魚を食べる人ほど認知症リスク少ない?
魚をよく食べる人ほど認知症を発症するリスクが低いことが、日本人高齢者を対象とした研究で明らかになりました(British Journal of Nutrition誌190903電子版)。日本は魚の摂取量が多い国の1つです。魚には、EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)など、認知機能の低下予防に役立つ可能性のある栄養素や、ビタミンB12やビタミンEのような、神経保護作用を持つ栄養素が含まれています。ゆえに日常的な魚の摂取は、認知症発症リスクの低下をもたらす可能性があります。
これまでに、日本食や地中海食などが認知症予防に役立つことを示唆する研究結果がいくつか報告されています。これらの食事法の特徴の1つは、魚を豊富に食べることであるため、日常的な魚の摂取が認知症リスクの低下に関係するのでは、と言われてきました。しかし、魚の摂取と認知症発症の関係を調べた研究はこれまで5件しか行われておらず、それらは一貫した結果を示せませんでした。そこで東北大学の研究チームは、65歳以上の日本人を対象に、魚の摂取量とその後の認知症発症の関係を調べることにしました。
対象は、宮城県大崎市に住む65歳以上の市民のうち条件を満たした1万3102人です。2006年12月に最初の調査の一環として食物摂取頻度調査を行い、魚とその他の食品の摂取状況を調査。魚の摂取については、①刺身などの生魚と加熱調理した魚、②すり身の魚について尋ねました。魚も含む全ての食品について、食べる頻度を以下の中から選択させました:ほとんど食べない/月1~2回/週1~2回/週3~4回/ほぼ毎日。
①と②を合わせて、1日当たりの魚の摂取量を推定し、その値に基づき対象者を、最も少ない(Q1群)/やや少ない(Q2群)/やや多い(Q3群)/最も多い(Q4群)の4群に分けました。各群の1日当たりの魚摂取量の平均は、20.4g、44.3g、57.7g、96.9gでした。
5.7年間の追跡期間中に、1118人(8.5%)が認知症を発症していました。認知症発症に影響を与える可能性のある、年齢、性別、BMI(体格指数)、病歴、学歴、喫煙習慣、飲酒習慣、1日の歩行時間、精神的苦痛の程度、認知機能スコア、睡眠時間、緑黄色野菜と果物の摂取量を考慮して分析したところ、魚の摂取量が最も少ないQ1群に比べ、Q2群では、認知症発症リスクが10%低い傾向が見られました。Q3群では15%、Q4群では16%のリスク低下が認められ、いずれもQ1群との間に統計学的有意差が認められました。全体として、魚の摂取量が多いほど認知症リスクは低いことも示唆されました。
こうした関係は、追跡開始から2年以内という早い段階で認知症と診断された患者や、研究に参加した時点で認知機能が低下していた患者を除外しても、変化しませんでした。
今回の結果は、魚の摂取と認知症リスクの間に逆相関関係があることを示し、日常的な魚の摂取に認知症予防効果があることを示唆しました。
(出典:https://gooday.nikkei.co.jp/)
■DHAとEPAが脳にいい理由
認知症予防の一環として青魚摂取を推奨する動きは、自治体にも出ています。香川県の認知症高齢者支援サイトには、「EPA、DHAがしっかりとれる ちゃちゃっと作る魚のおかず」というレシピが並びます。もともと魚をよく食べる地域ですが、瀬戸内海でよく捕れるハマチやサワラもメニューに入れ、1日1食魚を食べることをすすめています。なぜ、DHAとEPAが脳にいいのでしょうか。実は、脳神経組織はその約50%を脂質が占めています。DHAは体内では主に脳細胞膜を形成するリン脂質の成分になり、脳や網膜など神経組織の発育と維持に欠かせません。脳内のDHA量が低下すると、認知機能低下の要因になることが、複数の研究からわかっています。
EPAは1960年代にその働きが発見されて以来、血液の性状を健康に保ち、特に血栓ができにくくなり、高脂血症を予防する結果、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞を予防するという働きがあるということが世界中の医学者によって研究され続けてきました。脳卒中などの脳血管障害は認知症の原因になるため、EPA摂取も認知症対策につながるのです。
国立長寿医療研究センターの研究(右図参照)では、60~79歳の男性232人、女性198人を対象に、10年後の認知機能低下リスクがどう変わるかを検証しました。そして、血液中のDHA濃度が「中間」または「高い」人は、「低い」人に比べて、10年後の認知機能低下リスクが0.11倍または0.17倍低いことがわかりました。
海外の研究でも同様の報告は複数あります。65歳以上を対象に7年間追跡調査した「Chicago Health and Aging Project」では、魚の摂取でアルツハイマー型認知症のリスクが60%低下。「Rotterdam Study」では、同じく魚の摂取でアルツハイマー型認知症リスクが70%低下しました。
EPAやDHAはともに、ヒトの体内ではほとんど作ることができない必須脂肪酸の一種で、魚の油に含まれ、イワシやサバなど青魚など脂の乗った魚に豊富に含まれています。
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康復医学学会の森昌夫理事長が長年の研究成果として開発した「認知機能障害改善組成物」(特許第6382281号)は、食用アマニ油、霊芝エキス、セレン含有ビール酵母、サバペプタイド、霊芝炭末のほか、DHA・EPA含有精製魚油を加え、認知症に特化したサプリメントとして商品化されています。
いつもありがとうございます。
愛・感謝 村雨カレン