2025年5月7日水曜日

便の異常

 なぜ高齢者は便もれしやすいのか

 65歳を超えると30%の人が便秘になり、7%の人に便もれが起こると言われています。介護施設では50%近くの人に便もれの経験があるという研究もあります。高齢になると便秘気味、下痢気味になるひとがいますが、それは運動不足、筋肉量の低下、腸内環境の悪化、内服薬などが関係しています。

 高齢になると運動量が少なくなります。運動により腸も活発になりますが、動かないでいると腸に運動刺激が起こらず、適切に動いてくれません。すると便秘になりやすくなります。

 さらには筋肉が衰えます。腕や足の筋肉だけではなく、骨盤や肛門周りの筋肉も弱くなるのです。その結果、尿もれをしやすくなり、便の切れも悪くなります。踏ん張っても便を出し切れなくなるため、便秘になることがある一方で、便を我慢しなければというときに肛門をギュッと締めて抑えることができなくなります。

 腹圧性尿失禁(お腹に力を入れた瞬間に起こる尿もれ)に効果のあることが知られている「骨盤底筋トレーニング」という方法が、便失禁に対しても効果的なことが分かっています。

 それ以外にも、歩くだけでいいので足を使っての運動が便の排出・状態を良くします。

 高齢になると、腸内の環境も変わってきます。腸というのは非常に長い臓器です。腸の中にはおよそ1000種類もの菌(腸内細菌)がいて、消化吸収を助けたり、免疫機能を刺激したりしています。しかし高齢になってくると体調不良・食欲不振・度重なる抗菌薬の使用などにより、腸内環境が悪化しやすくなります。すると、同じような食事を摂ったとしても若い人と比較して適切な吸収が行われず、固まって便秘になったり、うまく吸収できず下痢になったりします。特に油ものやニンニクなどの刺激物を食べたときは、こうした胃腸の不調が顕著に現れやすくなります。

 対処法として、1つは乳酸菌やビフィズス菌、麹菌など、腸内細菌となりうるものを摂取することです。具体的には発酵食品。ヨーグルトのほかに納豆やしょうゆ、みそ、ぬか漬けなどを定期的に摂取することをお勧めします。それ以外にもプレバイオティクスといって、腸内細菌のエサとなるフラクトオリゴ糖のようなものを摂取することも大切です。これはバナナなどに含まれています。

 食物繊維にも整腸作用があります。キャベツのような分かりやすい食物繊維は不溶性食物繊維といいます。水に溶けにくいので不溶性です。一方で水溶性食物繊維と呼ばれる食物繊維も大切です。水溶性食物繊維は、ぱさぱさした食物繊維のイメージとは違い、ドロッとしたものです。例えば、オクラやモロヘイヤ、納豆などに含まれるねばねばした成分がそれになります。この水溶性食物繊維と不溶性食物繊維をバランスよく摂取することが、腸内環境を整える上で重要になります。そうして刺激の強いものを避けることが腸を守ります。

(出典:https://gooday.nikkei.co.jp/)


■便の異常と内服薬の影響

 高齢者の便の異常の原因として、運動不足、筋肉量の低下、腸内環境の悪化とともに多いのが“内服薬の影響”です。

 高齢者が飲む内服薬には様々なものがありますが、腸の異常によく関係してくるのが便秘薬(緩下薬、下剤)や下痢止め(止痢薬)です。下剤は簡単に薬局で手に入るために安易に使用されることが多い薬です。少しでも便秘気味だと、便の排出を薬の力に頼ろうとする人は少なくありません。ただし、医師の管理下で飲むならいいのですが、そうでなく自己判断で使用をしている場合は注意が必要です。

 便秘は、本来は生活改善をして便が出やすい環境を整えるのが最優先です。下剤を使えばその時は便が出やすくなりますが、連用してしまうと、体が下剤の刺激に慣れてきて、効果が薄れてくる場合があります。すると、「ではもっと強い薬を」となって、きりがなくなります。運動や食べ物の工夫など、日々できることをやることが優先すべき対応です。

 また、医師に便秘の薬を処方されていて、便秘も改善されてやや下痢気味になってきたという場合。そんなときに外来で「お変わりありませんか?」と聞かれて「変わりません」と答えてしまうのもよくありません。そう答えた結果、医師に「便秘が改善していないのだな」と思われて薬が処方され続け、下痢気味になっているという方も多いのです。処方薬の服用で便の状況が変わってきたら、主治医に報告しましょう。

 自己判断で下痢止めを使うのも控えた方がいいでしょう。腸が下痢を起こしているときは何かしらの理由があります。例えば食中毒のように何か悪いものを食べて、体の中に入ったウイルスや菌を排出するために下痢が起きていることもあります。それなのに無理やり下痢止めで止めてしまうと、体の中にウイルスや菌が蔓延してしまいます。下痢がつらいときは、安易に下痢止めを使うのではなく、医師に相談して対処するほうが安全です。

 これらの薬だけではなく、高齢になると多くの薬を飲みます。その薬が副作用として下痢や便秘を引き起こすこともあります。特に便秘との関連が指摘されているのは、抗精神病薬や抗うつ薬、睡眠薬です。下痢は、抗菌薬や抗がん剤で起こりやすいようです。徐々に便秘になっていくケースもあり、飲んでいる薬が原因だと気づきにくいこともあります。下痢や便秘があるときは主治医や薬剤師に相談してください。


いつもありがとうございます。

愛・感謝 村雨カレン

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