うつと康復医学
「本説伝」は今号が年内最後の配信になります。今年最後にシリーズとしてお送りしたのが「うつと睡眠障害」でした。職場でのうつ病や高齢化に伴う認知症の患者数が年々増加しているため、昨年度厚労省が「国民に広く関わる疾患として重点的な対策が必要」と判断し、「精神疾患」を加え4大疾患から5大疾患になりました。メディアでは、うつが健康・医療情報誌以外の経済誌や一般雑誌などが取上げるようになり、うつの経済的影響が危惧されてきました。
そして、教育の現場でも問題になっています。昨年度に病気で休職した公立学校の教員は8,544人で、19年ぶりに減少したことが、文部科学省の調査で分かりました。しかし、その6割以上は精神疾患によるもので、同省は「憂慮すべき状況」としています。全国の公立小中高校などの教員約92万1,000人について、休職者や処分者などを調べた結果、休職者のうち61.7%をうつ病や適応障害、ストレス障害などの精神疾患が占め、精神疾患での休職者は4年連続で5,000人を超えています。そして、休職した教員のうち、復職37%、休職中43%、退職20%でした。しかし、いったん復職したものの1年以内に再発し、再度休職した人が12%もいます。うつは再発する確立が高いのが特徴です。
また、病気になるとどうしてもうつ症状が表れやすく、そのことが本来の病気の完治に悪影響を及ぼすこともあります。康復医学学会がうつを取上げている根拠は、正にここにあります。
康復医学とは、約35年前に中国に誕生し、各地域別に対応する学問で、中国の病院や大学には普通に「康復科」や「康復医学科」が存在します。もちろん臨床の教科書もあります。病気は、予防だけで避けられるものではなく、治療を続けることで完治するものではありません。康復医学は予防医学、治療医学とともに三大医学を構成する重要な学問なのです。傷病後のQOL(生活の質)を高め、いかに限りある健康寿命を長く良好な状態で過ごせるかを研究し、サポートすることが康復医学の目的です。うつ症状が表れて休職に追い込まれた教員の現場復帰にかかわるのも、まさに康復医学の範疇といえます。
本年度、創設された「康復医学学会」は、幅広い分野で病後の健康回復の研究を進め、康復医学を新たな医学として確立させたいと考えている学会です。注目していきましょう!
来年もどうぞよろしくお願いします。
いつもありがとうございます。
光・愛・感謝 五月雨ジョージ