2012年10月20日土曜日

微小循環基礎講座③  高血圧と血管内皮細胞


秋本番と本態性高血圧

残暑厳しい今年の夏でしたが、10月に入り一気に気温が下がって秋らしくなりました。
 この温度変化が、実は身体の血管にダメージを与えやすくしているのです。寒くなると、時には重篤な事態も起こりやすいので注意が必要です。
 その重篤な事態の一つが「大動脈瘤破裂」です。大動脈は、心臓から血液を全身に送り出す太い血管で、動脈硬化等で血管壁が弱くなると、壁の一部がコブ状に膨らみます。これが「大動脈瘤」です。寒くなると、このコブが破裂しやすくなります。「気温の急激な低下によって血管が収縮すると、血管の壁に圧力がかかりやすくなります。高血圧の人はなおさらです。その結果、大動脈瘤破裂、あるいは、血管の壁が縦に裂けてそこへ血流が流れ込む『大動脈瘤解離(かいり)にもなりやすい。寒くなってくると、患者さんは増えるのです」(東京医科大学病院心臓血管外科の荻野教授)。

 このような重篤な病気に直面しなくとも、高血圧は様々な生活習慣病へ進行する原因のひとつでもあります。血圧は、秋のこの時期から冬にかけて上昇傾向にありますが、大半の人が何も疾患がないのに「ただ血圧が高いだけ」という本態性高血圧です。この本態性高血圧は、高血圧患者の約95%を占めています。高血圧が持続すると、血管はその圧に負けまいとして壁の厚さを増してきます。また、血管の内腔をおおっている血管内皮細胞は直接高い圧にさらされるため、小さな傷ができたり、うまく機能しなくなったりします。すると、血管壁に慢性的な炎症反応が生じ、血栓ができ易くなったり、白血球やコレステロールなどが血管の内側の層に集まってきて動脈硬化が進んでしまいます。

 高血圧により、血管壁に過剰なストレスがかかることも、血管障害を促進する重要な要因と考えられています。こうした血管障害は、特に脳、心臓、腎臓の血管に起こりやすく、その結果、心臓病や脳卒中、腎不全などの合併症が引き起こされます。もちろん、これらの疾患が突然発症することはないのですが、身体の血管の8%を占める毛細血管を含む微小循環領域では、相当前から血流の障害が起っています。
 原因がわからないとされる本態性高血圧も、微小循環での血流が悪くなるのが要因の一つなのです。

 この微小循環の血圧は、普段使われている血圧計では測れないので、事前の予測が難しいのです。原因不明の本態性高血圧の治療は、この微小循環の血流改善が本質なのですが‥‥。


康復医学の基本 微小循環基礎講座③

■毛細血管と血管内皮細胞

心臓から血液が送り出されている動脈と、心臓へと戻ってくる静脈。この動脈と静脈はつながっていると思いますか? もちろん閉鎖循環です。しかし、正確に言うとつながっていません。その動脈と静脈の間にあるのが微小循環です。
 全身に張り巡らされている血管は、心臓の動脈から始まり腹部まで伸びている最も太い「大動脈」、頭部や手足などへ血液を運ぶ「中動脈」、各内臓へ血液を運ぶ中動脈、そしてそこから小動脈、細動脈へと続き、さらに微小循環へつながります。この各組織の微小循環で、運ばれてきた酸素や栄養素や薬の成分が放出され、余分な老廃物や二酸化炭素を持ち帰ります。そこから静脈へとつながって、血液は心臓へと戻ります。

 動脈は厚い三層からなる血管で、外側を取り巻く結合組織からなる「外膜」、平滑筋、内弾性膜で構成される「中膜」、内皮細胞からなる「内膜」でできています。しかし、毛細血管は内皮細胞の一層しかありません。この一層の毛細血管の血管壁を通して、組織・細胞へ栄養素と酸素を送り、老廃物と二酸化炭素の回収を行っています。血液は、この微小循環内にある毛細血管で一番大切な働きをしますので、ここでの血流が最も大切なのです。

重要なのは血管内皮機能!

血管内皮細胞は、血管の健康状態を維持するのに非常に重要な役割を果たしています。血管内皮細胞は一酸化窒素(NO)など数多くの血管作動性物質(血管に働きかける因子)を放出しており、血管壁の収縮・弛緩をはじめ、血管壁への炎症細胞、血管透過性、凝固・線溶系の調節などを行っています。

 この血管内皮機能は、ストレスや高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満などの様々な生活習慣病によりその機能が低下します。この低下した血管内皮機能を改善することが、微小循環内の毛細血管の血流改善にもつながり、疾患の治癒、傷病後の健康回復、QOL(生活の質)の改善などにつながるのです。


いつもありがとうございます。
光・愛・感謝 五月雨ジョージ

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