“和食”で腸内細菌のバランスを維持
2013年、和食の「ユネスコ無形文化遺産」への登録は記憶に新しいところです。そして、様々な食材を少しずつ食べる和食のスタイルが腸内細菌のバランス維持に寄与していることが最近の研究でわかりました。
東北大大学院農学研究科の都築毅准教授は、食事を摂った際の消化・吸収のために働く部位や経路に関する研究を行いました。
その結果、少量ずつ多種類の食材を摂れば、異なる消化・吸収機構で処理され、特定の臓器への負担が減少することを突き止めたのです。様々な食材を少しずつ摂るメニューは、かつて日本の多くの家庭で日常的に食卓に上っていたものです。
「伝統的な和食は、消化吸収機構にとって大きなメリットがあるだけではない。特定の栄養素に偏らず、脂肪の摂り過ぎも防げる」(都築准教授)
高脂肪食によるメタボや糖尿病など生活習慣病の予防が期待できるのです。
腸内細菌と病気の関係に詳しい慶応大医学部微生物学・免疫学教室の本田賢也教授も、「細菌によって餌となる栄養素が違うのだから、多種類の食材を摂取するのがよい」と指摘します。
腸内にいる1,000種類、100兆もの細菌は重さ1kgにも上り、総称して腸内細菌叢(そう)といいます。
「腸内細菌叢の共生関係のバランスを保つことが大切。しかし、少品種の食材や同じメニューの食事ばかりを続けると、特定の細菌にだけ餌を与えることになり、バランスが崩れてしまう」(本田教授)
そうなると、肥満やメタボのほか、アレルギーなどの免疫疾患につながることもあります。腸内細菌の中でも悪玉菌に対しては餌を与えない方がいいようにも思えます。しかし、「単独では悪玉に見えても、周囲の菌との共生により善玉の働きをする場合もある。多種類の菌を保つことが何より重要」とのこと。
多種類の菌に効率的に餌を行き渡らせることができる和食に対し、欧米型の高脂肪食は、肥満を起こす細菌が増えていく食事です。
忙しい現代人にとって「多種類の食材を少しずつ」という食事はなかなか難しいものです。牛丼ならば大盛りをやめて卵やサラダを注文するとか、ラーメンならトッピングの種類を増やすなど、外食にも工夫が必要です。
そして、腸内細菌の働きに着目した研究は世界でも注目されています。米ワシントン大の研究は、食べ過ぎや運動不足だけでなく、腸内細菌が肥満の原因となることを突き止め、米科学誌「サイエンス」に論文が掲載されました。
■食物アレルギーと腸内細菌
厚生労働省によると、正確な人数は把握できないものの、日本人の全人口の1~2%(乳児に限定すると10%)に、何らかの食物にアレルギーがあると考えられています。米国でもやはり大きな社会問題になっており、3歳下の子どもの6~8%、大人の3%が食物アレルギーを発症しています。また米国の食物アレルギーの子どもの数も増加しており、その原因について、これまでの研究では、近年の除菌し過ぎた生活環境や食習慣が、私たちの体にいる自然な細菌の組成を乱すためではないかと示唆されています。
腸内細菌が食物アレルギーを予防する!?
先日、米国シカゴ大学の研究チームは、私たちの腸内に住んでいる細菌が食物アレルギーを予防するという非常に興味深い発見を、米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)に報告しました。共著者キャサリン・ナグラー教授は、研究報告の中で次のように述べています。
「抗生物質の乱用、高脂肪食、帝王切開による出産、一般的な病原体の除去、さらには人工乳のような刺激などが、人類とともに進化してきた体内の細菌叢(細菌の集合体)に影響を与えています。我々の研究結果からは、このことが食物アレルギー増加の1つの原因と考えられます」
食物アレルギーが起こる仕組み
腸内で吸収されず残ってしまった余分な栄養素は、それに対応する腸内細菌の餌となります。ところが腸内にその食物に適合した細菌がいない(または少ない)と栄養素は異物(=抗原:アレルゲン)となり、対する抗体が多くできて強い免疫反応を起こしてしまいます。いわゆる免疫系の機能不全で、この免疫反応がアレルギー反応となって現れるのです。つまり、アレルゲンに対応した腸内細菌が多ければ食物アレルゲンへの感作を減らせるのです。たとえばピーナッツのアレルゲンに対しては腸内に常在しているクロストリジウム菌が防御的な役割を持っていることが発見されています。
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【食物アレルギーに対する改善策】
○多種類の菌を保つ食事を心がける:同じメニューや少品種食材の食事では特定の腸内細菌ばかりが増えアレルギーを起こしやすい腸内細菌叢を形成してしまいます。さまざまな食材を摂って腸内環境を整えましょう。和食のメリットはここにあります。
○腸壁の絨毛内の微小循環を改善する:
必要な栄養素の腸内での吸収が悪いと、その栄養素がアレルゲンとなり免疫反応を起こす場合があります。微小循環を改善することで、腸壁の抹消血管の栄養素吸収効率が高まり、アレルギー反応の減少が期待できます。康復医学学会の主要研究生薬「HM-3000(特系霊芝)」には、微小循環系の改善作用と、免疫系のバランスを調整する作用に関するエビデンスがあります。
いつもありがとうございます。
光・愛・感謝 村雨カレン
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