タンパク質を増やしても筋肉は増えない?
タンパク質を一度に摂取した時、そのうちどこまでが筋肉になるかというタンパク質代謝系に関する問題。その内容が、最近、学術的にちょっとした注目を集めています。タンパク質(アミノ酸)を摂取すると筋肉の中でのタンパク質合成が上がるということは、わかっています。では、摂取する量を増やせば増やすほど合成が上がるかと言うと、そうではないことが解明されてきているのです。実はあるところで合成は頭打ちになり、それ以上タンパク質を摂ってもあまり意味がないようなのです。
合成が頭打ちになる量は20グラム前後というデータも報告されています(ただし、高齢者は40グラム前後まで合成が上がっていくようです)。これは普段の食事だけでなく、トレーニング後のプロテインの補給でも同様で、どんな状況であっても基本的には20グラムがタンパク質合成量の上限値であるようです。
この現象は「マッスルフル」と呼ばれています。筋肉が"お腹いっぱい"の状態ということなので、それ以上のタンパク質を摂っても筋肉は食べられないわけです。40~50グラムの量を摂っても吸収はされますが、それが筋肉の材料になっているわけではなく、余分なものはエネルギー源として燃やされてしまいます。
つまり、トレーニング後に1キログラムのステーキを食べても、筋肉の材料として使われるのはほんの一部に過ぎません。ごはん・納豆・生卵を食べるだけでも15グラムほどのタンパク質を摂取することができますし、それにシャケの切り身を一切れも加えれば20グラムに達するので、普段の食事で十分ということになります。
そうなるとプロテインも不要ということになってしまいますが、タンパク質は合成を上げるスイッチでもあるので、20~30グラムを一日に複数回摂るためには便利で効果的な手段と言えます。ただ、あまり多くの量を摂る必要はないと考えていいでしょう。
(出典:『石井直方の筋肉の科学 ハンディ版』ベースボール・マガジン社)
■タンパク質の摂り過ぎは体によくない
タンパク質に関する研究の多くは矛盾しており、不確かだと指摘する専門家もいますが、タンパク質の摂りすぎが健康に問題になる場合もあります。中年期に高タンパク質の食事を摂りすぎると、ガンや糖尿病によって早死にする危険性が高まる可能性があるという論文も発表されています(南カリフォルニア大学デービス校老年学部研究チーム:2014年3月)。タンパク質過剰になっているかもしれない3つの兆候
■ 体重が増えつつある :他の食品でのカロリー摂取を抑えずにタンパク質を多く摂る食生活を送っていると、体重が増える可能性があります。2012年の研究で、「高タンパクの食事を摂る群」と「低タンパク高脂肪の食事を摂る群」を比較したところ、食べすぎる場合は両群とも、脂肪の増加量が同じであることがわかったのです。ただし、高タンパク食群では脂肪量だけでなく、除脂肪体重(体脂肪を除いた筋肉や骨、内臓などの総量)にも増加が見られました(TIME誌)。
■ 腎臓に負担が生じる :
腎臓は、タンパク質を消化する際に出る老廃物をろ過するという極めて重要な役目を担っていますが、タンパク質過多の食生活を送っていると、その機能に負担がかかりすぎるのです。特に腎疾患を持つ人は注意する必要があります。腎疾患は初期段階では自覚されにくいことが問題だという研究結果(2003年)が伝えられています(初期の腎臓病は自覚症状が出ないため、早期発見には尿検査や血圧測定が必要)。
■ 脱水状態になる :
腎臓がろ過・排出する老廃物の1つに「血中尿素窒素」があります。血液尿素窒素の濃度は、腎機能の状態を診断する際のバロメーターになるほか、体内の水分量を推し量る目安にもなると言われています。
タンパク質の摂取量が増えるにつれ、体内の水分量が減ることがわかっています。それは、増加した窒素を体外に排出するために、より多くの水分を必要とするからだと説明するのは、栄養関連の著作も多いモニカ・リーナゲル氏(理学修士、公認栄養士)。
プロテインは腎臓を壊す
スポーツクラブなどで、プロテインのパウダーを水に溶いて摂取している人がいます。結果にこだわる人は、運動するなら筋肉が付くプロテインの力を借りたほうが効率的だと考えるのでしょう。しかし、すぐにやめることをお勧めします。こうした人工的な商品には、自然な食品とは比較にならないほど大量のタンパク質が含まれています。大量の人工的なタンパク質が体内で発生する尿素窒素などの毒素をろ過して尿に排出する働きを腎臓に強要し疲弊させ、重大な被害を生みかねません。また、タンパク質、特に人工的なプロテインの大量摂取は、骨にも悪い影響を与えるという研究論文もあります。
こうした人工物で健康体をつくろうとすることは大きな間違いなのです。
いつもありがとうございます。
光・愛・感謝 村雨カレン
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