2018年8月22日水曜日

眠気と脳内たんぱく質

眠気の正体は“脳内たんぱく”!?

脳内にある80種類のたんぱく質の働きが活性化すると眠くなり、眠りにつくと働きが収まるのをマウスの実験で発見したと、筑波大国際統合睡眠医科学研究機構の柳沢正史教授(神経科学)の研究チームが6月13日付の英科学誌ネイチャー電子版に発表しました。

 睡眠は誰もが毎日行う身近な行動でありながら、未だに多くの謎に包まれています。たとえば「眠気」は、睡眠欲求の一つですが、眠気をきたしている脳内では何が起こっているのか、その実体は全く分かっていません。

今回、同チームは、睡眠要求を決めるメカニズムを解明するため、眠らせないで寝不足にしたマウスと、眠い状態が続くように遺伝子操作したマウスを使って実験しました。
 寝不足マウスの脳内では、眠くなると脳内のたんぱく質が活性化する「リン酸化」と呼ばれる反応が起き、眠ると元に戻るのを確かめました。この反応をじゃまする薬を与えると、マウスの眠気が収まるのも脳波の分析から確かめています。
 一方、遺伝子操作したマウスは眠った後もたんぱく質が活性化した状態が続きました。

 そして、2種類のマウスの脳内で共通した生化学的変化を網羅的に解析し、眠気に関わる80種類のリン酸化たんぱく質を同定したのです。さらに、眠気の程度に応じて、これらのたんぱく質のリン酸化状態どう変化するかを調べるため、段階的にマウスを断眠させたところ、断眠時間に応じてリン酸化状態が進行していることが分かりました。つまり、睡眠欲求の度合に応じてリン酸化たんぱく質の量が増えていたのです。
 それぞれのたんぱく質の役割はまだよく分かっていませんが、たんぱく質の多くは神経細胞が情報をやりとりする「シナプス」と呼ばれる部位に集中していました。不眠時間が長くなりすぎると神経の情報伝達に支障が出るといい、その回復に関わっているとみられます。

 同チームはこの眠気の正体とみられるたんぱく質群を「スニップス」(SNIPPs=Sleep-Need-Index-Phosphoproteins;睡眠要求指標リン酸化たんぱく質)と命名、さらにこのうちの69個がシナプスの機能や構造に重要なたんぱく質であることを突きとめました。
(出典:https://www.nikkei.com/) 

■アミノ酸のリン酸化と情報伝達

体内では、情報は細胞から細胞へ伝えられています。一つの情報伝達手段が「たんぱく質のリン酸化反応」です。人間には2万~3万種類のたんぱく質があり、すべてはアミノ酸からできています。たんぱく質を構成するアミノ酸は20種類あり、その並び方でたんぱく質の種類が決まります。なかでもセリン、スレオニン、チロシン残基がリン酸化されます。
 例えば、ホルモンは血流に乗って体の各部の細胞に到達すると、細胞表面にある受容体たんぱく質に結合します。この時、受容体たんぱく質の中にあるアミノ酸がリン酸化され、たんぱく質の形が変わります。引き続き、下流の別のたんぱく質がリン酸化され、細胞の中へと情報が伝達されていきます。この細胞内情報伝達に関わり、アミノ酸をリン酸化する酵素がプロテインキナーゼです(逆に脱リン酸化する酵素はプロテインホスファターゼ)。

たんぱく質の構造が変わる

普段、情報が来ていない状態では、情報を伝えるたんぱく質は静かにしています。そして情報が来た時には、たんぱく質がリン酸化されます。たんぱく質の構造が変わって、働き始める(活性化する)のです。構造が変わると、次のたんぱく質をリン酸化する能力を獲得します。こうして、次から次へとたんぱく質リン酸化のリレーが起こり、瞬時に情報が駆け巡っていくのです。また、たんぱく質はリン酸化されることによって、細胞核の中にあるDNAをもとにして新しいたんぱく質を生み出すことが可能になります。例えば、血中のブドウ糖濃度が上昇すると、すい臓からインスリンが分泌されて全身に回ります。インスリンを受け取った細胞ではリン酸化のリレーが始まり、最終的に細胞核に情報が伝わると、ブドウ糖代謝に必要なたんぱく質が新たに合成されて、ブドウ糖が消費されます。体内ではこのような情報伝達が絶えず行われているのです。

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ラフマがリン酸化を促進

脳内神経伝達物質のセロトニンは、ストレスの解消作用や睡眠に関わる重要な役割を担っています。主に中枢神経系にあってセロトニンのシナプス伝達に関わるセロトニン受容体(5-HT4受容体)は、環状アデノシン一リン酸の産生を促進してプロテインキナーゼを活性化させます。つまり眠りを誘導するタンパク質のリン酸化を促進するのです。


 当学会の主要研究テーマである「ラフマ」(羅布麻)は、脳内セロトニンの増加、そしてセロトニン受容体群活性につながるセロトニン神経通過性の安定が期待できます。


いつもありがとうございます。
愛・感謝 村雨カレン

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