2024年8月28日水曜日

脳動脈解離

 高すぎる枕は脳卒中につながる?

 国立循環器病研究センター(国循)は今年1月、脳卒中の原因の1つである「特発性椎骨動脈解離」は枕が高いほど発症割合も高く、より固い枕では関連が顕著であることを立証し、新たな疾患概念を提唱したことを発表しました(欧州の学術誌「European Stroke Journal」に掲載)

 脳卒中は、脳の血管が詰まったり破れたりすることで脳の一部の機能が失われ、身体の一部が麻痺するなどの症状が出る疾患です。通常は加齢によって、中には若年~中年期でも生活習慣病などによって起きるとされ、「2022年人口動態統計の概況」(厚生労働省)によれば、死因の第4位(脳血管疾患)となっています。

 特発性椎骨動脈解離は、脳卒中の原因の1つで、首の後ろの椎骨動脈が裂けてしまうことで脳卒中を引き起こします。患者の約18%に何らかの障害が残り、根本治療がなく、予防のための原因究明が求められていましたが、約2/3の患者では原因不明でした。

 研究チームは、起床時発症の患者の中に、極端に高い枕を使っている人がいることに着目し、「高い枕」と「特発性椎骨動脈解離」の関連について調査、検討したのです。

 調査の結果、高い枕の使用は症例群が対照群より多く、12cm以上の枕では34%対15%、15cm以上の枕では17%対1.9%で、高い枕の使用と特発性椎骨動脈解離の発症には関連が見られました。そして、枕が高ければ高いほど、特発性椎骨動脈解離の発症割合が高いことも示唆され、この関連は枕が硬いほど顕著で、柔らかい枕では緩和されていたそうです。

 研究では、高い枕の使用が特発性椎骨動脈解離の発症に関連があり、特発性椎骨動脈解離の約1割が高い枕の使用に起因し得ることが示されました。枕の使用は容易に修正可能であるため、予防につながり得る点において今回の成果は意義があるとしています。

 時代劇などでも見られますが、日本には「殿様枕」と呼ばれる高く硬い枕が17~19世紀に使われていました。髪型を維持するのに有効だったとされ、名前は"殿様"だが広く庶民の間にも流通していました。1800年代の複数の随筆には、「寿命三寸楽四寸(12cm程度の高い枕は髪型が崩れず楽だが9cm程度が早死にしなくて済む)」(右図)といった言説が流布していたという記載が残されており、当時の人々は、高い枕と脳卒中との隠れた関連性を認識していた可能性がありそうです。

 研究チームは、今回示された患者が特有の疾患像を有していることから、暫定的な疾患概念「殿様枕症候群(Shogun pillow syndrome)を提唱しています。枕の硬さや高さなどで、睡眠の質が変わることは周知のところですが、何気ない睡眠習慣が、脳卒中の重要危険因子になることが世に広く認識され、脳卒中で困る患者が少しでも減ることが期待されます。

(出典:https://news.mynavi.jp/)


■脳動脈解離(椎骨動脈乖離)

 脳動脈解離は、40~50代の男性に多くみられます。原因不明もありますが、外傷や首を過度に曲げた場合にも起こります。場合によっては、クモ膜下出血や脳梗塞のリスクとなるため、手術が必要になることもあります。

 脳動脈解離とは、脳動脈の壁にある三層のうち内側の膜が裂けることで発症する疾患です。血管壁内に血液が流入することで血管内腔が狭くなって血流が滞り脳梗塞を生じたり、血管壁が破綻してクモ膜下出血を生じたりします。

 脳の動脈の壁は内膜、中膜、外膜という構成になっています。この内膜と中膜のあいだに「内弾性板」という強固な組織があるのですが、加齢や高血圧で強い負荷を長く受けることで次第に弱くなり、断裂しやすくなると考えられています。

 脳動脈解離が発生する脳の部位は、内頚動脈系(主に大脳半球に血流を送る血管)と椎骨・脳底動脈系(主に小脳や脳幹に血流を送る血管)があります。

 脳動脈解離は発生部位は、アジア人は椎骨・脳底動脈系に多いことが知られています。

脳動脈解離が起こる原因

 脳動脈解離が起こる原因は、外傷性、進展性、特発性の3パターンに分けられます。

【外傷性】外傷性の脳動脈解離は外部からの衝撃で脳の血管が裂けて発症するタイプ。強い衝撃は明らかでなく、頚部の進展が生じた場合(ゴルフ、カイロプラクティックなど)でも生じることがある。

【進展性】内頚動脈や椎骨動脈が直接解離をきたしていなくても、その中枢側での解離(大動脈解離)が生じた場合、解離の進展によりその末梢血管である内頚動脈や椎骨動脈にまで進展することがある。

【特発性】脳動脈解離の原因が不明の場合。

脳動脈解離の症状、治療方法

 椎骨動脈解離の代表的な症状は、後頭部に突然の強い頭痛を感じることです。中年男性が突然の強い後頭部痛を訴える場合には、脳動脈解離が起きているケースがみられることがあります。動脈解離によりくも膜下出血を生じた場合は、強烈な頭痛もしくは意識障害を生じ、場合によっては死に至る可能性があります。

 脳動脈乖離の検査はMRI、MRA、3D-CTA、脳血管撮影などで行われ、解離の進行などに合わせ、抗血栓薬による投薬や、コイル塞栓術、開頭クリッピングの手術が行われます。

 脳動脈解離の前兆があったら、すぐに病院を受診して早期発見することが重要です。

 代表的な前兆としては、今までに経験したことがない頭痛や、50歳以降における初発の頭痛などが挙げられます。


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愛・感謝 村雨カレン

2024年8月22日木曜日

PM2.5と循環器疾患

 喫煙と循環器疾患

 たばこを吸うと、動脈硬化や血栓の形成が進むことから、虚血性心疾患を引き起こす原因となります。また、脳卒中(脳出血、くも膜出血、脳梗塞)のリスクを高めます。それだけでなく、喫煙は動脈硬化性疾患の早期発症や重症化にもつながることが報告されています。

 たばこの煙の血管系への影響 

 たばこの煙の中には、ニコチン、一酸化炭素(CO)、一酸化窒素(NO)、シアン化水素(HCN)、活性酸素(O2-)などの有害化学物質が含まれます。ニコチンは交感神経を刺激して、心拍数の増加、血圧上昇、心筋の収縮及び酸素需要の増加を引き起こします。同時に、血管収縮による血流量の低下、酸素や栄養の供給低下を招きます。COは、酸素供給能力の低下を招くとともに、血管内皮の組織障害や血栓形成の要因になります。活性酸素は炎症反応を誘発し、血管内皮の組織障害、脂質過酸化、インスリン抵抗性、血小板凝集などを通じて、動脈硬化や血栓の形成を引き起こします。

【虚血性心疾患】:虚血性心疾患には、狭心症や心筋梗塞があります。喫煙によって動脈の炎症や収縮が引き起こされ、動脈硬化や血栓の形成が進みます。また、血小板の凝集も血栓の形成につながります。これらの機序(メカニズム)の相互関連によって、虚血性心疾患を発症します。研究から、喫煙が虚血性心疾患の発症、および死亡リスクの増加は明らかです。また、喫煙本数を減らしたり、低タール・低ニコチンたばこへ切り替えても、虚血性心疾患のリスク低下にはつながらないとの結論が示されています(米国の報告書より)。

【脳卒中】:喫煙による脳の動脈の動脈硬化や血栓の形成、炎症反応により、脳梗塞やくも膜下出血の発症、および死亡のリスクが高まります。

【その他喫煙によって引き起こされる循環器疾患】:喫煙によって、末梢の動脈硬化症、主に閉塞性動脈硬化症や頸動脈硬化症のリスクが高まります。さらに、腹部大動脈瘤の破裂にも影響していることが明らかになっています。

 受動喫煙と循環器疾患 

 たばこの有害化学物質は、副流煙と喫煙者が吐き出した呼出煙とが混じりあった「環境たばこ煙」の中にも含まれます。そのため、喫煙者本人だけでなく、周りの人の健康へも悪影響を及ぼします。たばこ煙に晒された非喫煙者も、喫煙者本人と同様の機序で虚血性心疾患、脳卒中などのリスクが高まります。受動喫煙と、虚血性心疾患や脳卒中との関連には、因果関係の推定に十分な証拠がある(レベル1)と判断されています。

 加熱式たばこと循環器疾患 

 加熱式たばこは、一酸化炭素など他の有害化学物質については紙巻たばこよりも少ないという報告はあるものの、一方で、紙巻たばこには含まれない有害化学物質や、紙巻たばこよりも多く含む物質があるという指摘もあります。世界保健機構(WHO)の報告によると、加熱式たばこが紙巻たばこと類似した心血管毒性を有することが示唆されています。

(出典:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/)


■PM2.5と循環器疾患の発生・増悪

 日本国内では大気汚染物質のうち、二酸化硫黄、一酸化炭素、二酸化窒素、光化学オキシダント、浮遊粒子状物質、微小粒子状物質について大気環境基準が定められています。70年代に環境基準が設定され、ガス状汚染物質や浮遊粒子状物質の濃度は大きく減少しました。

 一方、粒径が2.5μm以下のPM2.5は粗大粒子よりも肺の奥深くに沈着することからその健康影響が懸念され、09年9月に環境基準が設定されました。PM2.5は中国からの越境汚染が話題になりますが、国内でも喫煙可能な室内は、北京市の最悪時の濃度と変わらないことは未だにあまり報道されていません。欧米を中心に循環器疾患に対する影響の知見は多いのですが、日本国内での疫学知見は少なく、最近ようやく認識されてきたという状況です。

 動物実験や毒性学的研究により、呼吸により肺に吸入されたPMから循環器疾患の発症や既存の循環器疾患の増悪に至るまでには以下の3経路が考えられています。

(1)肺組織での酸化ストレスと炎症を介する経路 

(2)肺の知覚神経終末や受容体を介する経路 

(3)PMやその成分が直接血管内へ移行する経路

 PMへの曝露により,肺胞洗浄液や血液中の炎症性サイトカインが増加することが報告されています。肺局所で放出された炎症誘発物質(サイトカインなど)や生理活性物質が全身循環に広がり、血管系や凝固系へ影響を及ぼす可能性があります。これまでの多くの動物実験より、PM曝露による肺の炎症の程度が、全身のサイトカインレベルや血管の機能不全と相関することも観察されています。このような炎症を介して、動脈硬化の進展やプラークの脆弱化をきたし、最終的には循環器疾患の発症に関わると考えられています。

 一方ラットへのPM曝露により心拍変動の減少がみられ、ヒトへの曝露実験でも同様の変化が観察されました。これはPM曝露による急性の反応であり、自律神経のアンバランスを介して不整脈を起こしやすくし、血管収縮や内皮機能不全をきたすと考えられています。

吸い込まれたPM2.5の行方

●気管、気管支に達したPM2.5

 気道の表面(上皮)の粘液に溶けやすい成分は、 細胞から血液中に吸収されます。不溶性粒子は、食道に飲み込まれるか、痰として吐き出されます。

●肺胞に達したPM2.5(右図)

 不溶性粒子の一部は肺胞マクロファージに食べられ、その後、マクロファージが気管支末端まで移動します。また、不溶性粒子の一部は、そのまま肺組織に沈着します。そして、溶けやすい成分は、血液中に吸収されて全身を巡ることになります。


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愛・感謝 村雨カレン

2024年8月7日水曜日

糖質

 夏の食事 ⇒ 秋には怖い現実が

 夏はのど越しが良いめん類を食べる機会が増えます。単品で食べがちなめん類は、糖質過多になり、他の栄養素が不足するため、注意が必要です。めん類を食べるときには、意識して肉や野菜、海藻類、きのこ類などをトッピングして、たんぱく質やビタミン、ミネラル、食物繊維も一緒に摂取することを心がけましょう。

 糖質は体のエネルギー源になる大切な栄養素ですが、摂り過ぎると太りやすくなります。これは、血糖値の上昇が関係しています(〔糖質過多〕⇒〔体内の血糖値が急上昇〕⇒〔膵臓からインスリン大量分泌〕)。このインスリンは、血糖値の低下に働くだけでなく、エネルギーとして使われなかった糖を中性脂肪などに合成して蓄積する働きもあるのです。

 血糖値の上昇を抑えるには、炭水化物を摂り過ぎないことと、「GI値」が低い食品を選ぶことです(GI値:その食品を摂取したときにどのくらいのスピードで血糖値が上がるかを示した数値)。GI値が低いほど、血糖値の上昇がゆるやかな食品とされています。玄米や胚芽米、全粒粉のパン、全粒粉のパスタやそばなどが挙げられます。最近では「糖質ゼロ」「低糖質」のめん類やパンも販売されています。炭水化物中心の食事になりがちな方は、これらがお勧めです。

 夏場に食べたくなるアイスクリームやシャーベットも糖質が多く、糖質過多の原因になります。好きな人が我慢するとストレスになるので、代わりに「果物」を活用しましょう。果物に含まれる「果糖」は、直接血糖値を上げることはなく、また、果物には体調を整えるビタミン・ミネラル・食物繊維の他、抗酸化作用のある機能性成分を多く含むので、美肌や便秘、むくみの改善など健康の維持に役立ちます。水分も多く、朝食に摂ることで、就寝中に失った水分を補うのに最適です。また、果実の噛み応えや適度な甘味は満足感にもつながります。ただし、果物に含まれる糖には果糖のほか、炭水化物と同じブドウ糖や、ショ糖もあります。特にブドウ糖やショ糖は吸収が早く血糖値が上がりやすいため、食べ過ぎには注意が必要です。お勧めは、キウイ、グレープフルーツ、りんごなど。

 お酒好きが注意したいのが、酒類に含まれる糖質。特にビールは他の酒より糖質が多く、空腹時に飲めば血糖値が上昇してしまいます。飲む前に野菜やキノコ類など食物繊維を含む食品を摂ることで、血糖値の上昇はゆるやかになります。また最近では、糖質オフのビールも販売されています。おすすめは糖質ゼロのハイボールや焼酎です。おつまみは、糖質の多いものは控えましょう。また、飲み過ぎは暴飲暴食につながります。締めのラーメンやスイーツは、更に糖質の摂り過ぎになります。適度な飲酒を心がけましょう。

 最後に、夏場の水分補給としてスポーツ飲料を飲む方がいますが、これには糖分が非常に多く含まれているので注意が必要。熱中症対策が太る原因になることもあります。

(出典:https://diamond.jp/)


■糖質をやめられない理由

 食べ物を摂取できない状態が続けば、肝細胞などに取り込まれていたグリコーゲンが、それも尽きれば脂肪細胞の中性脂肪が燃えることによって、私たちはエネルギーを得て、血糖値を安定させて命をつなぐことができます。逆に言えば、飢えた状態でも生き延びることができ、血糖値は下がり過ぎないのです。現代人に「いざというとき」はめったに訪れませんが、私たちの祖先は絶えず危機に直面し、日常的に飢えていて「いつ死んでもおかしくない」状態に置かれていました。そんな状態にあった祖先の脳には「血糖値を下げ過ぎるな。機会があれば糖質を摂れ」という指令がプログラムされています。私たちはそれを引き継いでおり、野菜や魚を食べられない人がいてもご飯やラーメンが嫌いだという人がいないのはそういう理由があるからです。つまり、生き延びるために糖質を摂るようにできているのです。

 そして、糖質を摂ったときには幸せを感じます。糖質によって血糖値が上がるとセロトニンやドーパミンが放出されて脳が快楽を得るのです。

 ところが現代人は飢えてもいないのに脳の快楽のため過剰な糖質を摂っています。まさに"糖質中毒"です。薬物依存研究の専門家は、「薬物依存と食べ過ぎはメカニズムが似ている」と指摘しています。脳が「報酬」を得られるために繰り返す中毒だというわけです。

病気の根本原因には必ず砂糖がある

 日本人の糖尿病に関する最も古い記録は平安時代の菅原道長の日記ですが、一般人が糖尿病にかかるようになるのは、戦後20年くらい過ぎてからのこと。経済の急成長とともに多くの人たちが白米や麺類、甘いお菓子や飲み物を口にできるようになり、糖尿病も増えていきます。そして、現在ほど30代~40代の男性に肥満者が多い時代はありません。

 生活習慣病は明らかに文明病と言えます。中でも食生活の変化が現代人を苦しめる病気を作り出したのです。肥満、糖尿病、高血圧、がん、脳卒中、心筋梗塞、動脈硬化、脂質異常、うつ、ぜんそく、アレルギー、アトピー、海洋性大腸症候群‥‥これらは全て文明的な食事によって生まれたと言ってもいいでしょう。コロラド大学のリチャード・ジョンソン博士は専門してこう言っています。「病気の根本原因をたどると、必ずそこには“砂糖”がある」

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「霊芝」の活性化多糖体は、血糖と血液脂質の数値を下げ、また、その抗酸化作用が高血糖による血管内皮細胞の損傷を軽減し、主動脈の健康を維持する効果が認められています。


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愛・感謝 村雨カレン

2024年7月31日水曜日

酵素

 夏の食材、意外な効能

 スイカの白い部分 

 果肉の一番外側の部分で“果皮”と呼ばれます。スイカの果皮は食用が可能で、果肉部分に比べはるかに栄養価が濃縮されています。注目すべき栄養素は「クロロゲン酸」と「シトルリン」。クロロゲン酸は強力な抗酸化力を持つポリフェノールの一種で、生活習慣病の予防に役立ちます。また、シトルリンというアミノ酸も赤い果肉の2倍含まれており、利尿効果を高め、むくみをとる効果があるとされています。

 きゅうり 

 きゅうりにはカリウム、イソクエルシトリン、マグネシウム、ビタミンC、ビタミンKなど、多くの栄養素が含まれているものの、昔から特異的健康成分はないとされてきました。しかし2011年、きゅうりに「ホスホリパーゼ」という非常に効果が高い脂肪分解酵素が大量に含まれていることが発見されました。熱に弱いという弱点はありますが、日本ではきゅうりの料理はあまり加熱しません。さらに、この酵素はすりおろす事で、より放出されやすくなります。脂肪分の多い肉料理などに添えることをお勧めします。

 なす 

 他の野菜に比べ栄養豊富とは言いにくいですが、なす特有の「ナスニン」や食物繊維、カリウムなどが含まれるため、栄養補給にぴったりです。ナスニンは、なすの特徴的な栄養成分で、ブルーベリーや紫キャベツなどの紫色の食品に豊富なアントシアニンというポリフェノールの一種。高い抗酸化力を持ち、がんや動脈硬化の予防などだけでなく、シワやたるみの予防にもその効能が期待できます。

 枝豆 

 マメ科ダイズ属に属する枝豆。栄養学から見ると、大豆が豆類なのに対し、枝豆は"野菜類"として扱われます。体内での働きに基づいて色分けする「三色食品群」の考え方でも、大豆は「赤」の群(体を作るもと)に、枝豆は「緑」の群(体の調子を整えるもと)に分類されています。大豆と同様の栄養素の他に、アミノ酸の一種「メチオニン」を含んでいます。メチオニンは体内で合成できない必須アミノ酸の一つで、アルコールの分解促進作用により肝臓の働きを助け、飲みすぎや二日酔いの予防が期待できます。また、ヒスタミン(アレルギー物質)に作用し、過剰な免疫反応を抑える働きがあります。さらにメチオニンはセロトニンやドーパミンなど神経伝達物質を合成する材料の一つで、抑うつ症状の予防、記憶力の向上など脳の活性化を促します。枝豆は野菜の中でメチオニン含有量が高く、100g中160mg含まれています。

 納豆 

 納豆の旬は冬の1~2月ですが、夏に必須の栄養素が含まれています。ネバネバに含まれるナットウキナーゼは有名ですが、ここではリゾチームと納豆菌を紹介します。「リゾチーム」は病原体溶解酵素。卵が腐りにくいのは殻の内側にあるリゾチームの働きです。納豆のリゾチームは卵よりも多く含まれ、様々な食中毒菌による感染を予防してくれます。そして強力な抗菌作用を持つ「納豆菌」は、O-157をはじめ、チフス菌や赤痢菌、サルモネラ菌などを抑制するだけでなく、腸内では善玉菌と同じような働きをし、善玉菌を増やし、悪玉菌の増殖を抑えてくれます。まさに夏の食中毒を避けるためにも摂りたい食材です。


■代謝酵素と消化酵素

 生野菜や果物、発酵食品を食べたり、酵素飲料を飲んだりしても、「体内(代謝)酵素を補うため」ということなら全く意味はありません。“体内で働く酵素”を外部(口)から直接補うことはできないからです。まず理解したいのは、現在、多くの方が「酵素」と思って飲んでいる「酵素飲料」(ペースト状、カプセル状含む)は、野菜や果物を発酵させたもので、ビタミンやミネラルなどの栄養素は補えても、「酵素」そのものを補うことはできないということです。日本で販売されているほとんどの酵素製品も同様です。しかし、各メーカーは、「酵素は生命にもっとも大切」「酵素を補いましょう!」と商品をPRし、また“にわか酵素解説者”たちがインターネットなどで誤った酵素論を展開するため、多くの人が「酵素を飲み、生食すれば酵素は補える」と思いこむようになってしまったのです。

食物酵素は"事前消化"には役立つが‥‥

 直接代謝酵素を補うことにはなりませんが、食物酵素の多いものは非常に大きな意味があります。それは“事前消化”です。

 口にした食物は、本格的な消化活動の始まる前に胃の上部にしばらく留まり、食物自体の持つ酵素によって事前消化が進みます。事前消化がしっかり行われれば、すい臓は余分に消化酵素を作り出すという重労働から解放されますし、消化酵素作りに必要なエネルギーや原料(アミノ酸、ビタミン、ミネラルなど)の消耗は抑えられ、他の代謝に支障がなくなります。ただ、生の食物が含む食物酵素は、自己消化はするものの、他の食物を分解することはしません。加熱品を食べた場合、事前消化は進みませんし、加工品の多い現代人には、事前消化してくれる別の酵素が必要になるのです。

 事前消化のために外部から補うことのできる唯一の酵素が「消化酵素」です。米国で「酵素サプリ」といえば消化酵素を指しますが、日本では事情が違います。日本には独得の法規制があり、消化酵素はサプリとしては販売できません。日本の「酵素サプリ」は“野菜や果物の発酵液”がほとんどで、米国の酵素サプリとは、まったく別物。事前消化のための酵素は補えないのです。

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 市販の多くの酵素液は“砂糖漬け”による発酵法で作られています。そこから抽出されたエキスはそのままだと飲めるような味ではないため、その後再び“大量の糖分”を加えて製品化されています。ほとんどの酵素液は約60%が糖分だと言われています。


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愛・感謝 村雨カレン

2024年7月24日水曜日

赤血球

 人工赤血球、臨床試験開始へ

 奈良県立医科大学は、献血で集めた血液のうち、有効期間が過ぎたものなどを再利用して人工的に赤血球を作製し、実際に人に投与して安全性や効果を確かめる臨床試験を、来年度(令和7年度)から本格的に始めると発表しました。実用化すれば、輸血用の血液の不足を補えると注目されています。

 研究グループは、全身に酸素を運ぶ赤血球を人工的に作製し、実際に人に投与して安全性や効果を確かめる臨床試験を、来年度から本格的に始めるということです。

 グループが開発した「人工赤血球」は、献血で集めた血液のうち、およそ1か月とされる有効期間が過ぎたものなどから赤血球の成分だけを取り出し、人工的な膜で包んだものです。

 輸血用の通常の赤血球は“冷蔵保存”する必要がありますが、「人工赤血球」は“常温”でおよそ2年間保存が可能だということです。

 今回の臨床試験では健康な人16人に投与する計画で、その後グループでは投与する人の数を増やすなどして、10年以内の実用化を目指したいとしています。

 担当教授は「実用化できれば、いつでもどこでも輸血ができるようになる。手術や救急医療の現場で活用できるよう、研究をすすめていきたい」と話しています。

【献血の現場は】

 日本赤十字社によりますと、献血された血液からは ▼赤血球 ▼血小板 ▼血漿 の成分に分けて輸血用の血液製剤が作られ、このうち、赤血球の製剤の有効期間は採血後、28日間ということです。このため、日本赤十字社では医療機関への供給量を調整しながら、期間内に使えるようにしていますが、中には期限が切れて廃棄しないといけないものもあるということです。さらに、1人が1年間にできる献血の回数や量には上限があるため、血液製剤を安定して供給するためには、多くの人が継続的に献血する必要があります。

 しかし近年、若年層の献血が減少していて、30代以下は令和3年度までの10年間で、およそ30%減ったということです。また、献血には年齢制限が設けられているため今後、少子高齢化がさらに進むと、血液製剤が不足するおそれがあるということです。

 奈良県赤十字血液センター献血推進課では「少子高齢化によって将来、医療機関に安定的に血液製剤を届けることができなくなり、日本の輸血医療が成り立たなくなることが懸念されていて大きな課題だ」と話しています。

(出典:https://www3.nhk.or.jp/)


■赤血球と血液循環

 赤血球は、体内で1秒間に約100~200万個、1日に2000億個が常につくられています。したがって、赤血球がつくられる仕組みが破綻した場合、容易に貧血になってしまいます。体内には20兆個の赤血球がありますが、赤血球が少なすぎると十分な酸素が運ばれず貧血になり、多すぎると血液が粘っこくなり、血栓症の危険性が高まります。このため、体内では赤血球を適切な数に調整する仕組みがあります。

 赤血球の主な役割は、肺から取り込んだ酸素を全身の組織に運ぶことです。実際には、赤血球はヘモグロビンに結びついた酸素を体のすみずみまで運びます。

 赤血球の内容の大部分はヘモグロビンです。ヘモグロビンにはヘム(ポルフィリンと鉄から生合成される)があり、ヘムに含まれる鉄に酸素が結びつくことによって、赤血球は酸素を運ぶことができます。

 赤血球の酸素を運ぶ能力は、血液中のヘモグロビン濃度で決まります。人体のすべての細胞にとって、ミトコンドリアにおけるエネルギー産生のために酸素が必要なのです。

 赤血球は白血球・血小板と共に骨髄でつくられます。元になる細胞は骨髄中の「多能性造血幹細胞」で、骨髄内で増殖・分化を繰り返して形成されます。赤血球の寿命は約120日。古くなった赤血球は、最終的に脾臓のマクロファージによって処理されます。

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霊芝の赤血球・血液循環への影響

 康復医学学会の主要研究生薬である「HM-3000(特系霊芝)」。この霊芝は、赤血球及び血液循環に対して、主に以下のような作用が確認されています。

〇赤血球変形性の改善 〇集合性の低下 〇血栓形成の予防 〇組織酸素供給の向上 〇毛細血管の口径と密度の調整 〇血漿粘度の低下 〇2,3-DPG(グリセリン2,3-リン酸)の産生促進 〇血管内皮細胞の増殖促進 〇血圧の降下 〇血糖値の降下など

 これらの作用により、以下の病態への予防・対応が可能になります。

▼赤血球の老化と機能低下 ▼血栓形成症 ▼組織の酸欠 ▼血中脂肪含量の上昇 ▼毛細血管密度の減少 ▼新陳代謝の低下 ▼血漿粘度の増加 ▼血圧の上昇 ▼血糖値と糖化ヘモグロビンの上昇 ▼血管壁の障害など

「HM-3000(特系霊芝)」の効能は、上記の血液循環への影響の他、免疫系への様々な影響、抗酸化作用、その他(補肝・造血促進・生存期間の延長・鎮静・鎮痛作用など)が認められており、それぞれに関連するエビデンスによって実証されています。


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愛・感謝 村雨カレン

2024年7月17日水曜日

ミトコンドリア

 土用の丑の日といえば

今年の夏の「土用の丑の日」は7月24日(水)、そして二の丑が8月5日(月)です。ちなみに、土用の丑の日は夏だけではなく、春・夏・秋・冬に存在し、2024年は右表の6回となっています。

“土用”とは、四立(立春、立夏、立秋、立冬)の前、約18日の期間のことで、その中にある十二支の"丑の日"が「土用の丑の日」です。

 天然うなぎの旬は10~12月ですが、夏にもウナギを売りたいという鰻屋の相談に答えて、平賀源内が「“本日丑の日”という張り紙を店に貼る」という発案をしてから鰻屋は大繁盛した、というエピソードはあまりにも有名です。現在、養殖うなぎは「土用の丑の日」に合わせて6~8月を旬としつつ、一年を通して安定した美味しさが楽しめます。

 日本では古くから食文化に深い関わりを持つ重要な食用魚「うなぎ」ですが、その生態は意外と知られておらず、研究者の間でも、2006年にやっと産卵場(スルガ海山)を発見したほどです。

 ウナギの祖先はまず外洋の深海で誕生し、やがて陸域の川や湖との間を回遊するように進化してきたと遺伝子解析によってまとめられ、東京大海洋研究所や千葉県立中央博物館などのチームが発表しました。

 ウナギは淡水域で成長し、外洋に戻って産卵することが知られていますが、外洋に生息していた祖先が陸地近くの海や淡水域に行動範囲を広げたのか、その逆なのかは謎だったそうです。同研究所は「ウナギの複雑な生活パターンの起源の解明は、養殖に必要な飼育条件を研究する上でも重要な知見となるだろう」と話しています。

 チームはニホンウナギなど19種のウナギ属とウナギの親せきに当たる魚のうち、入手できた約40種に着目。それぞれが持つ細胞内小器官「ミトコンドリア」にあるDNAの配列を比較し、どのような道筋で進化してきたのかを示す「系統樹」を描きました。すると、浅い海に生息するアナゴやウツボなどとウナギとは、外見が似ているものの古くから別々に進化を遂げてきたことが判明。水深200~3000mにすむフクロウナギやシギウナギなどの深海魚の方がより近縁であることを示唆する結果となりました。

 この発見は、ミトコンドリアにあるDNAの解析によって解明されましたが、そのミトコンドリアは種の判別に使われるだけの器官ではありません。人間の場合、日頃の生活から病気、老化、寿命に至るまで係わる大切な器官なのです。

 土用の丑の日や夏バテ予防に食べられるウナギ。この季節、なぜか食べたくなる‥‥しかし、国産物の「うな重」は高くて、最近はなかなか口にできないのが現状です。


■ミトコンドリアはエネルギーの製造工場

 全ての真核細胞に存在するミトコンドリアは、呼吸を営み、生命活動に必要なエネルギー「ATP(アデノシン三リン酸)を作ります。細胞内分裂によって増えます。

 ミトコンドリアには緑色のイメージがありますが、生きた細胞の中のミトコンドリアは赤茶色です。ミトコンドリアの中に鉄成分が多く含まれていて、酸素と結合すると赤錆色になるからです。ちなみに、筋肉には白筋(速筋)と赤筋(遅筋)がありますが、赤筋が赤いのはミトコンドリアが多く存在するからです。

■ミトコンドリアの主な機能

 脂肪酸のβ酸化や、電子伝達系による酸化的リン酸化によるエネルギー生産が主な機能です。酸素は本来、原生生物にとって毒となるものでしたが、ミトコンドリアの機能により、酸素から運動エネルギーを獲得できるようになりました。 細胞のさまざまな活動に必要なエネルギーのほとんどは、直接あるいは間接的に、ミトコンドリアからATPの形で供給されます。

■エネルギー産生の代償

 酸素を利用することによって、もっとも効率的なエネルギー産生システムを持っているミトコンドリアですが、酸素は他の化合物との反応性が強く、活性酸素の心配があります。呼吸で取込む酸素のほとんどはエネルギーに合成利用されますが、1~5%の酸素が体内で活性酸素になると言われています。

 健康や体力、抗老化などには、積極的に酸素を取込み効率よく使いエネルギーを産生することが大切ですが、エネルギー産生時にできる活性酸素は、疲労や老化、または、さまざまな疾患にも影響します。

■エネルギー代謝

 摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスが崩れると、脂肪細胞に脂肪がどんどん溜まっていくことになります。そして、エネルギー代謝を司るのがミトコンドリアなのです。エネルギーを多く必要とされるところにミトコンドリアが多く存在するのはそのためです。

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 当学会では、ミトコンドリアの活性化に「コエンザイムQ10」をお勧めしています。エネルギー(体力)の増強肉体疲労の改善老化予防に期待できます。


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愛・感謝 村雨カレン

2024年7月10日水曜日

熱中症

 暑熱順化で熱中症予防

「暑熱順化(しょねつじゅんか)」とは、身体が暑い環境に適応するためのプロセスを指します。このプロセスにより、体温調節機能が向上し、汗の分泌が増え、心臓血管系の反応が改善されるため、熱中症のリスクが減少します。具体的には、暑熱順化を行うことで、身体がより効率的に熱を放散し、暑さに対する耐性が向上します。

暑熱順化の方法

 徐々に暑さに慣れる

●急激な温度変化に晒されるのではなく、徐々に暑い環境での活動を増やすことが重要です。最初は短時間の軽い運動から始め、徐々に運動時間と強度を増やしていきます。

●例えば、初日は20~30分程度の軽い散歩から始め、1週間かけて1時間のウォーキングや軽いジョギングに増やすと良いでしょう。

 日中の暑い時間帯を避ける

●特に暑い時間帯(10時~16時)に無理な運動や作業を避けることが推奨されます。この時間帯は日差しが強く、気温も高いため、熱中症のリスクが高まります。

●早朝や夕方の涼しい時間帯に活動することで、体への負担を軽減できます。

 適切な水分補給

●暑熱順化中は特にこまめな水分補給が重要です。汗をかくことで体内の水分と塩分が失われるため、水分と電解質をバランスよく補給する必要があります。

●水だけでなく、スポーツドリンクなどの電解質を含む飲料を摂取することが効果的です。

 適切な服装

●通気性の良い、軽い服装を選ぶことが重要です。吸湿性と速乾性に優れた素材の服を着ることで、汗を効果的に蒸発させ、体温を下げる手助けをします。

●また、帽子やサングラスを着用し、日差しを防ぐことも有効です。

 栄養バランスの取れた食事

●暑さに対する耐性を高めるためには、栄養バランスの取れた食事も重要です。特にビタミンやミネラルを含む食品を積極的に摂取することで、体調を整え、暑さに対する適応力を高めます。

 休息をしっかりとる

●暑熱順化中は、体が多くのエネルギーを使います。そのため、十分な休息と睡眠をとることで、体を回復させ、適応を促進します。

●適度に休憩を挟みながら活動することが重要です。


 これらの方法を実践することで、体が暑さに順応しやすくなり、熱中症のリスクを大幅に減らすことができます。暑熱順化は一朝一夕には達成できないため、日々の継続的な努力が必要です。

(出典:https://www.city.ashiya.lg.jp/他)


■熱中症:自律神経と体温調節

 体温を一定に保つことは人体の重要機能のひとつです。体内で生産された熱と、体外へ放出される熱のバランスがうまく取れていないと体温を一定に保つことはできません。重要なのは体温を調節するシステムです。

体温調節の要「自律神経」

 通常は、体内で作られた熱で血液の温度が上昇し、温まった血液が体表を通るときに皮膚から熱を放散して体温を下げます。

 しかし、猛暑の夏など、体表からの熱の放散だけでは間に合わない場合、皮膚に分布する汗腺からどんどん汗を出し、皮膚の表面を濡らすことにより温度を下げる働きをします。汗腺も自律神経に支配されており、発汗を促進するのも交感神経の役割です。

熱中症とチアノーゼ

 血液中の酸素濃度が低下して、唇や爪の色が紫色になるチアノーゼですが、通常、健康な人の血液では、酸素とヘモグロビンが結合していて、それが血液の赤い色を作っています。しかし、熱中症で体温調節が限界を超えると、皮膚血管が拡張して皮膚に血液が集中し、発汗などのため血液粘度も上昇し血流障害を起こします。重症の場合、〔心負担〕⇒〔血圧低下〕⇒〔チアノーゼ〕という経過をたどり、虚脱状態や意識障害などを引き起こします。

普段からの良好な血流の維持が大切

 現代人が汗をかけない原因の一つに、東洋医学でいうところの「?血(おけつ)」の問題があります。つまり、"微小循環血流の滞り"です。血液は酸素や栄養素とともに体内の熱を運ぶ役割も持っていますから、微小循環血流を改善し、血流を良好に維持すれば、体温調節システムも効率よく働くのです。

 当学会の主要研究生薬である「HM-3000(特系霊芝)」微小循環の改善作用と、「ラフマエキス」自律神経調整作用が、熱中症の予防にも役立ちます。


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愛・感謝 村雨カレン