ミトコンドリアとがん細胞
ミトコンドリアはひとつの細胞に数百~数千個もある細胞内小器官です。そして、身体の臓器の細胞でミトコンドリアが一番多く存在するのが心臓です。さまざまな体の組織になりうるヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)などから心筋細胞を、従来より効率良く低コストで大量に作製する方法を、慶応大と医薬品開発会社アスビオファーマ(神戸市)のグループが見つけたと、11月16日付の米科学誌「セルステムセル」(電子版)に発表しました。
福田恵一慶大教授(循環器内科)と同社の服部文幸主任研究員らは以前、心筋細胞に多い細胞内小器官「ミトコンドリア」を目印に、他の細胞の中から心筋細胞をふるい分ける方法を発見。その後の研究の過程で、他の細胞がブドウ糖(グルコース)も栄養としエネルギーを産生する機能(解糖系)に使うのに対し、心筋細胞はミトコンドリア内の化学反応(TCA+電子伝達系)が主なエネルギー源で、ブドウ糖が不要ということがわかったのです。
休みなく働く心臓が必要とするエネルギー量は解糖系だけでは間に合いません。そこで、ミトコンドリアで大量にエネルギーを産生しているということです。
そして、ミトコンドリアの機能が低下すると、心臓機能だけではなく“肥満”や特に“良性腫瘍”にも影響することがわかりました。
良性腫瘍は、複数の遺伝子が変異して生じた前癌細胞が過剰に増殖して作られます。発生した場所から移動することはなく、この良性腫瘍が悪性化し、周囲の組織への浸潤や転移が起きるようになって“癌(悪性腫瘍)”になります。癌化のメカニズム研究では、主に癌細胞での遺伝子変異が注目されてきましたが、近年は、周辺細胞との相互作用による影響も考えられるようになっています。その仕組みの解明までは至っていませんでしたが、9月30日、神戸大学大学院医学研究科・井垣達吏准教授らは、英国の科学誌「Nature」オンライン版に新たな論文を記載しました。それは、がん組織で高頻度に認められるミトコンドリアの機能低下が周辺組織の悪性化 (がん化) を促進することを発見し、その仕組みを解明したということ。ショウジョウバエを使った実験で、ミトコンドリアに機能障害を起こす遺伝子変異が導入されると、良性腫瘍自身ではなく、近隣にある細胞の増殖能が高まり、近隣細胞は悪性化して、神経組織への浸潤・転移もみられたのです。ヒトの癌組織でミトコンドリアの機能が低下していることは、10年以上前から知られていたが、その意味はほとんど不明でした。特に悪性度が高い膵臓癌では、ミトコンドリアの遺伝子変異が高頻度で起きていました。
ミトコンドリアではエネルギー産生時に活性酸素を作り出すことは知られていますが、ミトコンドリアの機能が低下している状態のほうが、より多くの活性酸素が産生されてしまい、遺伝子に影響を与えることがわかっています。
※2月12日号「がんと酵素②)も参考にしてください。
康復医学の基本 細胞内器官ミトコンドリア④
■ミトコンドリアと活性酸素の関係
ミトコンドリアで酸素を使いエネルギーを産生する過程で、身体にとって有害な「活性酸素」が必要以上にできてしまいます(もちろん適度の活性酸素には、体内のウイルスや菌を不活化・殺菌する役割もあります)。ミトコンドリアの状態によっては、たくさんの活性酸素がミトコンドリアの外に漏れ出します。
活性酸素がタンパク質やDNAを標的に!
ミトコンドリアから漏れ出た活性酸素は、遺伝情報を担うDNAやタンパク質を攻撃し傷つけます。傷が蓄積すると、細胞の機能は低下し、老化の原因にもなります。また、過剰に出た活性酸素により、核にあるDNAが傷つけられ遺伝情報が改変されてしまうと、細胞の機能が失われて細胞が老化したり、適切に増殖できなくなり、がん細胞になったりします。
活性酸素が過剰に発生する原因には、心身的ストレス、過剰な運動、過度のアルコール摂取、喫煙、医療被曝などがあります。
細胞が活性酸素から身を守る!
細胞は活性酸素から身を守るためのしくみを持っています。活性酸素除去物質、酸化還元酵素(GSH-px、SOD、カタラーゼ)の働きで、活性酸素を毒性のない水分子へと変えています。酸化還元酵素は、人間の体内で作られる酵素ですが、加齢と共に体内での産生能力が衰えたり、生活環境・習慣などで過剰な活性酸素を除去しきれなくなってしまい、老化の進行や生活習慣病などの原因となるのです。
活性酸素除去物質の中で最も強力なのがGSH-pxです。康復医学学会が推奨している「霊芝」には、GSH-pxの産生と活性化に関する豊富なデータがあります。
いつもありがとうございます。
光・愛・感謝 五月雨ジョージ
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