聴力改善で認知機能低下リスクが減少
難聴のある人が補聴器などを使って聴力を改善すると、認知機能の低下リスクが小さくなることが、複数の研究データを統合した分析で示されました。難聴は、認知機能低下の重要な危険因子であることが分かってきたのです。シンガポール国立大学のブライアン・シェン・イェップ・ヨー氏らは、難聴患者が補聴器の使用を開始した場合、または人工内耳植込術を受けた場合に、その後の認知機能にどのような影響が及ぶのかを調べました。文献データベースから、18歳以上の難聴患者を対象に、聴力補助デバイス(補聴器または人工内耳植込術)が認知機能に及ぼす影響を検討していた31件(対象者計13万7484人)の研究を抽出。その中からまず、長期的な関係を検討していた8件のデータを分析しました。それらは全て、補聴器の使用と認知機能の低下の関係を検討しており、12万6903人を2年から25年にわたって追跡していました。
8件の研究のデータをプールして解析したところ、補聴器使用者は、非使用者に比べて認知機能低下のリスクが19%低くなっていました(年齢、性別、学歴、社会経済学的地位、併存疾患を考慮した分析結果)。さらに、認知機能障害の発生について報告していた3件のデータを分析したところ、補聴器使用者では非使用者に比べて認知機能障害の発生リスクが21%低くなっていました。このほか、補聴器使用者は軽度認知障害から認知症への進行リスクも27%低下し、認知症の発症リスクも17%低下していました。
これら8件の研究は、米国、欧州、アジアで行われていましたが、どの地域で行われた研究も一貫して補聴器使用の利益を示しました。
続いて、聴力補助デバイス使用開始後の短期的な影響を検討していた11件の研究(4件が補聴器、7件は人工内耳植込術)、568人のデータを分析しました。その結果、デバイス使用開始後短期間のうちに、認知機能検査のスコアが向上することが明らかになりました。3カ月から1年の追跡で、デバイス使用前に比べ使用後の認知機能検査のスコアの平均値は3%高くなっていました。
なお、人工内耳植込術を行っていた7件の研究のデータを合わせて分析すると、術後の短期的なスコアの改善は3%になりましたが、補聴器を用いていた研究では、スコアは改善傾向を示したものの、統計学的有意差は認められませんでした。
この研究では、補聴器の使用が難聴患者の長期的な認知機能低下のリスクを19%低減すること、認知機能が正常な状態からの低下と、認知機能障害の進行のいずれにも利益が見られることが明らかになりました。さらに、聴力補助デバイスは、全般的な認知機能のスコアの短期的な改善とも関係していました。著者らは、「難聴患者の認知機能低下リスクを低減するために、医師は聴力補助デバイスの使用を勧める必要がある」と述べています。
(出典:https://gooday.nikkei.co.jp/)
■難聴は認知症の重大な原因
「難聴が認知症の大きなリスク要因である」――これは、国際アルツハイマー病会議の場で発表された知見です(2017年)。以来世界の医療界では、難聴と認知症との関連についての研究が急速に進み、今日では認知症患者の約9%が、難聴が原因で発症したものと推測されています。日本の高齢者の4人にひとりが認知症発症の可能性ありとされている今日、「難聴対策」は認知症患者をひとりでも減らしていくための有効な手立てであると考えられます。
聴覚と脳の深い関係
人間は耳から入ってくる情報(音)を電気信号に変換して脳に送り、様々に処理しています。誰かと話をしている時は、耳から入ってきた音声を処理し言葉として認識して、相手と受け答えを行います。音楽を聞く時も、耳でとらえた空気の振動をメロディとして認識し、心地よさを感じます。このように私たちの耳は、24時間ずっと音を取り込み脳に信号を送り、脳もまた休むことなくそれを処理し続けています。耳からの情報=刺激を受けることで脳は活発に働き、活力を保っているのです。
刺激がなくなると衰える
ところが難聴になると、耳から脳に伝達される情報量は、極端に少なくなり、重篤な場合はほとんどゼロになります。脳の各部位は互いに連携しながら機能しているので、音声を処理する部位が健全に機能しないと他の部位も影響を受けます。そうなると神経細胞の働きが弱まり、脳の萎縮が進み、認知症発症につながってくるとされています。また難聴になると、人や社会とのコミュニケーションをつい避けがちになってしまうことも深刻な問題です。
会話に参加できない。危険を察知する能力が低下する。支障をきたすので外出がおっくうになる。そうすると社会的に孤立し、次第に抑うつ状態に陥っていくことになります。これらもまた、認知症発症への危険因子と考えられています。このようなことから「難聴になると認知症発症のリスクが高まる」と言われているのです。2011年の米国ジョンズ・ホプキンズ大学の研究では、軽度難聴者の認知症発症リスクは、難聴でない人の2倍、中等度難聴者では3倍に上がると発表されています。しかしこのことは逆に考えると、良好な「聞こえ」を維持することが、認知症への対策ともなります。難聴は高齢者だけのものじゃない‥‥考えられる3つの原因
多くの人は「年を取れば誰でも耳は遠くなる。それは避けられない」と考えると思いますが、果たしてそうでしょうか? 答えはNOです。国立長寿医療研究センターも「難聴と年齢とは直接の関係はない」という研究成果を発表しています(2008年)。
聴力悪化の原因は、病気や障害などによる聴覚障害を除くと、次の3つとされています。
【1】大きな音を聞き続けること 【2】動脈硬化症 【3】加齢性難聴
いつもありがとうございます。
愛・感謝 村雨カレン
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