2020年9月17日木曜日

胃の病気

ピロリ菌は糖質と塩分がお好き?

 ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は、胃の粘膜に棲みつくらせん形をした細菌です。

 胃は強酸性の環境のため、細菌が棲みづらい場所です。しかし、ピロリ菌は「ウレアーゼ」という酵素を作る力があり、尿素を分解してアンモニアを生成することができます。 このアンモニア(アルカリ性)で酸性を弱め、胃の中に存在しているのです。そして、除菌しない限り、一生棲み続けます。

 ピロリ菌は、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、そして胃がんの原因として挙げられています。ピロリ菌に感染したからといって、必ずしも潰瘍やがんが発症するわけではありません。ピロリ菌に様々な環境因子(ストレス、アルコール、精製糖質等)が重なり合って胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がん等を引き起こします。


ピロリ菌は糖質がお好き

「高グルコース(ブドウ糖)は、ピロリ菌の増殖と生存率を促進する」(Journal of Biomedical Science 2014; 21(1): 96)という論文があります。高血糖体質の人はピロリ菌を増殖させることが分かっており、この論文では、高血糖に気を付けるよう喚起しています。

 では炭水化物が全てダメかというとそうではなく、胃に直接届く精製糖質が良くないと言っています。玄米など食物繊維が多い炭水化物が最終的に分解されるのは小腸・大腸であり、胃では糖質までには分解されません。一方、砂糖、果糖ブドウ糖液糖、そして胃で精製糖質に分解される可能性のある白米、精白小麦などはピロリ菌の餌になるので注意が必要です。

 ピロリ菌に糖質を与えるとピロリ菌増殖経路(ペントースリン酸経路)を刺激します。またピロリ菌が糖質を代謝する際に副産物として出される乳酸は、腫瘍形成の環境を作りやすいといわれています。

 日本の研究(福岡県久山町研究)でも、「高血糖はピロリ菌感染によるリスクと胃がんリスクを増加させる」という報告がされています。


ピロリ菌は塩分がお好き

 動物実験では、ピロリ菌を感染させても一匹も胃がんになりませんでしたが、多量の塩分を与えると、胃がんが頻発しました。塩分はピロリ菌によるコロニー形成を促進し、炎症や潰瘍そして腫瘍の形成を招いてしまうのです。ピロリ菌は、ナトリウム依存性の糖輸送体を利用して、糖質を取り込むことが分かっています。


■主な胃の病気

 ピロリ感染症 

 ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)は主に口から侵入し、幼少期に感染すると言われています。自然界にはほとんど存在せず、感染者の胃の中にだけ存在するため、何らかの形(口移しの食事や嘔吐等)で経口感染することが推測されています。感染すると組織学的な胃の炎症が起こります。炎症が持続すると胃や十二指腸の潰瘍、胃がんが発症しやすくなります。

 現在は、保険診療で除菌ができるようになり、抗菌薬2種類と胃酸を抑える薬の3剤を1週間服用します。成功率は1次除菌が70~80%(新薬の登場で90%)、失敗すると2次除菌を行いますが、その成功率は90~95%とされています。

 除菌には薬を使いますので副作用が出ることもあります。軟便、下痢、味覚異常など比較的軽い副作用が多いのですが、まれに出血性腸炎等を引き起こすこともあります。


 胃がん 

 胃がんは、胃の粘膜にある細胞が、何らかの原因でがん化して発生します。がんの種類別の死亡者数は男性で第2位、女性で第3位と報告されています。このようなデータを見ると治りにくいがんと思うかもしれませんが、胃がんは早期に見つかれば95%以上が治癒すると言われている治療成績のよいがんでもあります。

 ただし早期の段階では自覚症状は出にくいので、早期発見、早期治療のためには、たとえ症状がなくても定期的に内視鏡検査を受けることが非常に重要です。

 病期は、胃がんが胃の壁の中にどのくらい深くもぐっているのか(深達度)、リンパ節や他の臓器への転移があるかどうかによって決まり、それによって治療法が決まっています。 

 早期に発見できれば内視鏡治療が行われます。お腹を切らずに内視鏡で治療しますので入院期間は短く、体への負担は非常に少なくすみます。


 機能性ディスペプシア 

 機能性ディスペプシア(functional dyspepsia:FD)は、内視鏡査を受けても胃、十二指腸潰瘍や胃がん等の病気がないのにも関わらず胃が痛い、胃がもたれるなど様々な胃の症状を訴える病気です。

 原因については、胃の運動機能異常、内臓の知覚過敏、胃酸の分泌異常、ピロリ感染、精神的ストレス、不規則な食事など様々な要因が考えられます。

 治療は胃酸分泌抑制薬、胃の運動機能改善薬、抗不安薬、漢方薬等を使用します。また最近は機能性ディスペプシアそのものに保険適応のある薬剤も登場しています。またピロリ菌の除菌で改善することもあります。

 FDは、様々な要因が関与しているためそれらを考慮しながら個々に応じた治療がされます。


いつもありがとうございます。

愛・感謝 村雨カレン

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