2012年12月30日日曜日

康復医学学会が「うつ」に取り組む理由。


うつと康復医学

「本説伝」は今号が年内最後の配信になります。今年最後にシリーズとしてお送りしたのが「うつと睡眠障害」でした。職場でのうつ病や高齢化に伴う認知症の患者数が年々増加しているため、昨年度厚労省が「国民に広く関わる疾患として重点的な対策が必要」と判断し、「精神疾患」を加え4大疾患から5大疾患になりました。
 メディアでは、うつが健康・医療情報誌以外の経済誌や一般雑誌などが取上げるようになり、うつの経済的影響が危惧されてきました。

 そして、教育の現場でも問題になっています。昨年度に病気で休職した公立学校の教員8,544人で、19年ぶりに減少したことが、文部科学省の調査で分かりました。しかし、その6割以上は精神疾患によるもので、同省は「憂慮すべき状況」としています。全国の公立小中高校などの教員約92万1,000人について、休職者や処分者などを調べた結果、休職者のうち61.7%をうつ病や適応障害、ストレス障害などの精神疾患が占め、精神疾患での休職者は4年連続で5,000人を超えています。そして、休職した教員のうち、復職37%、休職中43%、退職20%でした。しかし、いったん復職したものの1年以内に再発し、再度休職した人が12%もいます。うつは再発する確立が高いのが特徴です。

 また、病気になるとどうしてもうつ症状が表れやすく、そのことが本来の病気の完治に悪影響を及ぼすこともあります。康復医学学会がうつを取上げている根拠は、正にここにあります。
 康復医学とは、約35年前に中国に誕生し、各地域別に対応する学問で、中国の病院や大学には普通に「康復科」や「康復医学科」が存在します。もちろん臨床の教科書もあります。病気は、予防だけで避けられるものではなく、治療を続けることで完治するものではありません。康復医学は予防医学、治療医学とともに三大医学を構成する重要な学問なのです。傷病後のQOL(生活の質)を高め、いかに限りある健康寿命を長く良好な状態で過ごせるかを研究し、サポートすることが康復医学の目的です。うつ症状が表れて休職に追い込まれた教員の現場復帰にかかわるのも、まさに康復医学の範疇といえます。

 本年度、創設された「康復医学学会」は、幅広い分野で病後の健康回復の研究を進め、康復医学を新たな医学として確立させたいと考えている学会です。注目していきましょう!

 来年もどうぞよろしくお願いします。


いつもありがとうございます。
光・愛・感謝 五月雨ジョージ


2012年12月28日金曜日

うつと睡眠障害⑦ 対策編


誰でも起りうる「うつ」

クリスマス寒波が到来し、全国各地で今冬の最低気温を更新しています。冷え性の人にとっては睡眠の質を確保するのが大変な季節です。

体の中心部の体温を「深部体温」といいますが、この深部体温、1日の中で、1~1.5度ほど上下します。夕方から夜にかけて最も高くなり、そのあと次第に下がって早朝に最低になります。深部体温が下がるときには、眠気が強くなります。ところが、冷え性の人は血液の循環が悪いため、深部体温を効率よく下げられません。これが冷え性による睡眠障害の大きな原因です。

 そして、冷え性かどうかに関係なく、冬のこの時期に誰でも起こる可能性のある疾患が「季節性感情障害」です。特徴的な症状は、食欲増加、体重増加、睡眠障害などがあり、“冬季うつ”などとも言われます。うつのような症状があるのですが通常のうつ病ではありません。うつ病の場合、食欲がなくなって体重が減り、昼夜を問わず眠ろうとしても眠れなくなります。しかし、冬季うつの場合は逆で、特に午後から夜にかけて炭水化物や甘いものが欲しくなります。また、睡眠の質が低下し日中の眠気も強く、昼寝や居眠りが増えます。日が短くなる秋から冬にかけてうつ傾向が強まり、20~30代の女性に多い病気です。日射量の不足が脳内のセロトニン分泌の低下に関係しています。神経伝達物質の「メラトニン」は覚醒と睡眠の時間が交互にやってくる生体リズムの基礎になる物質です。夜間の睡眠中に脳内分泌量が最大になり、昼間の太陽光で脳内分泌量が抑制されることがわかっています。そのメラトニンの分泌に影響を与えるのがセロトニンです。冬季に限って気持ちが落ちこむ場合でも、冬季だけ職場の環境が大きく変わる場合や年末年始の帰省ストレスを非常に強く感じる人など、気候とは別に落ち込みの原因がはっきりしている場合は冬季うつとは違います。


康復医学の基本 "うつ"と睡眠障害⑦ 対策編

■セロトニン神経を活性する「ラフマ」

ストレスやうつが原因でセロトニン神経の機能が低下し、同時にメラトニン(睡眠ホルモン)が減少すると、「睡眠の質」が悪くなります。リラックスハーブの「ラフマ」には、セロトニンの産生を促し、また、血管に悪影響を与え様々な病気や自覚症状を引起す「ノルアドレナリン」の分泌を調整・抑制する機能があることが認められています。

ストレス CRH*↑ ⇒ 5-HT**↓ ⇒ 精神的自覚症状

【関連する疾患と症状】
パニック障害、うつ病、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、緊張性頭痛、偏頭痛、不眠、睡眠障害、心因性多飲多食症、拒食症など。
*CRH:ストレスホルモン(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)  **5-HT:セロトニン

ノルアドレナリンとセロトニンへの影響


表:ラフマ錠剤組の短期/長期投与によるノルアドレナリンの変化(ng/g)とセロトニンの変化
*p<0.05、**p<0.01vs対照組

◎セロトニンの産生促進
Ⅰ)メラトニンの産生の促進(睡眠の改善) 
Ⅱ)精神安定
Ⅲ)下行性疼痛抑制系の増進

◎ノルアドレナリンの調整・抑制作用
Ⅰ)心拍数の減少
Ⅱ)血管平滑筋の拡張
Ⅲ)血圧の低下
Ⅳ)睡眠の改善

2012年12月21日金曜日

うつと睡眠障害⑥


「うつ」発症の背景

うつ病発症の原因はそのほとんどが社会生活や家庭内などのストレスによるものです。また、ひとつの病気が原因でうつ症状が表れる場合もあります。

患者にうつ症状が表れると、本来の病気の治療が難しくなり、回復も遅くなります。たとえば、がんの患者などは、手術や抗がん剤投与を苦痛に感じ治療から逃避したい思いに駆られるためストレスになり、うつ症状が表れることがあります。しかし、食欲不振や不眠などの症状は、通常のがん治療でも表れるため、うつ病に気が付くのは難しいのが現状です。

 また、“病気と密接に関わるうつ”もあります。パーキンソン病は、筋肉の緊張や運動などを無意識に調整している神経機能がおかされる病気です。パーキンソン病は、手足や顔面の筋が突っ張って硬くなったり、手足の振るえが表れる、動作がのろくなる・・・などが特徴です。神経伝達物質・ドーパミンが主な原因とされていますが、ドーパミン神経の機能低下がセロトニン神経にも影響し、うつに関与していることがわかっています。

 うつは加齢にも関係します。65才以上の高齢者の100人に3~5人はうつ病(軽症を含む)といわれています。高齢者の場合、社会的地位の喪失、孤立的環境など、高齢者特有の心の持ち方があります。また、老化に伴う身体的変化により、感覚機能の低下、運動機能の低下、性機能の低下、身体疾患の合併などさまざまな要因で通常のうつ病とは違った加齢による症状の複雑さを示すのが特徴です。

そして、脳内のセロトニン・ドーパミン・アドレナリン等の合成能にも影響し、またそれが、分泌の低下の原因にもなるのです。


康復医学の基本 "うつ"と睡眠障害⑥

SSRIがうつ病患者を増やしている!

左下の図は厚労省が行った日本の気分障害の患者数(うつ病以外にも躁うつ病等もありますが、うつ病が大半です)の調査結果です。99年からの6年間で、通院するうつ病患者が2倍に増えました。また、右の図が抗うつ薬の市場変化で99年より右肩上がりで売上をのばしています。そして、両図に共通する99年がSSRIが発売された年なのです。この現象は過去に欧米でも起きていて英国などは87年に導入され他の米国をはじめとする先進国は80年代後半~90年代初頭にSSRIが導入されてうつ病患者が急増しました。



セロトニンを仮想的に増やす「SSRI」


セロトニンが増えているわけではないSSRI

右上図のように、抗うつ剤の一種SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)はセロトニンが再取り込みされるのを防ぎ、セロトニンの濃度を仮想的に高め不足を補う働きをするので、元々の分泌量自体が少なくなっている状態では意味がありません。また、これらの抗うつ剤は、特定の神経伝達物質にしか効果がありません。しかも神経伝達物質は多数あって、1種類の濃度を高めることより全体のバランスが大切なのです。
 康復医学学会の見解としては、初期の段階でのSSRIの使用は問題だと言わざるを得ません。


いつもありがとうございます。
光・愛・感謝 五月雨ジョージ

2012年12月20日木曜日

うつと睡眠障害⑤


放っておくと心配な「かくれ不眠」

「直近1カ月間で就寝することの多かった時間帯は?」という睡眠の調査で、最も多かったのは「0時台」で31.6%でした。以下「23時台」が23.4%、「1時台」が20.1%、「2時以降」が12.6%、「23時以前」が12.4%と続きます。

 調査報告では「就寝時間帯別に睡眠時間が不足していると感じる人の割合を見た場合、23時台から0時台にかけてが最も差が大きく22.2ポイント。次に差の大きかった23時より前から23時台にかけては12.7ポイントなので、0時までに就寝するのが良いようだ」と分析しています。

就寝する時間帯は早いほうがいいようですが、こんな調査報告もあります。
「私たちが調査した統計によると現代人の約80%が『かくれ不眠』です。特に、仕事に追われて睡眠を削ってしまっている人たちに多いようです。不規則な生活をしているのに、自分は寝なくても大丈夫、これは不眠ではないと思っているなど、睡眠に対して意識が低いのですね」(杏林大学医学部精神神経科・古賀良彦主任教授)。「かくれ不眠」とは、単なる寝不足と不眠症の間に位置するものです。慢性的な不眠ではなく専門的な治療は必要ないものの、睡眠の悩みや不満をかかえ日常生活に影響がある状態で、この状態に気づかないうちに陥っている人が急増しているのだそうです。古賀教授が所属する『睡眠改善委員会』では、「かくれ不眠」を5つのタイプに分類しています。中でも問題なのが、体力を過信した「自分は大丈夫」タイプと、十分な睡眠をとれず他人に当り散らす「高ストレス」タイプです。そして、かくれ不眠を放置していると・・・
「最初に肌荒れ肥満といった症状が出てきます。睡眠時間が短いとグレリンという食欲を増進させるホルモンが出てくるので食べすぎてしまうのです。それが引き金となり糖尿病高血圧にもなる。さらには心身症です。ストレスが原因で体の各臓器に病気が出てくることも。さらに眠れないと仕事でも失敗する。するとますます眠れなくなる。不眠症や、場合によってはうつ病にもなるでしょう」(同教授)。


康復医学の基本 "うつ"と睡眠障害⑤

■セロトニン神経の5大作用

セロトニン神経は、よくオーケストラの指揮者に例えられます。それは、脳全体の神経細胞に指令を送ることができるからです。セロトニン神経の働きが強いか弱いかによって、他の神経の活動が上がったり下がったりするのです。

大脳皮質を覚醒、意識レベルを調整:

人は、寝ている間は意識がなくなり、朝起きると覚醒します。覚醒時は、スッキリ状態だったり、ぼんやりだったり、不快だったりしますが、セロトニン神経が活性している時は「スッキリ爽快」の状態です。つまり気分爽爽なのです。

自律神経を調整:

心機能、血圧、代謝、呼吸などを管理する自律神経は、交感神経と副交感神経のバランスをシーソーのように保ちながら、強くなったり弱くなったりを繰返しています。このシフトがうまくいくようにするのがセロトニン神経です。

筋肉への働きかけ:

セロトニン神経は、筋肉を緊張させて歩行や姿勢を保持する働きがあります。まっすぐな姿勢イキイキとした表情ができるのは、セロトニン神経が活性化している状態です。

痛みの感覚を抑制:

感覚に対しては、抑制する作用があります。特に下行性疼痛抑制系などに関わり、鎮痛効果が現れることは知られています。ひざや腰の痛み90%セロトニン不足が原因で、セロトニン神経機能が低下するために痛むと考えられます。グルコサミン、ヒアルロン酸などの効果は限定的です。

精神的バランスを保持:

人はストレスなどの外因・内因的な影響を受けて、高揚したり、落ち込んだりと絶えず変化しています。しかし、その振り幅が大きすぎたり、継続したりすると「うつ」へと向かいます。セロトニン神経は、そのバランスを整えます。
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 セロトニンは上記の作用の他にも、生体リズム・神経内分泌・体温調節などの生理機能気分障害・統合失調症・薬物依存などの病態に関与しています。
また、ドーパミンやノルアドレナリンなどの感情的な情報をコントロールし、精神を安定させる働きがあります。


いつもありがとうございます。
光・愛・感謝 五月雨ジョージ

2012年12月14日金曜日

うつと睡眠障害④


睡眠障害~うつ・生活習慣病

「健やかな眠りの意義」(厚生労働省「健康情報サイトe-ヘルスネット」より抜粋)によると、「健やかな睡眠があってこそ十分な休養をとることができます。睡眠不足による産業事故、慢性不眠によるうつ病生活習慣病の悪化など、睡眠問題を放置すると日中の心身の調子にも支障をもたらします」とあります。

 慢性的な睡眠不足は 日中の眠気や意欲低下、記憶力減退など精神機能の低下を引き起こすだけではなく、体内のホルモン分泌自律神経機能にも大きな影響を及ぼします。寝不足(4時間睡眠)をたった2日間続けただけで食欲を抑えるホルモンであるレプチン分泌は減少し、逆に食欲を高めるホルモンであるグレリン分泌が亢進するため、食欲が増大することが分かっています。実際、慢性的な寝不足状態にある人は糖尿病心筋梗塞狭心症などの冠動脈疾患に罹りやすいことが明らかになっています。

 また、睡眠障害のひとつでもある睡眠時無呼吸症候群では、夜間の頻回の呼吸停止によって低酸素血症と交感神経の緊張(血管収縮)、酸化ストレスや炎症、代謝異常(レプチン抵抗性、インスリン抵抗性)などの生活習慣病の準備状態が進み、その結果として5~10年後には高血圧、心不全、虚血性心疾患、脳血管障害などに罹りやすくなります。
 慢性不眠症の人も、交感神経の緊張や糖質コルチコイド(血糖を上昇させる副腎皮質ホルモンの一つ)の過剰分泌、睡眠時間の短縮、うつ状態による活動性の低下など、多くの生活習慣病リスクを抱えています。入眠困難や中途覚醒、早朝覚醒など不眠症状のある人では、良眠している人に比較して糖尿病になるリスクが1.5~2倍になることがわかっています。

 睡眠不足や睡眠障害によりさまざまな生活習慣病が増加・悪化するメカニズムが徐々に明らかになり、睡眠障害への対処が生活習慣病を改善させるということも明らかになっています。


康復医学の基本 うつと睡眠障害④

■質の良い睡眠を演出するセロトニン

人が行動を起こす時、その情報は、脳の細胞から各細胞へ伝わり、情報が伝わるとき脳の細胞からは「セロトニン」が出て、このセロトニンの働きで人は動いたり、食べたり、眠ったりすることができます。
 睡眠を誘う神経伝達物質はメラトニンですが、その原料となるのがセロトニンで、"質の良い睡眠"を実現する主人公です。

セロトニンが不足すると睡眠を妨げる!

セロトニンは、睡眠中の呼吸量も調節しています。体内の酸素量が不足したとき、セロトニンの分泌量を増やし呼吸中枢を刺激します。
 セロトニンが不足すると酸素が不足し睡眠中に息苦しくなり、何度も目を覚まし熟睡できないということが起こります。

セロトニン分泌にはリズムがあります!

セロトニンは1日中分泌されていますが、睡眠中はセロトニン神経の活動は弱くなっていて深い眠りを作り、朝方になると分泌量を増やして覚醒し、スッキリ目が覚めるというリズムがあります。いつまでも寝つけずぐっすり眠れない人は、慢性的にセロトニンが不足しているからです。

要注意!慢性的なセロトニン不足

 ストレスによってセロトニン神経の機能は低下し、分泌量は減少してしまいすが、分泌されたセロトニンは、そのままなくなるわけではありません。再び取り込まれリサイクルしています。慢性的なストレスは、セロトニンをリサイクルさせる「セロトニン再取り込み機能」をも低下させ、リサイクル量を減らしてしまいます。そして、慢性的なセロトニン不足となってしまうのです。

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社会や生活環境でのストレスは、精神的・肉体的な疲労を伴う複合型ストレスです。そして、気力・活力の低下、睡眠の質の低下に影響します。
 ストレスが精神神経系のCRH(別名:ストレスホルモン)を分泌させ、セロトニン神経に影響していきます。
 セロトニン神経の活性化は、今後「対策編」でお伝えする予定です。


いつもありがとうございます。
光・愛・感謝 五月雨ジョージ

2012年12月13日木曜日

うつと睡眠障害③


睡眠の重要性!

慢性的なストレスはさまざまな病気を発症します。しかし、ストレスそのものが直接、肉体的な病気に結びつくことはありません。慢性的なストレスでは、まず脳が疲労を起こし、それがさまざまな肉体的症状につながっていくのです。

 脳内にある神経細胞は非常に疲労しやすい細胞です。そして、その神経細胞の基本的な機能は情報の伝達なのですが、情報の伝達には大きなエネルギーを必要とします。脳内では他の臓器に比べ2倍から30倍のエネルギーが使われています。そしてこのエネルギー産生システムを守る“防御機能”がストレスによって低下することが脳の疲労の一因なのです。
 実験動物の脳を刺激してストレスを与えると、深い睡眠を引き起こすプロスタグランジンD2(PGD2)という物質を作る酵素が作られることがわかっています。人の場合も同じと考えられ、睡眠によって脳の働きをシャットダウンして脳の健康を保っています。睡眠障害がある人は、このシステムが破綻しているため脳疲労が起こるのです。

 そして、ストレスに対する防御機能は他にもあり、脳内の神経伝達物質もそのひとつです。神経伝達物質にはグルタミン酸やGABAなど数多くの種類があります。代表的なのがセロトニンとドーパミンです。車に例えるとドーパミンは「このまま進もう」という意欲・やる気のトップギアで、セロトニンはローギア、ゆったりとした感情・安心感を醸成します。疲労回復という点で重要なのがセロトニンです。脳内セロトニンの働きの低下が、睡眠障害を招き脳疲労うつなどの原因のひとつになっているのです。
 また、気質や性格とストレス・疲労との関係についても研究が進み、日本人は将来に不安を抱きやすく、慢性疲労にも陥りやすいと考えられています。24時間型の現代社会なって、体内のリズムと社会のリズムが合わなくなっていることが睡眠障害を招いているとすれば、睡眠の重要性をいまこそ真剣に考え“睡眠の質”を高めることが求められます。


康復医学の基本 “うつ”と睡眠障害③

■ 情報伝達:神経伝達物質

人間は、何らかの行動を起こすときや、欲求、ストレスなどを受けたとき、まず大脳でま解析し、その後各部位をめぐる神経細胞の流れに乗り、そこで感情が生まれます。その流れを伝達するのが、50種類以上の神経伝達物質です(その働きが比較的わかっているのは20種といわれています)。
精神活動の面では、セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンが重要な働きをします。またそれらは、さまざまな脳内の部位に大きな影響を及ぼすことで知られています。

●他の神経系に関与し調整する・・・セロトニン!
他の神経系と連携しているので、脳内の“総合指揮者”と呼ばれ、広範囲に重要な影響を及ぼしています。セロトニンは他の神経系に抑止的に働き、過剰な興奮や衝動を軽減しますが、セロトニンが不足すると、うつ状態になったり、暴力的になったりすることが知られています。

●積極的な行動には重要な働きも・・・ノルアドレナリン!
人間は、危険や恐怖体験をするとノルアドレナリンを分泌し、立ち向かうか逃げるかの態勢に入り、応力で回避行動に入ります。そして、ノルアドレナリン濃度が上昇し過ぎると、過敏で攻撃的な興奮状態を生じてしまいます。

●快感神経系を増幅する・・・ドーパミン!
快楽神経系が興奮すると、快楽を感じ、身体の動きが活発になり、幸福感を得ます。幸福感が慢性化すると典型的な依存症(たばこやアルコール)になります。逆にドーパミンを過剰に消費するようになると、幻覚や幻聴、妄想などが生じるようになります。覚醒剤依存がやがて精神分裂病によく似た症状を来すのも、ドーパミンの過剰消費と同じ原理です。

質の良い睡眠に影響するセロトニン

睡眠を司る脳内伝達物質「メラトニン」です。メラトニンは脳内の松果体で作られます。そして、このメラトニンの原料になるのがセロトニンです。
 セロトニンの原料のトリプトファン(必須アミノ酸)にいくつかの酵素が働いてセロトニンが出来ます。そこに、さらに別の酵素が働いてメラトニンが作られるのです。このメラトニンを作るために、松果体には他の脳内部位の50倍ものセロトニンがあることが知られています。


いつもありがとうございます。
光・愛・感謝 五月雨ジョージ

2012年12月7日金曜日

うつと睡眠障害②


うつと不眠は双方向性の関係!

「うつ」と「不眠」には深い関係があることは知られていて、うつ病には不眠が伴い、不眠の人はうつ病になるという相互関係も指摘されています。

うつ病患者の約9割が睡眠の問題を伴っている。うち8割りは不眠で、残りは日中に眠くなる過眠などだ」とは日本大学医学部精神医学主任教授。健康な人と不眠を伴う「うつ病」の人では、眠りの内容が異なることも分かっています。健康な人は、入眠後深い眠りに入り、その後は周期的に、浅い眠りと深い眠りを何度か繰り返して目覚めます。一方で、うつ病の人の眠りでは、入眠後すぐに浅い眠りが訪れ、最初の周期から浅い眠りの時間が長くなる傾向があります。また、うつ病の人が入眠障害、中途障害、早期覚醒といった睡眠障害を抱える率は、健康な人に比べていずれも高く、これらの症状は、うつ病を診断するための評価項目にも含まれています。

 また逆に、不眠が続くとうつ病になりやすいという関係もあります。米国ハーバード大卒業生の追跡調査では、卒業後10年以内に不眠症になった人が、その後30年でうつ病を発症するリスクは、不眠でない人の約3倍になったデータなどがあり、現在の不眠の症状が、将来うつになって現れるリスクが高いのです。

 そして、うつ病は再発率の高さも特徴です。
 初めてうつ病になった人の再発率は50%、一度再発した人で約75%、二度再発した人で90%とされています。また、うつ症状が少しでも残っている人と、すっかり消えた人との間でも、再発率に大きな差があります。「うつ病の残遺症状として、不安や倦怠感などと供に、不眠の症状が多く挙げられている。不眠が残るかどうかは、うつ病が再び大きく現れるかどうかの予測因子と考えなければならない」(東京女子医大医学部精神医学教授)。うつの症状が去った後も付いて離れないのが不眠なのです。不眠はうつ病の中心的症状といっても大げさではありません。


康復医学の基本 "うつ"と睡眠障害②

不眠症の定義

“うつ”と睡眠は双方向的に関係しています。睡眠障害の中でも代表的なのが不眠症なのです。
日本睡眠学会の定義によると・・・

①「寝つくのに普段より2時間以上かかる入眠障害」「夜中に2回以上目が醒める中途覚醒」「朝起きた時にぐっすり眠った感じが得られない熟睡障害」「普段より2時間以上早く眼が醒めてしまう早朝覚醒」のいずれかが週2回以上ある。
② ①の状態が1ヶ月以上継続している
③ 自ら苦痛を感じるか、社会生活または職業的機能が妨げられている

 睡眠障害の定義は、①~③の項目をすべて満たしていることとされています。
 そして、睡眠障害には他にもさまざまな種類があります。

睡眠の過程で起きる主な睡眠障害


 慢性的な睡眠不足が続くと、抑うつなどのリスクが高まる傾向があります。昼間に強い眠気、週末や休日になると通常より長く寝てしまう、他の睡眠障害では説明ができない・・・などの条件がそろうと「睡眠不足症候群」とされ、疲労の他に、イライラ、抑うつ、集中困難などの症状が出始めます。


いつもありがとうございます。
光・愛・感謝 五月雨ジョージ

うつと睡眠障害①


ストレスとうつの関連性!

「イヤなことがあっても、一晩寝たら気分がスッキリして悪い感情が薄らいでいる。そんな経験は誰にでもあるはずです。しかし、不眠症になると目覚めても疲労感から解消されず、『今日もよく眠れなかった』『今朝も調子が悪い』と朝から気分が沈んでしまうことが続き、結果、うつ病へと進行してしまうこともあるのです」(日大医学部精神医学系主任教授・内山真氏)。
 不眠症は日中の生活にさまざまな悪影響を及ぼすこともありますが、うつ病との相関関係が極めて強いのです。そして、昨年厚労省は、がん、脳卒中、心筋梗塞、糖尿病の4大疾病に、精神疾患を加え「5大疾病」とする方針を決定しています。「日本人のうつ病の生涯有病率は、6.7%。100人いたら6~7人が一生のうちに1度はうつ病を発症することになります。統合失調症の場合が約1%ですから、その発症率の高さがお分かり頂けると思います」(内山教授)。
 また、近年では、低年齢化や症状の多様化が進み、“うつの時代”とも言われます。そして、その背景にあるのがストレスなのです。内山教授は言います。「うつ病発症のメカニズムは完全に解明されていないのが現状です。しかし、うつとストレスに強い関連性があるのは間違いない。精神と肉体に過度のストレスがかかったとき、そのストレスを回復する機能が働くわけですが、そこに何らかの不調をきたしたせいで憂鬱感が続く。これがうつ病の中核なのです」。例えば重症のうつ病患者では、ストレスがかかると分泌されるコルチゾール(副腎皮質ホルモン)の調整機能が破綻しているといった所見が確実にみられます。過労、人間関係、将来や雇用への不安、事故や災害など、現代社会はストレスに囲まれています。何をストレスと感じ、どう解消するかは、個人の性格や価値観、家庭や職場の環境によって大きく変わるとはいえ、知らない間にストレスの影響を受けている可能性は高いのです。
 また、うつは他の傷病などが原因でも発症し、傷病後のQOL(生活の質)に影響を与え、再発や合併症をも招く恐れがありますので要注意です。


康復医学の基本 "うつ"と睡眠障害①

■「うつ」潜在的な患者は未知数

 現代社会において「うつ」が国民病であることに異論を挟む人はいないでしょう。
 右グラフのように、気分生涯患者の数は年々増え続けています。中でもうつ病の患者数は大幅に増えています。しかもこの数字は、あくまでも“心の不調”で医療施設を利用した患者数ですので、潜在的なうつ病患者の数はこの数倍にも上るといわれています。

日本人は睡眠の質が低い!

製薬会社の調査では、不眠症の疑いがありながら70%以上の人が「自分は不眠症と思わない」と回答し、不眠を自覚していない、もしくは不眠であっても病気だと認識していない人が多く、そのことが病院での診断を遅らせています。
 睡眠は「何時間眠ったか」にばかりこだわってしまいがちですが、大切なのは時間ではなく、その睡眠の“質”です。2002年に「最も長生きができる睡眠時間は7時間(米国医学誌「アーカイブス・オブ・ゼネラル・サイキアトリー」)と発表されました。日本人の平均睡眠時間は十分に満たされているにもかかわらず、不眠を訴える人が多いのは、まさに“睡眠の質”が十分でないことがその要因です。(右表)。
うつの初期症状として不眠は重要なサインです。睡眠時間が短いうえに眠りが浅く、覚醒しやすいというのが、典型的なうつ病による不眠の症状です。同時に倦怠感や身体的な愁訴が続くという特徴もあります」(慶應義塾大学医学部呼吸器内科講師談)


いつもありがとうござます。
光・愛・感謝 五月雨ジョージ

2012年11月30日金曜日

ミトコンドリア・対策編②


抗酸化酵素とエネルギーの関係

「昨日の自分と今日の自分は違う」
 一日で見違えるほど容姿が変わることはありませんが、人の細胞は1日でも変化があります。
 人の体は約60兆個の細胞が定期的に入れ替わることで生命活動を保っています。年齢や個体によっても差がありますが、おおよそ1日200個に1個の割合(0.5%)で細胞は新しいものに入れ替わっています。この入れ替わりのためには、細胞は自分のコピーを作らなくてはならないのですが、この時にコピーのミスが生じ遺伝子を傷つけてしまいます。
 この遺伝子の傷を作るのは、他に放射線や紫外線、発ガン物質などもあります。しかし、一番の原因はやはり活性酸素です。活性酸素が体に有害なのは、酸化力が強く、細胞を内部から傷つけてしまうからです。この傷が病気や老化に関与しているものの人間がおよそ120年もの寿命を誇っていられるのは、この傷を修復する生体システムがあるからです。
 ひとつは「遺伝子の修復能力」です。コピーミスや外的要因によって生じる遺伝子の傷を察知して修復し、できないものは廃棄するという機能があり、この機能は他の動物より優れています。
 そして、もうひとつが活性酸素を取り除く「抗酸化酵素」を作ることができることです。体内で合成される抗酸化酵素には、グルタチオンペルオキシダーゼ(GSH-Px)、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)、カタラーゼの3つがあります。この3種類の酵素が連係して「活性酸素」を除去してくれます。SOD酵素は、活性酸素を処理する過程で過酸化水素を作ってしまいますが、GSH-Pxは、活性酸素を除去しさらに過酸化水素を水に変える働きをします。また、過酸化脂質を含む過酸化物の処理も行うので、細胞膜や細胞小器官(ミトコンドリアなど)を構成する脂肪酸や遊離脂肪酸が酸化するのを防ぐ重要な働きもします。
 しかし、いくら修復する生体システムがあっても、加齢とともにその機能が衰えてきます。その結果、修復しきれなかった遺伝子の傷が蓄積して老化が進みます。老化には個人差がありますが、その原因はやはりエネルギー不足になります。人は遺伝子を修復したり、抗酸化酵素を作り出したりするにもエネルギーを必要とするのです。 


細胞内器官ミトコンドリア・対策編②

活性酸素と抗酸化酵素

体内には、活性酸素に対処するグルタチオンペルオキシダーゼ(GSH-Px)やSOD、カタラーゼなどの抗酸化酵素があります。中でもGSHーPxは、体内で作られる非常に強い抗酸化作用を持つ物質で、活性酸素を除去する機能があります。

抗酸化食品と抗酸化酵素は違う!

ビタミン類やSOD様食品といわれる抗酸化食品は、細胞内酸化物質ミトコンドリア内酸化物質の除去には無力です。
 健康食品で「抗酸化」という言葉を使いますが、細胞内で働く本当の抗酸化作用があるのは抗酸化酵素であり、食品の抗酸化とは違うものなので注意が必要です。

霊芝と抗酸化酵素

通常の抗酸化物質と比べるとGSHーPxは、ただ活性酸素を分解するだけでなく、ここでできた不安定な酸素を水に還元する効能があります。また、不安定な酸素をも還元する効能があります。また、不安定なし、更に活性酸素が作られることを予防することができます。そのためGSH-Pxは、抗酸化作用を持つ物質の中でも非常に強力なものと言われています。

GSH-Pxの活性が顕著な霊芝

※参考資料「HM真菌 エビデンス」(微小循環研究所刊)

 上記のデータのように、霊芝は抗酸化作用に期待が持てる抗酸化酵素のGSH-Pxの産生と活性に影響します。
 さらに康復医学学会が開発した「テラフォトン調整法」によって、生命波といわれる「テラヘルツ波」を有効的に体内に取り入れることで、ミトコンドリアの活性化に影響を与え、活性酸素対策に期待ができます。
 このように特定生薬類似食品「霊芝」+最先端医学「テラフォトン療法」の組み合わせは、康復医学学会が提唱する基本的な康復療法です。

※「テラフォトン調整法」については、『康復医学大綱』(微小循環研究所出版局刊)の63ページ参照



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光・愛・感謝 五月雨ジョージ

2012年11月28日水曜日

ミトコンドリア・対策編①


メタボの秋~冬、その対策!

味覚満載の食欲の秋も終わり、冬本番をむかえています。この時期心配なのは“メタボ”です。

メタボという言葉を聞くと「肥満」を連想する方が多いと思いますが、“メタボリック”という言葉は、本来“代謝”という意味です。そして、メタボリクックシンドロームとは「代謝症候群」という、代謝の異常によって起こるさまざまな病的変化のことです。
 糖尿病、高脂血症、高コレステロール、高血圧、動脈硬化といった病気は、代謝が原因で起こる場合も多々あります。これらがさまざまな形で組み合わさったメタボは、心筋梗塞、脳梗塞などの心臓や血管の循環器系統に異常を引き起こすので、その対策はとても重大です。

 正に「肥満は万病のもと」といえますが、体に悪いのは皮下脂肪ではありません。むしろ“内臓脂肪”のほうが危険です。メタボの日本の解釈は「内臓脂肪症候群」です。しかし、メタボを心筋梗塞や脳梗塞ほど重大な病気と考えている人はほとんどいません。その原因は、内臓脂肪が増えただけではすぐに目に見える症状が出ないところにあります。
 どこか体調が悪ければ病院に行く人は多いと思いますが、本質は代謝のバランスが崩れているところにあるため、個別に治療を試みてもうまくいきません。内臓の脂肪代謝に関係してくるのはエネルギー代謝であり、細胞内小器官・ミトコンドリアでエネルギーを充分に産生できないことが問題なのです。メタボリックシンドロームは、ミトコンドリアの機能低下が原因で起こるもっとも重大な病気のもとなのです。

 メタボの解消・予防には、ミトコンドリアを活性させてエネルギー代謝率を上げ、内臓脂肪を減らすことのが唯一の方法であるといっても過言ではありません。

 今号より、基礎講座として「ミトコンドリア活性・対策編」をお送りいたします。

※ノロウィルス 大流行の兆し!

ノロウイルス患者は、過去10年で最も流行した2006年に次ぐペースで増加しており、厚労省は注意を喚起しています。
 「手洗い」「うがいの励行」が基本なのは当たり前ですが、康復医学学会が推奨するノロウイルス感染防止のポイントは、「患者の嘔吐物」や「おむつ・下痢などの排便」の始末に関しての注意です。ウイルス飛沫が大きな感染源になるからです。
 その予防には、ペーハー値の高い焼成カルシウム(原料:貝殻、pH12.4)などの使用を呼びかけています。水に溶かした焼成カルシウムを撒いて嘔吐物や排便を取り除いた後、その場所に再度噴霧することを進めています。他の薬品などに比べ安全性が高く、持続性があることが、焼成カルシウムを推奨する理由です。


細胞内器官ミトコンドリア・対策編①

■微小循環とミトコンドリア活性

前回までのシリーズ「細胞内器官ミトコンドリア」で、ミトコンドリア内でのエネルギー代謝の低下が、老化や健康寿命だけではなく慢性的な疲労やメタボ・美容など多岐にわたって関係している、とお伝えしてきました。
 そして、これらの対策として有効なのが、微小循環対策ミトコンドリア活性にあることを訴えて来ました。

ミトコンドリア活性に必須な栄養素!

エネルギーは貯めておくことはできないので、常に効率よく産生できる状態にしておくことが元気に活動するポイントです。そのためには、微小循環の環境を良好に保つことが条件となります。
 その基本は、酸素の供給量UPに影響する生薬「霊芝」の摂取です。さらに、必要な栄養素として必須なのが、ブドウ糖を効率よくミトコンドリアへ送る「α-リポ酸」、脂肪酸を送り込む「L-カルニチン」、そしてエネルギー産生の着火剤であり電子伝達系の要でもある必須栄養素「コエンザイムQ10」です。

 霊芝を除く上記栄養素は、体内で合成されるものですが、加齢や疾患、生活習慣、ストレスなどによって、それの産生量は減少してしまいします。食事だけでは必要量を充分満たすことは難しいので、日常的にサプリメントで補給するのが良いでしょう。
 これらの栄養素は、炭水化物や脂肪などの栄養素をミトコンドリア内でエネルギーに変えるために働いています。また、生薬「霊芝」は、微小循環の末梢血管血流を改善して、全身組織への酸素の供給量を上げる働きが認められています。だから、霊芝はミトコンドリア活性に影響を与えるのです。


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2012年11月23日金曜日

ミトコンドリア④


ミトコンドリアとがん細胞

ミトコンドリアはひとつの細胞に数百~数千個もある細胞内小器官です。そして、身体の臓器の細胞でミトコンドリアが一番多く存在するのが心臓です。

 さまざまな体の組織になりうるヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)などから心筋細胞を、従来より効率良く低コストで大量に作製する方法を、慶応大と医薬品開発会社アスビオファーマ(神戸市)のグループが見つけたと、11月16日付の米科学誌「セルステムセル」(電子版)に発表しました。
 福田恵一慶大教授(循環器内科)と同社の服部文幸主任研究員らは以前、心筋細胞に多い細胞内小器官「ミトコンドリア」を目印に、他の細胞の中から心筋細胞をふるい分ける方法を発見。その後の研究の過程で、他の細胞がブドウ糖(グルコース)も栄養としエネルギーを産生する機能(解糖系)に使うのに対し、心筋細胞はミトコンドリア内の化学反応(TCA+電子伝達系)が主なエネルギー源で、ブドウ糖が不要ということがわかったのです。
 休みなく働く心臓が必要とするエネルギー量は解糖系だけでは間に合いません。そこで、ミトコンドリアで大量にエネルギーを産生しているということです。

 そして、ミトコンドリアの機能が低下すると、心臓機能だけではなく“肥満”や特に“良性腫瘍”にも影響することがわかりました。
 良性腫瘍は、複数の遺伝子が変異して生じた前癌細胞が過剰に増殖して作られます。発生した場所から移動することはなく、この良性腫瘍が悪性化し、周囲の組織への浸潤や転移が起きるようになって“癌(悪性腫瘍)”になります。癌化のメカニズム研究では、主に癌細胞での遺伝子変異が注目されてきましたが、近年は、周辺細胞との相互作用による影響も考えられるようになっています。その仕組みの解明までは至っていませんでしたが、9月30日、神戸大学大学院医学研究科・井垣達吏准教授らは、英国の科学誌「Nature」オンライン版に新たな論文を記載しました。それは、がん組織で高頻度に認められるミトコンドリアの機能低下が周辺組織の悪性化 (がん化) を促進することを発見し、その仕組みを解明したということ。ショウジョウバエを使った実験で、ミトコンドリアに機能障害を起こす遺伝子変異が導入されると、良性腫瘍自身ではなく、近隣にある細胞の増殖能が高まり、近隣細胞は悪性化して、神経組織への浸潤・転移もみられたのです。ヒトの癌組織でミトコンドリアの機能が低下していることは、10年以上前から知られていたが、その意味はほとんど不明でした。特に悪性度が高い膵臓癌では、ミトコンドリアの遺伝子変異が高頻度で起きていました。
 ミトコンドリアではエネルギー産生時に活性酸素を作り出すことは知られていますが、ミトコンドリアの機能が低下している状態のほうが、より多くの活性酸素が産生されてしまい、遺伝子に影響を与えることがわかっています。

※2月12日号「がんと酵素②)も参考にしてください。


康復医学の基本 細胞内器官ミトコンドリア④

■ミトコンドリアと活性酸素の関係

ミトコンドリアで酸素を使いエネルギーを産生する過程で、身体にとって有害な「活性酸素」が必要以上にできてしまいます(もちろん適度の活性酸素には、体内のウイルスや菌を不活化・殺菌する役割もあります)。
 ミトコンドリアの状態によっては、たくさんの活性酸素がミトコンドリアの外に漏れ出します。

活性酸素がタンパク質やDNAを標的に!

ミトコンドリアから漏れ出た活性酸素は、遺伝情報を担うDNAやタンパク質を攻撃し傷つけます。傷が蓄積すると、細胞の機能は低下し、老化の原因にもなります。
 また、過剰に出た活性酸素により、核にあるDNAが傷つけられ遺伝情報が改変されてしまうと、細胞の機能が失われて細胞が老化したり、適切に増殖できなくなり、がん細胞になったりします。

 活性酸素が過剰に発生する原因には、心身的ストレス、過剰な運動、過度のアルコール摂取、喫煙、医療被曝などがあります。


細胞が活性酸素から身を守る!

細胞は活性酸素から身を守るためのしくみを持っています。活性酸素除去物質、酸化還元酵素(GSH-px、SOD、カタラーゼ)の働きで、活性酸素を毒性のない水分子へと変えています。
 酸化還元酵素は、人間の体内で作られる酵素ですが、加齢と共に体内での産生能力が衰えたり、生活環境・習慣などで過剰な活性酸素を除去しきれなくなってしまい老化の進行生活習慣病などの原因となるのです。
 活性酸素除去物質の中で最も強力なのがGSH-pxです。康復医学学会が推奨している「霊芝」には、GSH-pxの産生と活性化に関する豊富なデータがあります。


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光・愛・感謝 五月雨ジョージ



2012年11月21日水曜日

ミトコンドリア③


見かけだけの低体温?

体温測定というと、わきの下での測定をイメージする人が多いと思います。
 しかし、正確な意味での体温は、「深部体温」によって表されます。深部体温とは、体の表面の温度が外気温によって若干変動するのに対して、脳や内臓などの温度は一定に保たれており、このような体の深部の温度を指します。

人の一般的な深部体温は37℃を基準としています。体温に関わらず、手足などが部分的に冷たくなることを不快に感じるのが冷え性ですが、これは低体温とは違います。低体温(症)とは“体全体の体温が低下すること”を指す医学用語です。摂氏に換算して約35℃未満と捉えられていることもありますが、深部体温で測定した場合の低体温とは約36℃未満を指します。一般的な体温計で測定したとき、35.4℃未満であれば低体温の可能性があります。健康な人は、起床したときの体温が最も低く、活動するにつれて少しずつ上昇し、正午から夕方にかけてピークを迎えます。その後は睡眠時まで次第に低くなります。

 日頃から様々な不調に悩む人が多い低体温ですが、低体温は体質だけが原因ではありません。体温が低いうえに薄着などで熱が奪われたり、偏食やダイエット等などによる栄養不足、不規則な生活習慣・運動不足、などが原因と考えられています。また、ストレスなどによる交感神経・副交感神経のバランスが崩れると、36℃を下回り、低体温特有の疾患免疫力の低下などが表れることがわかっています。

 ところが、最近はこうした原因がないにも関わらず、“平熱が低い”人がいます。中で最も注意が必要なのは、肥満(皮下脂肪の増大)によって深部体温は正常なのに皮膚表面には温度が伝わらず、見かけ上の低体温となっている人たちです。彼らの低体温は、それによって健康に害が生じるというよりも、何らかの前兆として低体温が生じているとが考えられます。原因として考えられる身体の機能としては「エネルギー産生の低下」です。そのため、基礎代謝が下がり、脂肪が燃焼されず皮下脂肪が増えていきます。 それが「見かけだけの低体温」になっていきます。
 エネルギー産生の向上が、基礎代謝を上げることにつながり、皮下脂肪対策にもなるのです。


康復医学の基本 細胞内器官ミトコンドリア③

■3大消費エネルギー代謝

意外と少ない「生活活動代謝」

日々のスポーツやエクササイズ、家事、仕事など運動による代謝をすべてひっくるめたのが生活活動代謝ですが、通常、1日に消費されるエネルギーの2~3割と意外に少ないのです。

食べても消費するけど…「食事誘導性熱代謝」

 食事をするとポカポカと温かくなりますが、そのエネルギー代謝の事で自律神経の興奮によって引き起こされますが、1日の消費エネルギーは1割程度です。

消費エネルギーの横綱「基礎代謝」

体温を一定に保ったり、各臓器の働きや血液を循環させたり、生命の維持に不可欠なエネルギーのすべてが基礎代謝エネルギーです。そのため、運動しているときだけではなく寝ている時でも消費されます。しかし、基礎代謝エネルギーは加齢と供に減少してゆくので、若いときと同じ量の食事をしていても脂肪が溜まってしまうのです。

リバウンドはエネルギー節約が原因!

人の身体は生命を維持するため、環境に適応する能力を持っています。ダイエットなどで食べる量が減った場合、身体は「このまま、カロリー(エネルギーの素)を摂取できない状態が続くと危険!」と判断します。すると、生命を維持するためにエネルギーを蓄えたり、エネルギーをなるべく使わない身体になろうとするのです。これが肥満の正体です。つまり、脂肪を蓄えて、エネルギーを使う筋肉を減らそうとするのです。
 また、エネルギーの産生機能の低下は慢性的なエネルギー不足になり基礎代謝の低下を招き、太りやすく痩せにくい体質になってしまいます。これがリバウンドの正体です。

このように肥満や病気などには、ミトコンドリアが関与しています。食事制限と運動だけでは肥満や疾病予防には期待ができないのです。これらの対策にはミトコンドリア活性が有効なのです。


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光・愛・感謝 五月雨ジョージ

2012年11月16日金曜日

ミトコンドリア②


寿命や疾患に関わるミトコンドリア

ミトコンドリアの変異によって十分なエネルギー産生が行えなくなることが原因のひとつになり起る病気に、ミトコンドリア病があります。ミトコンドリア病は、エネルギー需要の多い、脳、骨格筋、心筋が異常を起こすことが多く、体内全てのミトコンドリアが一様に異常をきたすわけではないため、多彩な病態を示すのが特徴です。
 ミトコンドリアDNAの異常が原因でインスリン分泌に障害が生じ糖尿病になる、「ミトコンドリア糖尿病」という疾病もあります。糖尿病患者の1%はミトコンドリア病であると考えられています。そして、生物の寿命について、過去には、老化が代謝エネルギーと密接に関係しているからだという「生命活動代謝速度理論」という説も生まれました。動物は一般的に、体が小さいほど皮膚から熱が逃げやすくなります。体重に比例して体表面積が大きくなるためです。そこで、小さい動物は体温を保つために多量のエネルギーを必要としますから、さかんにエネルギーを代謝します。短時間にエネルギーを消費するので短命になるといわれ、逆に象のような大きい動物は体重あたりの表面積が小さく熱が失われにくいので、エネルギー消費がゆっくり進むので寿命も長くなるというのです。
 しかし現在、平均寿命が延びているのは、食糧事情や医療(感染症対策)などが向上しているだけで、人の生物学的な最長寿命(ある集団の中で一番長く生きたものが何歳で死んだかという値)は今も昔も変わってはいないと言われています。昔の人は身体が衰えるまで生をまっとうできなかっただけのことだといわれています。しかし、今の時代は、平均寿命はまっとうできても「健康寿命」となるとどうでしょうか? 
 傷病後の健康を回復する「康復医学」などもそうです。健康寿命」や「康復医学」にも大きくかかわってくる微小循環とエネルギー代謝。実はその要となるのがミトコンドリアなのです。


康復医学の基本 

■細胞内器官ミトコンドリア②

通常の細胞は微小循環を経由して酸素・栄養素を取込み、ミトコンドリアで身体が機能するために必要なエネルギーを産生しています。この産生方法は2通りあります。そして、エネルギー産生後の二酸化炭素などの不要物を微小循環経由で排出し処理します。酸素・養分を細胞に運び、不要物を回収するのが微小循環の役目なのです。

2系統の産生システム

ミトコンドリアで産生されるエネルギー(ATP)は、2段階のしくみで作られます。
 ひとつは、炭水化物(糖質)を利用してエネルギーを産生するしくみの嫌気性システム「解糖系」です。酸素がなくてもエネルギーを産生できるのですが、量が少ない反面、素早くエネルギーを産生し瞬発力に有効です。ガン細胞はこの解糖系エネルギーを利用しています。解糖系は、エネルギー産生時にピルビン酸を作ります。
 ピルビン酸からいくつかの物質に変化しクエン酸がつくられます。このクエン酸が代謝されて、クエン酸回路・電子伝達系を回し続けます。これが運動のためのエネルギーを生み出す好気性システム「ミトコンドリア系」です。この時には、酸素が必要になります。ミトコンドリア系は解糖系に比べ18倍ものエネルギーを産生します。ミトコンドリア系は、エネルギー産生のスピードは遅いですが、エネルギー産生量が多いのが解糖系との違いです。

エネルギー産生の低下で乳酸が蓄積する!

上記の2つのシステムは、エネルギー産生の時間差が生じ、余った物が「乳酸」という形で残ります。乳酸は一時的に作られる物で、燃えカスや老廃物ではありません。もちろん疲労物質でもありません。必要に応じてミトコンドリアで再利用されエネルギーになりますので、ミトコンドリアの多い筋肉繊維や心筋などで、乳酸は多く使われます。このシステムが低下していると、エネルギー不足を起こし疲労の原因にもなります。そして、乳酸も消費できず蓄積することになります。
 また、乳酸そのものは疲労物質ではなく、セロトニンに影響(後号で詳しく)を与え、疲労を発生させることがわかっています。


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光・愛。感謝 五月雨ジョージ

2012年11月14日水曜日

ミトコンドリア①


iPS細胞とミトコンドリア

ひとの体は修復する能力がありますが、限界もあります。
 疾病やケガなどで身体の組織や臓器が激しく痛んでしまった場合、修復できずに機能が失われてしまうことがあります。そして、一度失われた組織や臓器の機能を取り戻すことは簡単なことではありません。臓器移植は、移植可能な臓器の数が圧倒的に不足しており、拒絶反応の問題もあります。また、人工臓器は、性能や大きさ、費用の面で、患者の要求に追いついていません。

そんな患者さんへ一筋の光ともいえる研究が、ノーベル賞を受賞しました。ご存知、京都大学教授の山中伸弥博士です。
「私の人生のすべての目標は、iPS細胞を患者さんのもとに届けること」。ノーベル賞受賞が発表された直後にインタビューに答えた山中博士の言葉です。iPS細胞は、大人の体から取り出した細胞(たとえば皮膚の細胞)にいくつかの遺伝子を与えるなどして作られます。体中のほぼすべての種類の細胞になれる能力(多能性)を持ち、無限に増殖できます。つまり、病気の治療に必要な種類の細胞を、iPS細胞から必要な数だけ作ることができるのです。しかも、患者本人の体からとりだした細胞を使ってiPS細胞を製作し、そのiPS細胞から作った細胞を同じ患者に移植すれば、通常の移植で問題となる拒絶反応の心配もないのです。
 自然には治らない組織や臓器を再生させて、機能を回復させることをめざす医療を「再生医療」といいます。山中博士のiPS細胞は、再生医療の切り札になると考えられています。iPS細胞は、「人工的に誘導された(induced)、多能性をもつ(Pluripotent)、幹細胞(Stem cell)」という意味です。幹細胞とは、分裂して自分と同じ幹細胞を作ることができ、また他の細胞にも変化できる未成熟な細胞のことです。

 iPS細胞で作られた組織も、実は「微小循環」が必要です。そしてさらにもう一つ大切なのは、細胞の機能や人が活動するのに必要なエネルギーを産生するミトコンドリアという器官です。ミトコンドリアは体のほぼすべての細胞にあります。この「微小循環」と「ミトコンドリア」は必須条件です。しかも、このミトコンドリアが正常に機能しないと、細胞の機能低下や老化、ガン、生活習慣病、アルツハイマー病といったさまざまな病気の原因になってしまいます。


康復医学の基本

■細胞内器官ミトコンドリア①

近年の研究手法の発達によって、ミトコンドリアの新たな一面が明らかになってきました。今号より康復医学基礎講座では、細胞内最重要の器官「ミトコンドリア」を特集でお送りいたします。

エネルギー産生工場

体が動く時や考える時、そして心臓が動く時に、体の細胞はエネルギーを消費します。その大部分のエネルギーを作り出す“産生工場”が「ミトコンドリア」です。ミトコンドリアは、細胞の中にある遺伝情報を持つ「核」や、特定の機能を持つ構造「細胞内器官」の中で、健康を支配する最も重要な器官です。

1細胞あたり数百から数千個も存在する

人のミトコンドリアの数は、1細胞あたり100個から3000個ほどとされています。エネルギーを必要とする細胞ほどミトコンドリアの数が多く、心臓の心筋細胞や脚などの骨格筋細胞、神経細胞などでその数は多くみられます。

エネルギー産生システム

ミトコンドリアに運ばれた脂肪酸は、b-酸化によって代謝され、電子伝達系による酸化的リン酸化によってエネルギーの産生が行われます。これが、ミトコンドリアの主なシステムです。
 酸素は本来、原生生物にとって毒となるものでしたが、ミトコンドリアの機能により、酸素から運動エネルギーを獲得できるようになりました。 細胞のさまざまな活動に必要なエネルギーのほとんどは、直接あるいは間接的に、ミトコンドリアから「ATP」というエネルギー源の形で供給されます。
 従来、老化などは生理的な自然現象であり、生物である人間には避けられないものと考えられてきました。しかし、今回のiPS細胞のように、医学や科学技術が進歩したおかげで、身体の働きや細胞のメカニズムが科学的に分析されるようになりました。そして、病気や疲労、美容に至るまで、様々な所でミトコンドリアとの関係が解明される一方、ミトコンドリアの機能の低下が問題にされるようになってきているのです。


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2012年11月9日金曜日

微小循環基礎講座 対策編④【血栓形成の原因】


高血圧型からメタボ型へ

若年層の脳卒中が増えている

日本人の死亡原因のベスト3に入る脳卒中(①ガン、②心臓病、③脳卒中の順)ですが、脳卒中のうちでも高血圧が主な危険因子となる脳出血は減少しています。そして、動脈が詰まって血液が流れなくなり、そこから先が酸欠状態で壊死してしまうのが脳梗塞。脳の血管に直接、血栓ができて詰まることもあれば、心臓付近ではがれた血栓が血流に乗って脳までたどり着き、そこで血管を詰まらせることもあります。障害が起こった場所によって、意識がなくなったり、ろれつが回らなくなったり、手足がまひしたりといった発作が起こり、後遺症として運動障害や言語障害があり、QOL(生活の質)を低下させてしまいます。

脳卒中に関してはどこかに「お年寄りの病気」という気持ちがあるようですが、米国神経学会誌「Neurology」に報告された調査研究によると、近年、脳卒中の発症が若年齢化しているとのことです。
 調査研究では米国中西部の中規模都市圏(人口130万人前後)の住民を対象に、93年7月から94年6月までと、99年、05年のそれぞれ1年間ずつのデータを比較しました。93~94年当時の脳卒中の平均発症年齢が71.2歳だった一方、05年は69.2歳へ低下していましたが、55歳未満(20~54歳)の発症を見ると、93~94年の12.9%に対し、05年は18.6%に上昇していたのです。
 国内の状況はというと高齢患者の増加に隠されがちですが、この数年、70年前後に生まれた世代の脳卒中患者が増加傾向にあることが明らかになっています。この世代は高度経済成長期真っただ中に生まれました。この時期を境に日本人は小児期から欧米型の食生活にどっぷりつかり、社会や生活文化もガラリと変化しました。70年代までの日本人の脳卒中といえば、しょっぱいもの好きが生み出した高血圧が主要因と考えられていました。しかし、それ以降は塩分摂取が減る一方で、“高脂肪食”つまり欧米型の食事が増加。これを背景にした耐糖能異常*、脂質異常症、肥満の「メタボ型」脳卒中が増えてきたのです。
 現在では、脳卒中は「お年寄りの病気」ではありません。そして、つらい現実としては、脳卒中発症後の復職率は3割程度で、それもほとんどが軽症に限られた話なのです。復職もさることながら普段のQOLの確保も重要です。
 今回の微小循環基礎講座は、脳梗塞の原因“血栓”についてです。
※参考:Diamond Online「カラダご医見番」第124回(2012.11.05)より

*耐糖能異常とは:インスリンが分泌されているにも関わらず食後の血糖値が一定以上に高くなり、将来、2型糖尿病に移行する可能性が高いとされる病態をいいます。正常と糖尿病との間に位置するため、「境界型糖尿病」ともよばれています。


康復医学の基本 微小循環基礎講座 対策編④

■血栓形成の原因

血液は、身体を循環するときには凝固したり血栓を形成したりはしません。しかし、血管の障害血流の低下により、血栓が起こりやすく凝固しやすくなります。 
 血栓の形成には3つの大きな要因があります。

①血管内皮細胞の傷害 
 ストレスや喫煙、高脂血症、高血圧、肥満、糖尿病などが原因で血管内皮細胞が傷つき、そこから血栓が生じる。

②血流の緩慢
 長時間の同じ姿勢により血管が圧迫されることで、血流が緩慢または停止している場所や、動脈瘤、静脈瘤、心臓内など血流が渦巻く場所に血栓が生じやすい。

③血液の変化粘度の増加、繊維素溶解活性低下、血液凝固因子の増加など)
 高脂血症や脱水症状時、妊娠・出産時、老齢などでは血液成分が変化しているため血栓が生じやすい。

霊芝の実験的血栓形成への影響


 本実験の中で血栓の形成に対して、霊芝を投与し、ウロキナーゼ(臨床でよく使われている血栓を溶かす薬)と比較した結果、霊芝は血栓形成に対して、抑制する作用を有することが見出された。      
※資料抜粋:『HM真菌エビデンス~自然食菌の同定から臨床まで~』(微小循環研究所刊)

 形成し始めると次から次へと形成する血栓。この血栓に霊芝は影響を与えます。血栓の形成傾向にある場合は、霊芝が血栓形成抑制に期待ができます。また、霊芝は血栓を溶かすのではなく、多くできやすい血栓形成に影響するものなので、副作用などの心配はありません。
 血栓の対策は、血流対策だけでなく、脳・心臓血管障害など血管の病気の対策にも期待ができるのです。


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光・愛・感謝 五月雨ジョージ

2012年11月7日水曜日

微小循環基礎講座 対策編③【細胞への酸素供給のカギ「2,3-DPG」】


寝たきり大国ニッポン!?

「日本は長寿国ですが、寝たきりの比率が世界と比べて2~3倍高い。介護を必要としながら長生きする“寝たきり大国”なんです」。こう話すのは首都大学東京大学院・星旦二教授。同教授は全国の高齢者38,000人の追跡調査を行い、健康で長生きして「生涯現役」を実現するための研究を続けています。
 その結果、生涯現役か寝たきりになる地域があり、検証すると寝たきりにならない生き方がわかってきました。厚労省発表のデータを基にできた「寝たきりになりにくい都道府県ランキング」があります。それによると寝たきりになりにくい県のベスト3は、埼玉、千葉、茨城で、ワーストは長崎、徳島、和歌山となっています。そして、これにもっとも大きく関連しているのが、病院の病床数です。
 同教授は「全国各地の病院の病床数と要介護率を比較したところ、相関関係がありました。病床数が多い都道府県ほど、要介護率が高くなるのです。これはつまり、病院が寝たきりを作っているといっても過言ではないでしょう」。ベスト1の埼玉は、人口10万人あたりの病院の病床数は全国最下位で、千葉は45位です。「病床数が多いのだから、そこに入院する寝たきり患者が多いのはあたりまえだ」と思う人が多いと思いますが、今回用いた「要介護率」は、病院や特養ホームなどの施設だけではなく、自宅で介護を必要としている人も含まれます。
 病床数が多いと寝たきりが増える原因は「入院する期間は徐々に短縮されているとはいえ、日本の病院の入院期間欧米の4倍もあります。がんの手術をしたって、その日か翌日には退院するのが世界の常識。これは医療費を安く済ませるわけではなく、早く退院したほうが、回復が早いからです。病気になって病院にかかるのは仕方のないことですが、いつまでも病院に入院していると寝たきりに移行しやすいと考えられます」。
 どんな原因であれ、高齢になってから長期間の入院をした場合は要注意。身の回りの世話をしてくれるし、一日中ベットの上で過ごすため、生活運動の量が減少し筋肉量が減り体力が落ち寝たきりになる悪循環が生じてしまうのです。
 病院にお世話になることは誰にでもあることですが、康復医学学会では、“寝たきりにならないためには、治療後の健康を早い段階で回復すること”であると提唱しています。



康復医学の基本 微小循環基礎講座

■〔対策編〕③

酸素の供給量と2,3-DPG

赤血球のヘモグロビンは、酸素と結びついて細胞に酸素を届ける役割を持っています。しかし、せっかく吸収した酸素もすべてが細胞に供給できるわけではありません。肺でヘモグロビンと結合した酸素を各組織の細胞にまで運び、ヘモグロビンから切離し効率よく供給するのが「2,3-DPG」という物質です。アスリート達が高地トレーニングをするのは、2,3-DPGを増やすためなのです。

HbA1cと2,3-DPG

血糖コントロールの判断材料として「HbA1c」の数値は、糖尿病の治療コントロールの良否にはかかせない数値です。高血糖で糖化したヘモグロビン(糖化ヘモグロビン)は、酸素を寄せ付けなくなってしまい、細胞に酸素が行き届かない状態になってしまいます。そして、2,3-DPGには、HbA1cの数値に影響を与えるデータがあります。

2,3-DPGの非酵素的HbA1cの生成に及ぼす影響について(独協医科大ME部)

酸素の供給量が減ると以下のような症状が表れます。
○代謝の低下→体力低下、慢性的な疲労、老化の促進など
○免疫力の低下→感染症、インフルエンザ、腫瘍など

霊芝の三大産生物の一つ「2,3-DPG」


現代では、ストレスや生活習慣などの影響で体内の酸素が不足ぎみの傾向にあります。酸素の不足は代謝の低下、体力・免疫力などの低下につながって、これからのシーズン、インフルエンザや感染症にも影響します。
 エビデンスが明確で同定された「霊芝」は、酸素の供給やHbA1cに影響する2,3-DPGの増加に大きな期待できるのです。


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光・愛・感謝 五月雨ジョージ

2012年11月3日土曜日

微小循環基礎講座 対策編② 【血管内皮細胞】


がんや寿命にも関係する血管内皮細胞

微小循環基礎講座③で、血管内皮細胞は血流を正常にし、血管の健康状態を維持するのに重要と解説しました。この血管内皮細胞は、がんの転移にも関わっています。
 国立循環器病研究センターと大阪大のチームが、心臓から分泌されるホルモンにがんの転移を抑える働きがあることを突き止めました。心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)(同センター研究所松尾壽之名誉所長らが1984年に発見)というホルモンで、心不全の治療薬に使われています。がん細胞は血液を通じて移動し、血管内皮に潜り込んで転移します。がん患者は抗がん剤や放射線による治療で血管内皮が傷つき、がん細胞が潜り込みやすいのです。再発の多くは、手術時に血中にがん細胞が流れ出すことによる転移が原因です。チームはANPが血管内皮を保護してがん細胞をブロックすると見ており、「様々な種類のがんの転移を抑制できる可能性が高い。来年中に臨床研究を始めたい」としています。日本癌(がん)治療学会(横浜市)で26日に発表しました。
 そして、血管内皮細胞は寿命にも影響します。東北大学・片桐秀樹教授(代謝学)は、高血圧などで血管が傷つくと、炎症を起こし動脈硬化の要因となるため、血管の最も内側にある血管内皮細胞で炎症反応が出ないような遺伝子操作を行い平均寿命が通常より約3割長いアンチエイジングマウスを作ることに成功した、と米医学誌「サーキュレーション」に発表しています。通常は寿命が約1年9か月のマウスに対し、遺伝子操作で作ったマウス約20匹を比較したところ、平均寿命が約2年3か月と3割程度延び、最長で約2年8か月生きたものもいました。筋肉内の血流と活動量も上昇しました。また、食事制限で寿命が延びると言われていますが、食事制限はしませんでした(食べ過ぎは問題がありますが)。片桐教授は「血管内皮細胞の炎症だけを抑える新薬を作れば、直接人間の長寿につながる可能性がある」としています。
 がんの転移や人の寿命にも影響する血管内皮細胞の機能を正常に維持していくことが、健康を回復する「康復医学」の要になります。


康復医学の基本 微小循環基礎講座

■〔対策編〕②

 血管内皮細胞は、血球細胞同様、血管内で血液と直接接触しているので、血液内のいろいろな変化を鋭敏に察知して、血流の状態を調節するなど、多機能で特に重要な細胞ですものです。

一酸化窒素を産生する血管内皮細胞

血管内皮細胞から産生される一酸化窒素(NO)は、血管拡張作用(降圧作用)、血小板凝集抑制作用(抗動脈硬化作用)、単球の白血球が血管内皮細胞に接着したり内皮細胞下組織に浸潤するのを防ぐ作用、血管平滑筋細胞の増殖を抑制する作用、などがあります。血管内皮細胞の障害は、生活習慣・ストレスや肥満・タバコなどが原因で、高脂血症→動脈硬化→様々な疾患に至ります。



霊芝は、血漿一酸化窒素の産生を促進します。


 一酸化窒素の産生促進作用を有する化合物の開発は、動脈硬化の薬として非常に注目されています。上記のデータのように、霊芝には一酸化窒素の産生促進作用があります。一酸化窒素産生の低下は、血管の拡張作用低下のみならず血小板の凝集にも影響し、血流低下の原因になります。
 微小循環の血流改善のベースになるのが、生薬類似食品の「霊芝」です。康復医学学会も推奨しています。
※資料抜粋:「HM真菌エビデンス~自然食菌の同定から臨床まで~」(微小循環研究所刊)


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2012年11月1日木曜日

微小循環基礎講座 対策編①【高血圧と血流の低下】


高血圧は認知症にも影響する!

高血圧とは、血圧が正常範囲を超えて高く維持されている状態をいいます。高血圧自体の自覚症状は何もないことが多いのですが、様々な疾患に影響を及ぼす生活習慣病のひとつでもあります。肥満、高脂血症、糖尿病との合併は、虚血性心疾患、脳卒中、腎不全などの発症リスクとなる点で、臨床的な意義は大きいとされています。

高血圧は認知症にも関わり、高血圧を改善する降圧薬による治療が認知症の予防にもつながることが、国内外の研究で分かってきています。
 認知症は、脳卒中などを原因とする脳血管性認知症と、アルツハイマー型認知症に大別されますが、欧州での研究では、降圧薬による高血圧治療がアルツハイマー型認知症にも有効なことを確認した点で注目されたのです。
 福岡市の九州医療センターの土橋卓也内科医長(高血圧内科)は、福岡県で40年以上にわたり健診を続けた疫学調査でも、「認知症を引き起こす危険因子の一つとして高血圧が認められている」といいます。そして、「高血圧を防ぐ健康的な生活習慣の実践は、認知症の予防にもなる」と呼び掛けています。

 脳血管性認知症の原因となる高血圧の大半は微小循環の血流が低下して起こる本態性高血圧(高血圧症患者の90%以上)です。

 今号より微小循環基礎講座では、その対策編として「微小循環血流の改善」の特集をお送りします。


康復医学の基本  微小循環基礎講座 

■〔対策編〕①

微小循環の血流が低下すると、さまざまな自覚症状が表われます。しかし、初期の段階では症状自体が軽い場合が多いため見過ごされてしまいます。
 血流の低下を放置しておくと、年齢を問わず循環器系をはじめとする疾患につながります。

霊芝と赤血球の変形能

毛細血管は赤血球より細いため、赤血球は自らが変形して通っていきます。しかし、ストレスや生活習慣などの影響で、赤血球は変形しにくく(弾力性が低下)なります。
 霊芝を投与すると、赤血球膜の流動性が増加することによって赤血球の形態を保つことができ、赤血球の寿命と機能性(変形性)の向上につながります。
注:IF値は対照組に比べ小さいほど赤血球の変形性が高いことを示している。
  P値は統計学的に有意であるという意味

霊芝と赤血球の凝集

血液や赤血球の膜に粘度が生じた場合、赤血球どうしが粘着し連銭状態になります。霊芝を投与することで、赤血球の凝集性は投与前及び対照組より明らかに低下していることが見出されました。
注:低ずり応力は赤血球の凝集性、高ずり応力は赤血球の変形性を表す。


 微小循環の血流低下は、疾患だけではなく傷病後の健康回復にも影響を与えます。健康回復を医学する康復医学学会では、健康のポイントに「血流」「睡眠」「体力」を提唱しています。そして、微小循環の血流改善のベースになり、推奨するのが生薬類似食品の「霊芝」なのです。
※資料抜粋:『HM真菌エビデンス~自然食菌の同定から臨床まで~』(微小循環研究所刊)


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2012年10月27日土曜日

微小循環基礎講座⑤ 女性は「微小循環狭心症」に注意


見過ごされやすい狭心症

女性の8割は更年期に心や体の変化を感じると言われています。40歳代の半ばから50歳代半ばの閉経前後の時期に、卵巣機能の低下に伴い女性ホルモンが急激に減少して、ほてり、のぼせ、逆に冷え、頭痛やめまい、耳鳴り、などの症状が出てきます。さらに、不安感やイライラ、憂鬱感の増幅、不眠など、精神的な症状が現れる方もいます。
 女性なら誰しも知っていると思いますが、更年期障害の原因は女性ホルモンが急激に減少することです。胸が痛くなる疲れやすくなるなどの症状が出ることもあります。これは、女性に特有の症状で、「微小血管狭心症」です。この年代の女性の10~20%が、微小血管狭心症が原因の胸痛を経験しているとみられ、早い人では30歳代で自覚症状が出始める人もいます。
 微小血管狭心症は米国立衛生研究所(NIH)のグループによって提唱されました。この微小血管狭心症の特徴としては、胸痛は安静時や就寝時に起こり痛みは数分で消失することが多いのですが、特効薬であるニトログリセリンも、継続する痛みに対して効きにくいのです。また、心臓の異常は心電図でも表れることがなく、冠状動脈にも異常はありません
 胸痛発作の引き金(誘因)となるのが、過労ストレス睡眠不足などです。これまでは、微小血管狭心症は大きな血管が詰まるわけではないので、本人が胸痛に苦しんでいるのに「異常なし」「気のせい」などと見逃されてきたケースも多かったようです。しかし、自覚症状を訴えた女性の中には心筋梗塞に至り死亡する例もあります。
 最近の研究では、胸痛の自覚症状がある人の5~6%が2年以内に虚血性心疾患で入院しているという報告もあります。男性に多い狭心症は、心臓表面の太い冠動脈の血管が動脈硬化で詰まって起こるのが特徴ですが、その太い血管が突然詰まることはありません。女性のように微小循環の血流が先に滞ります。
 狭心症の自覚症状は、胃の周辺や、肩、背中などに痛みが出る場合もあり見過ごされていまいます。日頃からちょっとした自覚症状でも微小循環の血流をイメージしてケアすることが大切です。

康復医学の基本 微小循環基礎講座⑤

■血流低下の原因にもなる"血栓"

基礎講座③でもお伝えしましたが、血管の内側の血管内皮細胞は、機能の低下や動脈硬化などによって血管壁にコレステロールがたまって、血管内が狭くなります。
 動脈硬化の部分が破れると内皮がはがれ落ち、血管がけがで傷ついたのと似たような状態になり血栓形成の原因になります。

ポイントは凝固因子フィブリン!

○健康な血管は、血管内皮に覆われ、血栓はできない
○血管内皮に傷がつくと、血小板が集まってくる
○血管の傷ついた部分に血小板がくっつき塊を作る
○凝固因子が働き、「フィブリン」という糊が血小板をからめて、強くし、出血を止める(下図の糸くずの様なものがフィブリン)

凝固因子は数多くあり、お互いに複雑に反応、制御しあい最終的にフィブリンをつくります。この凝固因子の反応は、血小板膜や血小板がちぎれてできた断片で加速され、血の塊を強固にし、出血を止めます。この血の塊が血中に漂うのが血栓です。処方されることが多い抗凝固薬は、凝固系の働きを抑え血液を固まりにくくするので、少しでも量が多すぎると、出血傾向になったりします。また、ビタミンKの働きを抑えて血液を固まりにくくする効果を出すので、日常の食生活でビタミンKを摂ると中和してしまって薬が効かなくなる恐れがあるので、ビタミンKを含む食品にも気を付けないといけません。
 「霊芝」は、血小板血栓及びフィブリン血栓の形成に対して抑制効果があります。そして、生薬類似食品である霊芝は、抗凝固薬のように摂取量の違いで出血傾向になることはなく、日常の食事の心配もありません。血管内皮細胞も強化させるので理想的な生薬です。康復医学学会も推奨しています。


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2012年10月24日水曜日

微小循環基礎講座④ 脳血管障害/酸素を運ぶ赤血球


脳血管障害と微小循環

脳は生命活動を維持し、さらに言語機能の制御や精神活動をも行っています。多くの重要な働きを持つ脳の疾患は、人が生きていくうえで致命的となりかねません。
 1951年から1980年まで、日本人の死因のトップは脳卒中でした。その後、食生活の改善や医療の進歩により死亡率は減少傾向にありますが、依然として日本人の死因の3位以内の地位を保っています。

 血液は脳のエネルギー源となるブドウ糖と酸素を運んでいます。その血液を大量に必要とする器官が脳であり、心臓から送られる全血液の20%が流れていきます。脳血管障害は、頭蓋内で出血する「頭蓋内出血」(部位によって「脳出血」と「くも膜下出血」があります)と脳動脈のつまる「脳梗塞」(脳血栓と脳塞栓)に大別されます。

 脳出血の主な原因は、高血圧、加齢、ストレス、栄養不足などで、脳内の血管に障害がおこり破裂します。戦前の“タンパク源が少なく塩分の多い食生活”下においては、脳血管障害の原因の3分の2は脳出血でした。年齢は40歳以降、特に60歳以上の高齢者に多く、時間帯は夜間より朝夕に、また季節はにおきやすい傾向があります。飲酒や過労、緊張や興奮のストレス、食事や入浴などで血圧が急に上がったときに脳出血は起こります。

 脳梗塞には「脳血栓」と「脳塞栓」があります。脳血栓は動脈硬化などで細くなった動脈に血栓が少しずつできて血流を止めてしまいます。脳血栓は糖尿病、高脂血症、脳動脈硬化などの病気が引き金になります。また、急激な血圧低下や、脱水で血液濃度が高くなることにより血流の停滞がおこり発症することもあります。ウォーキングやスポーツなどに夢中になって水分の補給を怠り、脱水状態に陥り脳血栓で倒れる場合もあります。また、夜間の睡眠中に血圧が低下することによっても起こりやすい傾向があり、60歳以上に多いのが特徴です。
 脳塞栓は、主に心臓にできた血栓が流れていって脳動脈をつまらせるものです。心疾患が引き金となり、過労や飲酒、ストレスなどが原因となって、突然、発作にみまわれます。年齢を問わず起きることが多く、若い人にも多いのが現状です。
 突然の発作に見舞われる前兆は、必ず微小循環に表れます。大量の血液を必要とする脳は、ちょっとした微小循環の変化で“頭痛”“めまい”など自覚症状として表れますので見過ごすことのないよう、注意が必要です。


康復医学の基本 微小循環基礎講座④

■細胞に必須な酸素を送る赤血球

身体の全身に張り巡らされている血管の末端(動脈から静脈に移る部分)、「微小循環」で、血液は初めて仕事をします。身体の細胞に必要な栄養素とその栄養素を有効活用するために必須な酸素を供給します。酸素は、1回の呼吸でおよそ17~20%しか体内で使われず、残りの酸素はそのまま血液が持ち帰って呼吸と共に吐出されています。

運んだ酸素を効率よく供給する!

酸素は、肺で赤血球のヘモグロビンと結合して血流に乗って微小循環内の毛細血管から細胞に供給されます。しかし、微血管の弾力性低下や血球の凝集、変形能の低下によって毛細血管の血流が低下すると、細胞への酸素の供給量が減少してしまいます。さらにこの微小循環の毛細血管のところで、酸素が赤血球から切り離されてなければ、細胞には供給されません。酸素を運ぶ赤血球が細胞へ酸素を供給するには、2,3-DPGという物質が必要になってきます。2,3-DPGは、酸素を赤血球のヘモグロビンから切り離す、いわば「酸素カッター」の役目をします。
 血液の流動性は、NO(一酸化窒素)の産生(微血管内皮の柔軟性)、赤血球の変形能、2.3-DPG。この3大要因によって酸素を体の隅々まで供給し、効率的に細胞内に取り入れることができるのです。

呼吸酸素を有効利用する!

ストレスや生活習慣などの影響で、微小循環の血流は低下します。この体内の細胞レベルで微妙な酸素濃度の変化でも、身体に様々な影響を及ぼすのです。
 人為的に酸素を補給(酸素濃度の高い水、酸素カプセル等)するのではなく、日常の呼吸酸素を有効利用するのが基本です。
 酸素の供給量を上げる2,3-DPGの産生促進に期待できるのが、「霊芝」です。このあたりのことは、後日「対策編」で詳しくお伝えしようと思います。。


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光・愛・感謝 五月雨ジョージ

2012年10月20日土曜日

微小循環基礎講座③  高血圧と血管内皮細胞


秋本番と本態性高血圧

残暑厳しい今年の夏でしたが、10月に入り一気に気温が下がって秋らしくなりました。
 この温度変化が、実は身体の血管にダメージを与えやすくしているのです。寒くなると、時には重篤な事態も起こりやすいので注意が必要です。
 その重篤な事態の一つが「大動脈瘤破裂」です。大動脈は、心臓から血液を全身に送り出す太い血管で、動脈硬化等で血管壁が弱くなると、壁の一部がコブ状に膨らみます。これが「大動脈瘤」です。寒くなると、このコブが破裂しやすくなります。「気温の急激な低下によって血管が収縮すると、血管の壁に圧力がかかりやすくなります。高血圧の人はなおさらです。その結果、大動脈瘤破裂、あるいは、血管の壁が縦に裂けてそこへ血流が流れ込む『大動脈瘤解離(かいり)にもなりやすい。寒くなってくると、患者さんは増えるのです」(東京医科大学病院心臓血管外科の荻野教授)。

 このような重篤な病気に直面しなくとも、高血圧は様々な生活習慣病へ進行する原因のひとつでもあります。血圧は、秋のこの時期から冬にかけて上昇傾向にありますが、大半の人が何も疾患がないのに「ただ血圧が高いだけ」という本態性高血圧です。この本態性高血圧は、高血圧患者の約95%を占めています。高血圧が持続すると、血管はその圧に負けまいとして壁の厚さを増してきます。また、血管の内腔をおおっている血管内皮細胞は直接高い圧にさらされるため、小さな傷ができたり、うまく機能しなくなったりします。すると、血管壁に慢性的な炎症反応が生じ、血栓ができ易くなったり、白血球やコレステロールなどが血管の内側の層に集まってきて動脈硬化が進んでしまいます。

 高血圧により、血管壁に過剰なストレスがかかることも、血管障害を促進する重要な要因と考えられています。こうした血管障害は、特に脳、心臓、腎臓の血管に起こりやすく、その結果、心臓病や脳卒中、腎不全などの合併症が引き起こされます。もちろん、これらの疾患が突然発症することはないのですが、身体の血管の8%を占める毛細血管を含む微小循環領域では、相当前から血流の障害が起っています。
 原因がわからないとされる本態性高血圧も、微小循環での血流が悪くなるのが要因の一つなのです。

 この微小循環の血圧は、普段使われている血圧計では測れないので、事前の予測が難しいのです。原因不明の本態性高血圧の治療は、この微小循環の血流改善が本質なのですが‥‥。


康復医学の基本 微小循環基礎講座③

■毛細血管と血管内皮細胞

心臓から血液が送り出されている動脈と、心臓へと戻ってくる静脈。この動脈と静脈はつながっていると思いますか? もちろん閉鎖循環です。しかし、正確に言うとつながっていません。その動脈と静脈の間にあるのが微小循環です。
 全身に張り巡らされている血管は、心臓の動脈から始まり腹部まで伸びている最も太い「大動脈」、頭部や手足などへ血液を運ぶ「中動脈」、各内臓へ血液を運ぶ中動脈、そしてそこから小動脈、細動脈へと続き、さらに微小循環へつながります。この各組織の微小循環で、運ばれてきた酸素や栄養素や薬の成分が放出され、余分な老廃物や二酸化炭素を持ち帰ります。そこから静脈へとつながって、血液は心臓へと戻ります。

 動脈は厚い三層からなる血管で、外側を取り巻く結合組織からなる「外膜」、平滑筋、内弾性膜で構成される「中膜」、内皮細胞からなる「内膜」でできています。しかし、毛細血管は内皮細胞の一層しかありません。この一層の毛細血管の血管壁を通して、組織・細胞へ栄養素と酸素を送り、老廃物と二酸化炭素の回収を行っています。血液は、この微小循環内にある毛細血管で一番大切な働きをしますので、ここでの血流が最も大切なのです。

重要なのは血管内皮機能!

血管内皮細胞は、血管の健康状態を維持するのに非常に重要な役割を果たしています。血管内皮細胞は一酸化窒素(NO)など数多くの血管作動性物質(血管に働きかける因子)を放出しており、血管壁の収縮・弛緩をはじめ、血管壁への炎症細胞、血管透過性、凝固・線溶系の調節などを行っています。

 この血管内皮機能は、ストレスや高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満などの様々な生活習慣病によりその機能が低下します。この低下した血管内皮機能を改善することが、微小循環内の毛細血管の血流改善にもつながり、疾患の治癒、傷病後の健康回復、QOL(生活の質)の改善などにつながるのです。


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2012年10月18日木曜日

微小循環基礎講座② 「血管事故」危険度はMAX81倍!


危険度は3×3×3×3=81倍!

今回の前半は、東京医科大学八王子医療センターの病院長・高沢謙二医師の言葉(「」を中心にお伝えします。

「突然死につながる心筋梗塞や脳卒中といった病気について、誤った情報を信じている人が非常に多い。心筋梗塞になった患者さんは『まさか、自分がなると思ってもいなかった』と言う方がほとんどなのですが、それは正しい知識を持っていなかったからです」。
 「そもそも、心筋梗塞は『心臓が悪くて起る病気』と思っている人が多いのですが、それは間違い。心筋梗塞は心臓に血液を届ける血管が詰まって、心臓が壊死してしまう病気。脳卒中も同様に、脳に血液を送る血管が原因の病気です。つまり、突然死は『血管の事故』によって引き起こされるのです」。

 そして、突然死のリスクは体型や体重に関係がありません。「じつは、痩せている人ほど危ないこともあるんです。食事で脂肪分を摂取しても、皮下脂肪に溜まらないということは、血管の中にコレステロールが溜まっている可能性があるのです。痩せていて血中コレステロールの数値が高い人は一番危険です。さらにタバコを吸っているなら、いつ心筋梗塞になってもおかしくありません」。

 そもそも日本人においては、肥満と心筋梗塞や脳卒中との直接的な関係ははっきりしていません。血管は、どんなに硬くなって内壁にコレステロールが溜まっても、心筋梗塞や脳卒中が起きるまで自覚症状が現れないので“痩せているから大丈夫”と油断して、生活習慣を見直さないことも突然死に至る要因の一つです。

 また、心筋梗塞は心臓の血管が狭くなる狭心症が悪化して起ると思っている人が多いようですが、「心筋梗塞の約6割は、血管の詰まり具合が25%未満、つまり血液が75%は流れている状態で起こるのです。このことは、心臓の専門家であってもまだ知らない人がいます。狭心症の検査をして『大丈夫』といわれても、その当日や翌日に心筋梗塞で倒れて救急車で運ばれる、といった人はじつは非常に多いんです」。

 これら血管の事故の最も大きな原因は、①高血圧 ②脂質代謝異常 ③糖尿病 ④喫煙の4つです。「高血圧があると、突然死のリスクは普通の人の3倍、脂質代謝異常が加わると3×3=9倍。さらに糖尿病が加わると危険度は3×3×3=27倍、そこに喫煙習慣があると3×3×3×3=81倍という高リスクになると思って、注意しなければなりません」。
 血管の事故といっても突然太い血管が狭窄することはなく、末端の細い血管の微小循環の血流から変異していくので、微小循環領域の環境維持改善が特に重要なのです。

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康復医学の基本 微小循環基礎講座②

末端の微小循環での血液は、酸素や栄養素の供給、二酸化炭素や老廃物の回収など、健康を維持するために働いています。この微小循環における血流低下の改善は、傷病後の健康を回復し、再発・合併症の予防する学問“康復医学”の重要なテーマです。

■微小循環血流低下の原因

毛細血管の収縮

体に強いストレスがかかると、自律神経の交感神経が活発に働き、副腎髄質から大量のアドレナリンとノルアドレナリンが分泌されます。そして毛細血管の出入口付近にある平滑筋に影響し、毛細血管が収縮し血球が入りづらくなります。また、中性脂肪や酸化ストレスが増加すると、血管内皮細胞が阻害され、NO(一酸化窒素)の産生が低下し伸縮しにくい血管になります。血球の直径よりも細い毛細血管は非常に繊細です。血流は血液の質も大切ですが、この毛細血管のしなやかさがとても重要になります。


赤血球の凝集

血液の40~45%は赤血球です。生活習慣や加齢、ストレス、疾患などが原因で赤血球表面の粘度が増加すると、赤血球どうしがくっつく「連銭状態」(左図上)になり、微小循環の血流が低下する原因になります。


赤血球の変形能

赤血球が酸素の供給を行う微小循環の毛細血管は、その径が赤血球の直径より細いため、毛細血管がNO(一酸化窒素)で拡張し、赤血球は自らが変形(右図下)して通っていきます。しかし、微小循環のNO産生の低下や、赤血球の変形(弾力性)の低下が起きると、赤血球自体が毛細血管に入りにくくなり、血液の機能も低下してしまいします。


★微小循環では、血管壁からのNO産生、毛細血管の本数、毛細血管の入口・出口の口径、血液の流速、赤血球の変形能、凝集など、すべての条件が整った状態が最高の血流とされています。“最高の血流”は、健康維持はもちろんのこと、傷病後の健康回復を目的とする康復医学の基本条件となっています。


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光・愛・感謝 五月雨ジョージ