“体内で働く酵素”を直接摂ることはできない!?
私たちの体では、さまざまな反応が常に起こっています。細胞で行われる物質の代謝によって、私たちは生きているのです。代謝とは物質の出入りのことですが、一方で物質を合成や分解も意味しています。細胞での合成や分解といった化学反応を起こすために必要な媒介の役割を担っているものを「酵素」と呼びます。化学反応を促進する触媒のような働きを持つ酵素ですが、それぞれの化学反応に対して専用の酵素が用意されています。酵素とは一つの物質を指す言葉ではなく、膨大な種類の物質の総称なのです。
酵素という文字には「発酵の素」という意味もあります。発酵とは穀物からお酒を造ったり、牛乳からチーズを作ったりすることですが、これらの反応は、微生物である麹菌などの働きによるものです。麹菌がこれらの反応を媒介する仕組みを研究して見つけ出されたのが、発酵の素、つまり酵素だったというわけです。
そして、酵素は微生物だけでなく、私たちの体の中にも無数の種類が存在して、体の反応を媒介しています。たとえば、唾液に含まれる酵素はでんぷんを分解し、胃液に含まれる酵素はタンパク質を分解します。実は、酵素はタンパク質を材料にして作られています。タンパク質はアミノ酸の小さな分子が数百から数万個、鎖のようにつながって出来ています。タンパク質に使われるアミノ酸は20種類ほどあり、それが組み合わされて作られます。組み合わせ方は無数にあるので、多種類の酵素を作ることが可能です。この酵素の組み立て設計図として働いているのが遺伝子です。
したがって、ヒトが必要とする酵素はヒトの細胞の中で作られるものなのです。体の反応に大事な酵素ですから、酵素を食品として取れば、健康に良いに違いないと思いがちです。他の動物や植物の酵素を配合した食品も市販されています。でも、残念ながら期待はできません。酵素はタンパク質でできているからです。
タンパク質は食べ物として摂取されると、胃腸の中でアミノ酸になるまで徹底的に分解されてから吸収されます。それに、吸収されたアミノ酸を使って元の酵素を作ろうとしても、ヒトの遺伝子には他の動物や植物の酵素の設計図は書かれていません。
酵素そのものを摂ることはほぼ不可能と言えるのです。日本で販売されているほとんどの酵素液や酵素サプリも同様です。
■代謝酵素と消化酵素は体内で作られる
「体内(代謝)酵素を補うため」ということなら、生野菜や果物、発酵食品を食べたり、酵素飲料を飲んでも、全く意味はありません。“体内で働く酵素”を外部(口)から直接補うことはできないからです。まず、理解したいのは、現在、多くの方が「酵素」と思って飲んでいる「酵素飲料」(ペースト状、カプセル状含む)は、野菜や果物を発酵させたもので、ビタミンやミネラルなどの栄養素は補えても、「酵素」そのものを補うことはできないということ。
日本で販売されている、ほとんどの酵素製品も同様です。しかし、各メーカーは、「酵素は生命にもっとも大切」「酵素を補おう!」と商品PRをし、また、にわか酵素解説者たちがネットなどで誤った酵素談義を展開し、多くの人が「酵素を飲んだり、生食で酵素は補える」と思いこむようになってしまったのです。
食物酵素は“事前消化”には役立つが‥‥
口にした食物は、本格的な消化活動の始まる前に胃の上部にしばらく留まり、食物の持つ酵素によって事前消化が進みます。事前消化がしっかり行われれば、すい臓は余分に消化酵素を作り出すという重労働から解放されますし、消化酵素作りに必要なエネルギーや原料(アミノ酸、ビタミン、ミネラルなど)の消耗は抑えられ、他の代謝に支障がなくなります。
ただ、生の食物が含む食物酵素は、自己消化はするものの、他の食物を分解することはしません。加熱品を食べた場合、事前消化は進みませんし、加工品の多い現代人には、事前消化してくれる別の酵素が必要になるのです。
事前消化のために外部から補うことのできる唯一の酵素が「消化酵素」です。米国で「酵素サプリ」といえば消化酵素を指しますが、日本では事情が違います。日本には独得の法規制があり、消化酵素はサプリとしては販売できません。
日本の「酵素サプリ」は野菜や果物の発酵液がほとんどで、米国の酵素サプリとは、まったく別物。事前消化のための酵素は補えないのです。
市販の多くの酵素液は“砂糖漬け”による発酵法で作られています。そこから抽出されたエキスはそのままだと飲めるような味ではないため、その後再び大量の糖分を加えて製品化されています。ほとんどの酵素液は約60%が糖分だといわれています。
いつもありがとうございます。
光・愛・感謝 村雨カレン
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