尿路結石 女性も注意!
千葉県に住む70代前半の女性は、頻尿と時折強まる下腹部の痛みに悩んでいた。かかりつけ医で「膀胱炎」と診断され、抗生物質を飲んだが治らない。紹介された病院での検査で、腎臓と尿管に結石が見つかり、内視鏡手術で取り除いた――。医師は、「歩けないほどの激痛で救急搬送される人もいれば、この女性のように不快な症状が長引く人、さらに全く気付かない人もいる。結石の大きさやできる場所により、自覚症状は様々」と話します。尿路結石は先進国、発展途上国を問わず増えています。最大の原因は肥満の増加と考えられ、糖尿病や高血圧、メタボリック症候群とも関連します。
日本では1965年以来、10年ごとに全国規模で尿路結石の実態調査が行われています。上部尿路にできる結石は尿路結石全体の95%。この上部尿路結石の発症率は前回調査まで一貫して増えていましたが、15年の発症率は男性は10万人当たり150.6、女性は63.3で、ともに前回よりわずかに減少。メタボに対する日本人の意識向上などの理由が考えられます。
一方、発症のピークが男性は40代⇒50代、女性は50代⇒60代と高齢化しています。専門家は「男性50代、女性60代は肥満が増える年代。米国の研究によれば、肥満による結石のリスクは、女性の方が大きい。特に女性は適正体重の維持を心がけて」と指摘します。
結石の再発率は40~50%と高いので、一度尿路結石ができた人は食事指導が大切です。代表的な尿路結石の成分はシュウ酸カルシウム。予防には、尿中にシュウ酸が増えないようにすることが重要です。シュウ酸はホウレンソウやブロッコリーなどの野菜やコーヒー、紅茶、そのほかナッツ類に多く含まれます。かつて、カルシウムは結石の主要因と考えられましたが、腸内でシュウ酸と結合し排泄を促すことが研究で明らかになり、現在はシュウ酸が多い食品と一緒に摂るよう勧められます。女性は年齢とともに骨量が減り、骨粗しょう症のリスクが高まるので、カルシウムはその予防の意味でも大切なのです。また、水分を1日2リットル以上摂取して尿量を増やし、尿の濃度が高まらないようにすることも大切です。
野菜は栄養面のメリットもあるので、やめることはありません。ゆでてシュウ酸を減らしたホウレンソウのおひたしにカルシウムが多いかつお節やしらす干しを添える、コーヒーや紅茶には低脂肪のミルクを入れるなど、ちょっとした工夫が必要です。そうすれば、結石のリスクを減らしつつ、豊かな食事を楽しむことができます。
(出典:静岡新聞 夕刊)
■尿路結石症とメタボ
最近の研究から尿路結石が形成される機序が動脈硬化の石灰化とよく似ていることがわかり、尿路結石はメタボリックシンドロームの危険因子としても注目されています。
尿路結石も生活習慣病! |
メタボの本態とされるインスリン抵抗性は、腎尿細管におけるアンモニア産生障害から尿pHの低下をきたすことが明らかにされており、このため尿酸結石が形成されやすくなります。また、メタボ患者では尿中シュウ酸およびカルシウム排泄量の増加や、クエン酸排泄量の低下がみられることから、シュウ酸カルシウム結石も形成されやすくなります。
今日では,尿路結石症はメタボの一疾患と考えられるようになり、また、比較的若年者に多い尿路結石症の発症はメタボの警鐘ともとらえることができるため、泌尿器科医と内科医が連携してこれらの予防に取り組むことが求められています。
食べ過ぎ、飲み過ぎ、夜型の食生活は、尿路結石の要因でもあります。「結石は夜、作られる!」ということを意識して、結石の芽ができないように次のことに気をつけましょう。
寝る前の飲食は控える
就寝中、体内では食物が消化吸収され、老廃物が出ますが、水分補給がないため朝は濃い尿が出ます。これは老廃物が溶け過ぎ、結石ができやすい尿。寝る前の食事は尿を濃くして尿路結石のリスクを高めます。夕食は就寝の4時間前、少なくとも2時間前に済ませましょう。再発しやすい人は、意識的に飲水量を増やすことです。
栄養のバランスよく、お酒はほどほどに
肉・魚の動物性たんぱく質には、チッ素や硫黄が含まれています。これが分解されると酸ができますが、それを排泄できるのは腎臓だけ。腎臓から酸を排泄すると尿は酸性になり尿酸結石やシュウ酸カルシウム結石ができやすくなります。尿はお酒を飲んだときも酸性に傾きます。食事やつまみは肉や魚に偏らず、野菜を含めてバランスよく、お酒はほどほどの量にしましょう。
塩分の取り過ぎに注意
尿中にナトリウムが排泄されるとき、カルシウムも一緒に排泄されます。塩分の摂取量が多いと尿中のカルシウムの量が増え、結石ができる危険因子の一つになります。塩分は控えめを心がけましょう。
いつもありがとうございます。
愛・感謝 村雨カレン