2019年5月16日木曜日

フードファディズム

沖縄野菜は心疾患・脳卒中を予防するか

「おじいとおばあの健康長寿の源!」「身体に優しい沖縄伝統野菜」などのキャッチで売られるご当地食材の沖縄野菜。ゴーヤに代表される沖縄野菜「チンゲン菜、からし菜、ゴーヤ、フダンソウ、ヘチマ、ヨモギ、パパイヤ」はビタミンやミネラル、葉酸など栄養価が高いことで知られています。このため、心筋梗塞や脳卒中を予防にすると言われてきたのですが、実は明白なエビデンスは見当たらないとの研究が発表されました。

 国立がん研究センターなどが約1万6千人の日本人男女を対象に行った多目的コホート(JPHC)研究解析によると、「沖縄野菜を多く摂取しても心筋梗塞と脳卒中の予防効果は期待できない可能性がある」といいます。この研究成果は、「Journal of Epidemiology」1月12日オンライン版に発表されています。

 沖縄野菜の摂取量と心筋梗塞や脳卒中の発症との関連を検討した大規模な追跡調査はほとんどありません。研究グループは、JPHC研究に参加した40歳以上の男女約1万6,000人を長期にわたり前向きに追跡したデータを用いて研究を重ねました。

 研究では、ベースライン時とした1995年に沖縄県中部、1998年に沖縄県宮古の2地域に在住し、心筋梗塞や脳卒中などの循環器疾患とがんの既往がない45~74歳の男女1万6,498人を2012年まで追跡しました。

 ベースライン時の138項目の食物摂取頻度調査票への回答から、参加者の7種類の沖縄野菜(チンゲン菜、からし菜、ゴーヤ、フダンソウ、ヘチマ、ヨモギ、パパイヤ)の摂取量を評価し、参加者を沖縄野菜の摂取量で3群に分けた上で、心筋梗塞と脳卒中の発症率を比較検討しました。その結果、約13年の追跡期間中に839人が脳卒中を発症し、197人が心筋梗塞などの虚血性心疾患を発症しています。

 年齢や性、飲酒や喫煙などの生活習慣などで調整した解析でも、沖縄野菜の摂取量と心筋梗塞および脳卒中の発症率との間に有意な関連はみられない事実が判明。沖縄野菜の種類別に解析しても有意な関連はなかったのです。

 以上の結果から、研究グループは「沖縄野菜の摂取量は、心筋梗塞や脳卒中の発症リスクと関連しない」と結論づけています。

 一方で「今回の研究は摂取量が最も少なかった群でも比較的多く摂取しており、このことが原因でグループ間の差が見えにくくなった可能性がある」と指摘。また、沖縄野菜の摂取量の評価も妥当性が十分ではなかったことも原因として考えられるとしています。
(出典:http://healthpress.jp/)

■フード ファディズム

特定の食べ物が健康・病気に及ぼす影響をエビデンスに関係なく過大に評価し、声高に主張するような態度は「フードファデイズム」(Food Faddism)と呼ばれます。このフードファデイズムに基づいたTV番組や書籍は後を絶ちません。寒天、納豆、バナナなど、メディアで体に良いと紹介される度に、スーパーではその食品が品切れ状態となりますが、これさえ食べれば健康に良いというマジックフードなど無いに等しいのです。

繰り返されてきた「痩せる食べ物」騒動

2008年9月には「朝、バナナを食べると痩せる」とのことでバナナが、また07年1月には「よくかき混ぜた納豆を朝飯・夕飯それぞれ1パックずつ食べると痩せる」で納豆が、そして05年夏には「寒天を食べると痩せる」で寒天が、それぞれ大評判となり、全国各地で品切れ騒動が起きました。

過大評価と信奉の3つのパターン

「フードファディズム」には、およそ以下の3つのタイプがあります。

(1)寒天やバナナのように、実際にはあり得ない健康効果を期待して食品が大流行、すなわち爆発的に売れること。紅茶キノコやココアもこれに当たる。
(2)量を無視して「○○に良い」「××に悪い」と主張する。マスメディア情報や、健康食品業界からの情報の多くが該当。
(3)食品に対する期待や不安の扇動。食生活の全体像を見ず、ある食品を体に悪いと決めつけたり、別な食品を体に良いと推奨・万能薬視したりする。「自然・天然」「植物性」は良い、「人工」「動物性」は悪いとする傾向も。

 国立がん研究センターは、男女約7万9600人を約15年追跡し「食事バランスガイド」*遵守と死亡との関連を調べた結果、この食事バランスガイドの遵守度が高い人ほど死亡リスクが低下しており、特に脳血管疾患の死亡リスクとの関連が明らかでした。循環器疾患のリスク低下では、食事バランスガイドの副菜(野菜、きのこ、いも、海藻料理)および果物の遵守得点が高い人で顕著に認められました。一方、脳血管疾患死亡のリスク低下は主菜(肉、魚、卵、大豆料理)の食事バランスガイド遵守得点が高い人で顕著でした。
 この研究結果は当然で退屈なものですが、基本中の基本と言えます。フードファデイズムとは決別して、食事バランスを重視することが最強の健康法と言えるのかもしれません。
*食事バランスガイド:2005年に厚生労働省・農林水産省が策定した食事の摂取目安。


いつもありがとうございます。
愛・感謝 村雨カレン

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