2023年6月21日水曜日

認知症とガンマ波

 認知症の音楽療法プログラム

 認知症患者に対する音楽療法プログラムは、認知症患者が自分の介護者と言語以外の方法で交流する力を高めることが、「Alzheimer Disease and Associated Disorders」に昨年8月発表されました。「Musical Bridges to Memory(音楽がつなぐ記憶への架け橋)」と名付けられたこの音楽療法プログラムにより、認知症患者の興奮や不安、抑うつといった厄介な症状も低減するといいます。

 研究論文の上席著者である、ボルナ・ボナクダルプール氏(米ノースウェスタン大学フェインバーグ医学部神経学准教授)によると、認知症は精神や記憶に大打撃を与えるが、かなり進行した段階になるまで音楽を楽しむ能力には影響しないと考えられています。「認知症患者は音楽を処理することもできるし、音楽を理解し、受け止め、それに反応することもできる。また、音楽に合わせて踊ったり、演奏したり、一緒に歌ったりすることもできる」(ボナクダルプール氏)。

 ボナクダルプール氏らは今回の研究で、21組の認知症患者と介護者に、Musical Bridges to Memoryプログラムに週1回のペースで12週間にわたり参加してもらいました。研究者らは、これまでに行われた音楽療法に関する研究のほとんどは患者のみを対象としていたが、今回は患者に加えて介護者にも参加してもらった点がユニークであるとしています。

 Musical Bridges to Memoryプログラムは、大切な人と言葉でコミュニケーションを取ることができなくなった認知症患者のために、NPO法人が開発しました。同プログラムは1セッション当たり45分間で、患者と介護者に患者が若かった頃の音楽を生演奏で聞いてもらうと同時に、歌や踊り、ドラムやタンバリンなどのシンプルな楽器の演奏をしてもらうことで、音楽に触れあうよう促すものです。音楽の後には会話時間が設けられました。各セッションの開始前10分間と終了後10分間の認知症患者と介護者の様子がビデオ撮影され、患者と介護者のつながりに音楽療法が与えた影響について分析が行われました。

 その結果、音楽療法後の会話時間には、認知症患者と介護者の間でアイコンタクトを取る頻度が高まり、注意の散漫さや攻撃性が弱まり、陽気な様子が見られるなど、認知症患者の社会性が高まることが観察されました。一方、このプログラムには参加しなかった8組の認知症患者と介護者(対照群)ではコミュニケーションが減少していました。

「様々な能力が低下しつつある認知症患者の症状の管理において、音楽療法は重要な要素となり得る」(ボナクダルプール氏)。米アルツハイマー病協会も、音楽療法を認知症に対する重要な非薬物療法として認識しています。同協会は、「言葉で自分の気持ちを表現できなくなっても、歌の歌詞を通じて表現したり、メロディーを感じたりすることはできる」と話しています。

(出典:HealthDay News)


■40Hzの変調音で認知症改善に光

 音楽による病気の治療プログラムは世界中の様々な研究機関や製薬会社で研究が勧められていますが、日本でも新しい健康創造の手法が模索されています。

 中でも注目されているのが、高齢化が加速する日本の大きな社会課題である認知症です。事実、日本の高齢者における認知症有病率は15%と推計され、今後さらなる増加が予測されています。その認知機能障害の特徴のひとつに、脳内での認知機能に必要な「40Hzの脳波」の活動が低下するという報告があります。一方、その「40Hzの脳波」は「40Hzの変調音」を聴くことによって増大するという研究もあります。

 今まで米国の研究機関等で認知症予防の研究に用いられてきた40Hzの音は単調なパルス音(ブザーのような音)で、人が日常で聴き続けることは難しい音でした。日本のピクシーダストテクノロジーズと塩野義製薬は、共同で「より生活に溶け込んだ形で、自然に五感を刺激することによって長期的な介入を可能とし、認知症ケアを実現する」というコンセプトを掲げ、新しい「音」の開発に挑戦。誕生したのが「40Hzガンマ波サウンド」です。暮らしの中で使いやすいようにTVの音を音源にして、それを自然に聴くことができる音に変調する技術を開発し、商品化したのです。

「40Hzガンマ波サウンド」による、人の脳内への40Hzの脳波(ガンマ波)誘発の検証実験には、20Hz、40Hz、80Hzとそれぞれの変調音、40Hzパルス音、まったく変調を施していない無変調音、さらに40Hzの変調音「ガンマ波サウンド」に関しても、複数の波形パターンを用意。参加者にそれらの音をランダムに聴いてもらい脳波を測定したところ、「40Hzガンマ波サウンド」は、波形の形状にかかわらず、脳内に40Hzのガンマ波を誘発することが実証されました。過去の研究で用いられてきたパルス音と同様に、人が聴きやすい変調音にもガンマ波を誘発する機能があることが確認されました。

 そして、日常生活の中で当たり前に耳にするTVの音を変調するスピーカーが実現したのです。また、実際にTVで流れている「ニュース」番組と「音楽」番組を音源にした「40Hzガンマ波サウンド」で脳波の測定を行い検証した結果、ナレーションやボーカルの明瞭度を損なわないことが期待される「40Hzガンマ波サウンド」の音刺激であっても、脳内のガンマ波の同期を確認。テレビの音を利用した認知症改善の可能性がさらに拓けたのです。

 認知症ケアを目的とするスピーカーにおいては高齢者データが大切になるため、若年層と高齢者に対して「TVを音源とする検証」と同様の音を提示。結果、若年層、高齢者ともに40Hzガンマ波サウンドの聴取で、脳内の40Hzガンマ波が同期したのです。この結果は、音刺激の作用によって高齢者の認知機能が改善する可能性を示したのでした。


いつもありがとうございます。

愛・感謝 村雨カレン

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