミトコンドリアで糖や脂肪から合成され、急激な運動をすると糖分解が活発化してミトコンドリアに送られますが、ミトコンドリアでの処理には限界があるため一時的に余ってしまう物質があります。それが乳酸なのです。「乳酸が疲労物質なら運動後もずっと残っているはず。でも実際は運動から1時間もすれば元のレベルに戻ってしまう。疲労物質ではない何よりの証拠。疲労はもっと複合的な要素で起こる現象だ」と東京大学の運動生理・生化学准教授は話しています。疲労物質ではない乳酸ですが、疲労や慢性疲労症候群などの改善に関わるセロトニンに影響を与えることがわかっています。
■乳酸の知識①
過去、乳酸は疲労の原因とされ「疲労物質」などと言われてきました。しかし現在、疲労の原因は、リン酸の蓄積、カリウムが筋内から漏れ出す、筋グリコーゲン濃度の低下、体温の上昇、活性酸素の発生、脱水症状、脳疲労など様々な原因が挙げられています。
乳酸は、エネルギー産生時に作られる!
ご存知のように、エネルギー産生には、瞬発的にエネルギーを必要とするときに産生する「解糖系」
と持続的にエネルギーを産生する「TCA回路~電子伝達系」があります。このふたつは、糖を使ってエネルギーを産生するのに時間差が出てしまい余った物が「乳酸」という形で残ります。
(下図参照)
★老廃物ではない「乳酸」★
乳酸は一時的に作られる物で、燃えカスや老廃物ではありません。必要に応じてミトコンドリアで、再利用されエネルギーになりますので、ミトコンドリアの多い筋肉繊維や心筋などで、乳酸は多く使われます。実際、マラソンランナーは完走時に体内に「乳酸」はほとんど残っていないそうです。
脳疲労に関わる「乳酸」
疲労は、筋の力が出ないといった生理学的なことだけではなく「だるさ」というような感覚も含んでいます。だるさという感覚は、脳が「こんな運動をしていると、体に悪影響がでるから止めなさい」という指令と考えられています。そして、脳疲労には神経伝達物質「セロトニン」の関与も知られていて「乳酸」が、このセロトニンに関わっていることがわかっています。
※次回へ続く‥‥
いつもありがとうございます。
愛・感謝 五月雨ジョージ
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