2019年4月10日水曜日

ヒトの筋線維

転倒を防ぐために鍛えるべき筋肉は?

一般的に「筋肉」と言うと、イメージするのは体を形作る「骨格筋」です。これが体を動かし、移動させるという役割を主に担っています。また、骨格筋は骨に付着していることも特徴です。骨格筋には「抗重力筋」という別名もあります。筋肉がなければ、重力などに対抗できずに、人間としての活動ができなくなるからです。

筋トレによって鍛えられるのもこの骨格筋です。そして、骨格筋は大きく「速筋」と「遅筋」に分けられます。 
では、転倒を防ぐために鍛えるべき筋肉は、「速筋」でしょうか、それとも「遅筋」でしょうか? 正解は、速筋です。健康寿命を延ばすために意識してまず鍛えるべきなのは速筋のほうなのです。

 骨格筋のうち、白い「速筋」は瞬発力に優れ、大きなパワーを発揮できます。一方、赤い「遅筋」は、持久力に優れ、低負荷の運動を長い時間続けることが得意です。

 速筋は、筋トレで負荷をかけると太くすることができます。それに対し遅筋は、ジョギングやウォーキングなどの有酸素運動で鍛えられ、脂肪を燃焼することは可能なのですが、鍛えてもあまり太くならないという特徴があります。

 "筋肉博士"の異名を持つ東京大学大学院教授の石井直方さんは、「健康のためには、脂肪を燃焼させやすい遅筋を活用することが重要だという"信仰"がありますが、それだけでは不十分なのです。転倒して骨折につながるような事故は、転びかけたときにとっさにブレーキをかけたり、体を支えたりする速筋がなければ防げません。つまり、速筋が減っているからこそ要介護につながる事故が起きるともいえます」と解説します。

 石井さんによると、40代を過ぎると、速筋の数が自然と減ってくるので、将来の寝たきりを防ぐには、自重(自分の体重)で負荷をかけたスクワットなどで下半身の速筋を鍛えることから始めるといいそうです。
(出典:https://gooday.nikkei.co.jp/)

■赤い色はミオグロビンとミトコンドリア

筋線維を大まかに分けると、速筋の線維は白っぽい色をしているため別名「白筋」、それに対して遅筋線維は赤みを帯びているため「赤筋」と呼ばれています。色の違いの主な要因は、筋肉の中に含まれている「ミオグロビン」というたんぱく質です。

 赤血球の中にはヘモグロビンがありますが、これは肺から全身へと酸素を運ぶ役割を担っています。一方、ミオグロビンの役割は、ヘモグロビンが運んできた酸素を筋肉の中に運ぶことです。

 ヘモグロビンには、二酸化炭素の多いところに行くと、酸素が離れやすくなる性質があります。そして、ミオグロビンは、ヘモグロビンよりも酸素に対する親和性が高いため、ヘモグロビンから酸素を譲り受けやすくなります。酸素をどんどん取り込むたんぱく質ですから、当然、有酸素性の代謝活性が優れている遅筋線維に多く含まれています。

 ヘモグロビンやミオグロビンは鉄分を含んでいます。赤い色というのは実は鉄(Fe)で、しかも酸素と結合すると、より赤みが増すという性質があります。

 酸素を譲り受けたミオグロビンは、それを筋線維の細胞内にあるミトコンドリアという小器官に運搬します。ミトコンドリアは筋肉のエネルギーを作っている器官ですが、ここにも赤色をしたチトクロームという色素がたくさん含まれています。

遅筋線維はミオグロビンが多い上に、ミトコンドリアも多いので、全体として赤みが強くなっています。それに対して、速筋線維にはミオグロビンがあまり含まれていません。そのため赤みを帯びることがなく、白っぽい色になるわけです。筋線維の中にはピンク色をしたものもあります。これは、ほどほどにミオグロビンを含んでいるため、中間のピンク色になっていると考えられます。

 ヒトの筋線維は、タイプごとに1カ所に集まっているわけではなく、チェッカーボード状に存在しているため、「これは赤い筋線維」「これは白い筋線維」と、完全に色分けができるわけではありません。筋肉全体として赤っぽいかな、白っぽいかなという程度の違いです。


いつもありがとうございます。
愛・感謝 村雨カレン

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