眠気の正体は"脳内たんぱく"
睡眠は誰もが毎日行う身近な行動でありながら、未だに多くの謎に包まれています。たとえば「眠気」は、睡眠欲求の一つですが、眠気をきたしている脳内では何が起こっているのか、その実体は全く分かっていません。
眠気の原因が「脳内たんぱく」にあるという近年の研究では、特定のリン酸化たんぱく質群(スニップス;SNIPPs)が眠気の「正体」として注目されています。
【研究内容の要約】:筑波大学の柳沢正史教授らによるマウス実験で、覚醒時間の延長に伴い脳内でおよそ80種類ものたんぱく質がリン酸化されることが判明しました。これらのたんぱく質は「睡眠要求指標リン酸化たんぱく質(SNIPPs, Sleep-Need-Index-Phosphoproteins)」と名付けられています。断眠時間が長くなるほどSNIPPsのリン酸化が進み、眠気の強さとも連動していたと実験で示されています。
【SNIPPsの作用機序】:SNIPPsのおよそ9割は神経細胞同士の接合部である「シナプス」に多く存在し、情報伝達や記憶に関わるたんぱく質です。長く起きているとシナプスの構造や機能に関連したSNIPPsのリン酸化が溜まり、これが脳に「眠気」を生じさせる信号となります。睡眠をとることでこれらのリン酸化状態が元に戻り、神経の情報伝達や脳機能が正常にリセットされると考えられます。
【シナプス恒常性仮説との関係】:SNIPPsの研究成果は「シナプス恒常性説」とも深く関係しています。これは、覚醒中に神経細胞間のシナプス強度が過剰に高まるため、睡眠によってリセット(弱める)する必要があるという仮説です。SNIPPsのリン酸化の増加が眠気と連動し、睡眠によってそれが回復する現象はこの仮説と合致しています。
【他のたんぱく質・酵素の関与】:また、東京大学らの近年の研究によると、眠気や覚醒はプロテインキナーゼA(PKA:リン酸化酵素)やプロテインホスファターゼ1(PP1:脱リン酸化酵素)などの働きによって制御されています。PKAが覚醒を、PP1やカルシニューリンなどが睡眠を促進していることが明らかになっています。
【応用可能性】:SNIPPsの発見によって、眠気や睡眠のメカニズムを分子レベルで定量化できる道が開かれ、将来的には睡眠障害の新たな治療法や睡眠の質向上にもつながると期待されています。
(出典:https://www.nikkei.com/)
■アミノ酸のリン酸化と情報伝達
体内では、情報は細胞から細胞へ伝えられています。細胞情報伝達手段(シグナル伝達)における中心的な役割が「アミノ酸のリン酸化反応」です。
リン酸化とは何か
リン酸化とは、たんぱく質を構成する特定のアミノ酸〔主にセリン、スレオニン、チロシン〕の側鎖にリン酸基(PO43-)が共有結合する化学的変化です(この他、システインのような比較的珍しい例も報告されています)。この反応はプロテインキナーゼという酵素によって促進されます。逆にリン酸基が外れる脱リン酸化はプロテインホスファターゼによって行われます。
情報伝達における役割
細胞への外部からの刺激(例:ホルモン、成長因子)がまず細胞膜上の受容体に届くと、受容体たんぱく質のリン酸化が始まります。リン酸化を受けることでたんぱく質の立体構造が変化し、機能が「オン」になります。それをきっかけに、細胞内の他のたんぱく質のリン酸化が次々と引き起こされ、「リン酸化のリレー」とも呼ばれる一連のシグナル伝達カスケードが発動します。
このリレー型の増幅機構のおかげで、細胞外の小さな刺激でも細胞内の広範な応答に結びつきます。最終的には核内の転写因子のリン酸化も起こり、遺伝子発現パターンの変化(新たなたんぱく質合成)や代謝の調節といった広範な生理応答が実現されます。
リン酸化の可逆性と生体機能
リン酸化は可逆的であり、スイッチのような働きを持ちます。シグナル伝達の開始(リン酸化)や終了(脱リン酸化)のタイミングをコントロールすることで、細胞の生理機能が精密に調整されます。この仕組みがうまく働かなくなると、糖尿病、がんなどの多くの疾患の原因にもなります。
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「ラフマ」がリン酸化を促進
脳内神経伝達物質の「セロトニン」は、ストレスの解消作用や睡眠に関わる重要な役割を担っています。主に中枢神経系にあってセロトニンのシナプス伝達(右図参照)に関わるセロトニン受容体(5-HT4受容体)は、環状アデノシン一リン酸の産生を促進してプロテインキナーゼを活性化させます。つまり眠りを誘導するたんぱく質のリン酸化を促進するのです。当学会の主要研究素材である「ラフマ葉」は、脳内セロトニンの増加、そしてセロトニン受容体群活性につながるセロトニン神経通過性の安定が期待できます。
いつもありがとうございます。
愛・感謝 村雨カレン


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