2025年5月21日水曜日

鉄欠乏

 鉄分不足、心臓には大きなリスク

 鉄分の不足は心臓の健康に悪影響を及ぼします。たとえば、慢性心不全の患者の30%以上は鉄欠乏性貧血が合併していると報告されており、貧血を合併している人は、合併していない人と比べ、全死亡率や心不全による再入院率が高くなっています。また、心不全患者の鉄分不足を治療すると、再入院率とQOL(生活の質)が改善されるという報告もあります。

 鉄分は、赤血球に含まれるヘモグロビンを合成するために欠かせない物質で、不足するとヘモグロビンの生成が足りなくなり貧血が引き起こされます。ヘモグロビンは酸素を全身に運ぶ役割を担っているため、貧血になると細胞が酸欠状態になり、疲労感、倦怠感、立ちくらみ、息切れ、動悸、めまい、頭痛など様々な不調が現れるのです。

 貧血が起こる原因は、その70~80%が冒頭で触れた鉄分不足による鉄欠乏性貧血で、多くは体から血液を失う要素がある人に生じます。例えば歯茎のトラブルや痔などで頻繁に出血しやすいとか、消化管など体内での出血、女性の生理の出血量などで起こります。こうした場合、慢性的な貧血状態になり、それが心臓に負担をかけることにつながります。貧血による体内の酸欠状態をカバーするため、心臓が必死に働き多く血液を循環させようとして、心拍数が増加する「心悸亢進」という症状が現れ、心臓に大きな負担がかかります。その結果、心不全の"予備群"のような状態になると、特に高齢者では心不全を起こしやすくなったり、心臓に障害があれば狭心症や大動脈弁狭窄症の症状が急激に現れたりするのです。

 貧血気味の人で息切れ、胸が苦しい、立ちくらみといった症状がある場合は、家族歴や既往歴を確認して、心臓疾患の疑いがあるなら専門医を受診したほうがいいでしょう。

 鉄欠乏性貧血は、鉄剤を服用して新たに赤血球を作り出す治療で改善できます。ただし、不足の鉄分を取り込んだとしても、体内に「貯蔵鉄」の蓄えがなければ、再び貧血が起こります。貯蔵鉄はフェリチンという鉄結合たんぱく質として肝臓、脾臓、骨髄などに貯蔵されており、体内の鉄分が不足すると血液中に放出されて不足分を補う働きをします。そのため、貯蔵鉄を十分に作っておかないと、貧血を繰り返すことになるのです。

 鉄分は食事で摂ることも重要です(右表)

 慢性的な鉄分不足の場合、心臓に負担がかかって何らかの影響が出る前に、まずは貧血の症状が先に現れやすいといえます。近頃疲れやすくなった、少し動くだけで動悸がするなどの変化を自覚したら、医療機関で血液状態をチェックしてもらいましょう。

(出典:https://www.nikkan-gendai.com/)


■鉄欠乏の症状と対応法

 鉄は体内の酸素の運搬・貯蓄に強く関わる栄養素であり、人間は鉄が無くては生きていけません。欧米では小麦粉などの日常食材に鉄分を添加したり、鉄不足の女性に妊娠を控えるよう勧めたりする国もあるのに対し、日本はこれといった鉄不足対策は行われていません。特に55歳以下の有経女性の大半は鉄不足となっているのが現状です。

鉄欠乏の症状

 鉄不足でまず思い浮かぶ症状は貧血(男性:Hb値<13g/dl、女性:Hb値<12g/dl)です。検査で貧血と判定されるほどの鉄不足はすでに重症レベルと言えます。「フェリチン」(体内の鉄貯蔵量を反映するたんぱく質)を測定してみると、ほぼ底を付いているケースがほとんどです。鉄不足はほかにも次のような様々な症状を起こします。

 骨・皮膚・粘膜の障害 (あざ、コラーゲン低下による骨・肌異常、爪・毛髪・舌異常) 

 知能・情動への影響 (不眠・集中力低下・学習障害・うつ・パニック障害) 

 ホルモンへの影響 (甲状腺ホルモンの成熟障害、不妊症)

 白血球・免疫への影響 (抵抗力の減少) 

 消化系に及ぼす影響 (嚥下障害、食欲不振、下痢、便秘、氷を好んで食べる) 

 いわゆる不定愁訴 (頭痛、イライラ、耳鳴り、肩こり、寝坊癖、疲労、むずむず脚など)

 これらの症状が鉄不足からくることに気付いてない方が大勢いますので要注意です。

 貧血ではないから鉄不足ではないと考えがちですが、貧血でなくとも潜在的鉄欠乏の人は多いのです。血液検査項目の赤血球数Hb値などに続いて「MCV(平均赤血球容積)」という項目があれば注意してみてください。〔異常なし〕とされていてもMCVが95(fl)を下回り、かつ上記のような症状がある人は、鉄不足を疑って受診してみてください。

 貧血治療経験のある45歳の有経女性が特にわけもなく気が滅入ってきたとします。「更年期?」などと軽く済まさず鉄欠乏再発を疑いましょう。鉄不足でメンタルが不安定になるのは、やる気を高めるノルアドレナリンドーパミン、興奮と抑制をバランス調整するセロトニンなどの脳内神経伝達物質が、たんぱく質を原料として造られる際に鉄が必要だからです。

 女性が出産後、情緒不安定に陥るのも鉄不足の悪化が一因と考えられています。妊婦が鉄不足だと胎児も鉄不足となり早産や低出生体重児の原因となるため、妊婦の鉄不足はあらかじめ十分に改善しておく必要があります。

鉄欠乏の対応法

 まず、鉄分豊富な食材を意識的に摂ります。牛・豚・まぐろなどの赤身肉やレバーに含まれる動物由来「ヘム鉄」、小松菜、海苔、パセリなどの植物系食材に含まれる「非ヘム鉄」、吸収がよいのは前者ですが、両方一緒に摂るのが効果的です。

 病院では鉄剤が処方されますが、むかつきや便秘などの副作用が苦手な人もいます。そういう場合は上記の食材に加えて「ヘム鉄」サプリメントの服用も有効です。鉄が充足されれば吸収しなくなるだけなので鉄過剰とはなりません。出来れば血液検査でフェリチン値(貯蔵鉄)が60~100ng/ml以上になるまで補充するのがよいでしょう。


いつもありがとうございます。

愛・感謝 村雨カレン

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