2021年4月28日水曜日

痩せ女性の栄養問題

 痩せの若年女性に多い“肥満者体質”

 順天堂大学大学の研究グループは、日本人の痩せ形の若年女性では食後高血糖につながる耐糖能異常例が多く、その原因として、肥満者と同様にインスリン抵抗性脂肪組織の異常が生じていることを世界で初めて明らかにしたと発表しました(米・内分泌学会雑誌J Clin Endocrinol Metab 1/29オンライン版)。研究グループは「十分な栄養と筋肉量を増やすような生活習慣の改善が重要」としています。

 欧米諸国では、若年層での肥満の増加に伴い耐糖能異常例が増加、肥満若年者に対する減量指導が推進されています。日本では、BMI値18.5未満の痩せた女性の比率が約20%と先進諸国で最も高く、肥満と同等に糖尿病のリスクが高くなっています。ただし、それは中年以降を対象とした研究に限られ、痩せた若年女性と糖尿病リスクとの関連は不明でした。

 そこで研究グループは、痩せた若年女性における耐糖能異常の割合とその特徴に関する調査を実施。対象は18~29歳で痩せ形(BMI16.0~18.49)の女性98例と標準体重(BMI18.5~23.0)の56例。75g経口糖負荷試験により、耐糖能異常(糖負荷2時間後140mg/dl以上)の割合を調べました(各種測定やアンケート含む)。

 その結果、耐糖能異常の割合は、標準体重の1.8%に対し、痩せ形では13.3%と約7倍でした。この比率は米国の肥満者で耐糖能異常が見られる割合(10.6%)よりも高率です。さらに、痩せ形の若年女性の特徴として、エネルギー摂取量や身体活動量、筋肉量がいずれも少ないことが明らかになっています。

 次に、痩せ形若年女性の耐糖能異常の特徴を解析したところ、インスリン分泌の低下だけでなく、主に肥満者の特徴であるインスリン抵抗性が生じていました。また、痩せているにも関わらず、脂肪組織から全身に遊離脂肪酸が溢れ出て、ばら撒かれている状態を呈していました。体力レベルが低く、糖質からのエネルギー摂取割合も低い一方で、脂質からの摂取割合は高いことがわかりました。

従来、インスリン抵抗性は肥満に伴って出現するもので、痩せ形の糖代謝異常はインスリン分泌障害が主体であり、インスリン抵抗性との関連はないと考えられてきました。しかし、今回の結果から、痩せ形の若年女性における耐糖能異常にも、肥満者と同様にインスリン抵抗性や脂肪組織障害が生じる『代謝的肥満』が存在することを世界で初めて示したのです。

 痩せ形の若年女性の多くは、食事量も運動量も少ない「エネルギー低回転タイプ」であり、それに伴い骨格筋量も減少しているため、研究グループは「十分な栄養と運動により筋肉量を増やすような生活習慣の改善が重要と考えられる。また、耐糖能異常の病態には、インスリン抵抗性も関与する可能性が示された」と指摘。昨今の研究で、インスリン抵抗性は運動や脂質の摂取割合を減らすことで改善することが示唆されているとして、「糖尿病の予防には、そうした生活習慣の見直しが必要と考えられる」と結論づけています。

(出典:https://medical-tribune.co.jp/)


■痩せ願望が引き起こす栄養問題

 多くの若い女性が持つ「痩せ願望」やダイエット指向。実はその多くが痩せる必要がないのに、偏食や極端なダイエットを繰り返しています。女性の「痩せ」の問題が改善しない背景には、適切な体形についての認識不足や「痩せているほうがいい」という価値観の普及、様々なダイエット法の氾濫など様々な因子が影響を及ぼしていると考えられます。そして誤ったダイエットによる偏った食事は、鉄欠乏など潜在的な栄養不良のリスクを高めます。


栄養不足になりやすい

 鉄欠乏やそれに伴う貧血は、だるい・疲れやすいといった自覚症状や発育障害などをもたらします。鉄欠乏を防ぐには鉄を豊富に含む赤身の肉や魚、ほうれん草などの緑葉野菜をしっかり摂り、その吸収を高めるビタミンCの豊富な果物なども組み合わせて、バランスの良い食生活を送ることが大切です。月経のある20~40歳代の女性では、鉄は1日に10.5mg摂ると不足のリスクが少なくなると考えられていますが、実際には多くの女性で不足していることが指摘されています。無理なダイエットや偏った食事は、鉄以外にも健康を維持する上で大切な栄養素の不足を招きます。また「食べない」といった無理なダイエットを繰り返すと、エネルギーを体脂肪として蓄えやすい体質になります。


「痩せ願望」が引き起こす病気

 さらに「痩せ願望」が深刻化すると、「神経性食欲不振症(拒食症)」や「過食症」を招く恐れがあります。いずれも摂食障害ですが、前者は太ることを恐れて食物を避けるために極端な痩せを伴います。多くは思春期から青年期早期にかけて発症すると考えられています。後者は週に数回・数ヶ月間にわたる過食と、体重増加を防ぐための不適切な代償行動(嘔吐、下剤の使用など)の両方が存在し、拒食症よりは発症が遅い傾向があります。

 摂食障害が慢性化すると、無月経や低血圧・不整脈など多くの健康障害を招く恐れがあります。摂食障害の要因には、強い「痩せ願望」以外にも不安やストレスなど精神的な要因もあります。まずは適切な体重を理解し、誤った「痩せ願望」を持たないようにしましょう。また食べること以外に、運動や趣味などの時間を持ってストレスを解消してみましょう。


次世代の子どもへの影響も

 日本では低出生体重児(2,500g未満)の割合が増えていますが、その背景の一つに若い女性の痩せや妊娠中の体重増加不足があると言われています。小さく生まれてきた子どもは、エネルギーを溜めこみやすい体質であるため、成人後に生活習慣病(高血圧・糖尿病など)にかかりやすいと考えられています。

 妊娠に気づいてからではなく、妊娠する前からの適切な食生活が、自身の健康の維持・増進と、将来生まれてくる子どもの健康にとってとても大切です。適正体重の維持とバランスのとれた食生活の確立を目指しましょう。


いつもありがとうございます。

愛・感謝 村雨カレン

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