食物繊維不足は死亡リスクに関係
日本人は食物繊維が足りていないと言われます。『日本人の食事摂取基準(2020年版)』における成人の1日の食物繊維の目標量は男性が21g以上、女性が18g以上。
一方、2019年の国民健康・栄養調査によると、日本人成人の1日当たりの食物繊維摂取量中央値は18g(男性18.9g、女性17.1g)。そこまで不足していないように見えますが、「まだ足りていない」と考える理由は2つあります。
【理由1】目標量が十分ではない。
米国やカナダでは、生活習慣病の発症率や死亡率との関連を示した疫学調査をもとに、成人の食物繊維摂取目安を24g/日と定めています。日本もこれを参考にしていますが、当時の日本人成人の摂取量中央値が13.7g/日と24gから大きくかけ離れていたため、いきなりそんなに増やすのは現実的ではないと、中間値を目標量としたにすぎません。生活習慣病の予防効果を期待するなら1日24gは摂りたいので、まだ足りていないのが現状です。
【理由2】食物繊維の測定法。
2018年以降、食物繊維の測定方法が変わり、白米など一部の食品で食物繊維量が以前より多く算出されるようになったことで、摂取量の数値が以前より大きく出るようになりました。20歳以上の食物繊維摂取量(男女中央値)は、2017年の調査では13.9g。そこから日本人の食生活に大きな変化はないので、数字の上で増えたように見えるだけです。
食物繊維の摂取で期待できる健康効果 :ひと昔前は、便通改善や大腸がん予防くらいでしたが、2000年代、腸内細菌研究が飛躍的に進むと、食物繊維摂取量と心筋梗塞や脳卒中、循環器系疾患や2型糖尿病といった生活習慣病などの発症が抑えられることがわかってきました。
近年では、大腸以外のがんや総死亡リスクとの相関を示す調査報告が世界各国から相次いでいます。日本人を対象にした調査でも、国立がん研究センターからは複数のがんと食物繊維摂取量との関連を示す報告があります。また、筑波大学の研究チームは、食物繊維の摂取量が少ない人は認知症発症リスクが高いと報告しています。
最近大きなインパクトを与えたのは、食物繊維の摂取量ががんの治療薬の効きに影響するという報告です。この研究では、生存率だけでなく、がんを殺す免疫細胞の働きがよくなることがきちんと確認されていて、腫瘍を攻撃する免疫機構において、食物繊維を摂取して変わる腸内細菌叢が非常に重要な役割を担っているのではないかと示唆されています。
(出典:https://gooday.nikkei.co.jp/)
■第六の栄養素と言われる食物繊維
「人の消化酵素で消化されない食物中の難消化性成分の総体」と定義されている食物繊維。炭水化物から糖質を除いたもののことを言いますが、食物繊維にはたくさんの種類があり、非でんぷん性(水溶性食物繊維・水溶性食物繊維)、でんぷん(レジスタントスターチ)、その他(難消化性オリゴ糖)に分けられます。それぞれの特徴によって体に対する働きが異なっています。
消化・吸収されない食物繊維は、昔は栄養的に価値のないものと考えられていました。しかし、健康維持のために大切であることがわかり、現在では三大栄養素(糖質・脂質・たんぱく質)、五大栄養素(三大栄養素+ビタミン・ミネラル)に加えて「第六の栄養素」と呼ばれています。理想的な食物繊維の摂り方
食物繊維には「水溶性」と「不溶性」があり、それぞれ腸の中で異なる働きをしています。両方を組み合わせることで便秘解消&デドックス効果が高まります。
水溶性食物繊維 :腸管内の水を吸収して、便を柔らかくしてくれる作用があります。ネバネバとした粘性があるので腸内の老廃物や毒素を吸着し、便として排出してくれます。また、悪玉菌を減らして腸内環境を整える働きもあります。
不溶性食物繊維 :腸内で水分を吸収して膨らみ、腸壁を刺激して腸内の蠕動運動を促します。便の嵩を増やす作用があるので、便秘解消に効果的なのですが、水に溶けない性質のため、摂り過ぎると便が硬くなってしまいます。
腸の健康を考えると、摂取量は「不溶性2:水溶性1」の割合が理想的と言われています*。厳密にこの割合を守る必要はありませんが、バランスよく摂取することが重要です。
*慢性便秘症の患者にポリデキストロース(水溶性食物繊維)を摂取してもらったところ、排便に対して最も良い結果が得られたのは不溶性食物繊維14g、水溶性食物繊維7gの割合であったという研究結果に基づいています。
最近の「トクホ(特定保健用食品)」には、難消化性デキストリンを配合した商品が増えています。これは、水溶性食物繊維が"脂肪の吸収を抑え排出を増加させる効果がある" と言われているからです。ただし、デキストリンの原材料には遺伝子組み換えのトウモロコシを使用したものが多く、摂り過ぎには注意が必要です。
いつもありがとうございます。
愛・感謝 村雨カレン
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